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第28話 はっ、もしくは終末ハーレム状態か!?

 

 *


 ユイユイと別れたあと、俺は近所のコンビニを駆け巡った。どのコンビニもまだ有人店舗だ。そのはずなのに、どのコンビニも人はいなかった。陳列された商品は特に異変はない。店員だけが消えてしまっているのだ。まるで、居ないことがさも当然であるかのように。


 コンビニの駐車場にも車は一切存在しない。客すらも一人もいないのだ。腕時計を確認すると、いまは21:35を指している。小学生にとっては、もう寝る時間だが、大人になってはこれからが自由な時間だ。普段、仕事帰りのサラリーマンや、ジャージ姿の若者がコンビニにはいるはずなのに。店内はどの店も静まり返っていた。


 俺は不安にかられる。一人、どうしても一人、この世界に存在することを確かめなければならない。俺は誰もいないコンビニの店内から、スマホを取り出し、電話をかける。


「恵菜か!? お前、いまどこにいる?」


『え、どうしたの、悟くん? 私はいま、おうちにいるよ』


「ふぅ。そうか、それならよかった」


『……不安になっちゃった?』


「ああ、そうだな。急に恵菜が俺の側から消えるかもと思ってな」


『安心して良いよ、私は一生悟くんの側にいるから』


「え、それって……?」


『あ……、えと、ちゃんと、伝えるときがきたら、伝えるからっ!!』


 そう言って、ぷつりと通話が切れる。ツーツーと無機質な終話音が耳に残った。


 コンビニ店内で電話をしても、俺をとがめる人は誰もいない。


 この世界は嘘で構築されている、か。あながち、間違いではないのかもしれない。コンビニでペットボトルのコーラを手に取る。無人レジで購入をしようとすると、手でしっかりと掴んだはずのペットボトルが台に落ちる。


「は?」


 改めて自分の左手を見ると、0と1の数列が波打って、左手に沿い流れたかと思うと、レジ台に置いてある、お買い得商品のチラシが透けて見える。


「な、なんだ??」


 再度瞬きをしてから、凝視してみると、左手には特に変化がなかった。ペットボトルに触れてみるが、ちゃんと触れるし、掴むことも出来る。最近、EternalSagaをやり過ぎて、疲れ目になっているのかもしれない。俺は、改めてコーラを購入して、カラカラの喉を潤そうと、不安と共に一気に喉へと流し込む。強い炭酸が喉を刺激した。


「ぷはー、生き返る!!」


 まあ、いっか。俺はこの世界に恵菜さえいてくれれば、それで良い。切り替えが早いのが俺の良いところだ。伊達にさまざまな不運に見舞われていない。この状況もなにかの不運に巻き込まれているということなのだろう。


 できれば、男は居なくてもいいから、美女はこの世界に居てくれると助かるな。俺が“全世界の美女をはべらす”計画が遂行できなくなってしまうからなッ!! はっ、もしくは終末ハーレム状態か!? 俺以外の男が消滅した世界線なのかもしれん。いや、美女どころか女性を一人も見かけないが。


 はあ、なんてむなしい。誰もいない世界で、ハーレムを想像しても仕方がない。俺は無意味な思考をしながら、帰路へと着いたのだった。


 *


【???Side】


 ブローラ山の(いただき)


 クモキがたおした飛竜、漆黒の飛竜(ダークドラグーン)の死体は消えていなかった。時間が経過して、すでに肉体は他の魔物モンスターに食い漁られ、骨が覗き、見るも無残な姿になっている。本来、倒された魔物モンスターは消滅する。レイドボスでも同様だ。だが、その死体は無意味に横たわったままだった。


 いや、無意味である事象など存在しない。意味があるから、この死体も横たわったままなのだ。


 飛竜の瞳が開かれる。死してなお、彼を討伐したものに復讐するため。


 たしか、運王ウンキングとかいったか。


 飛竜の翼の皮膚は破れ、すでに飛べる状態ではない。のそりと起き上がると、ゆっくり、だが着実に歩を進めた。エラルドの街へ。そこに、自身を打倒した奴がいると、レイドボスである彼は感じとっていたのだ。


 彼は迷うことなく前進する。漆黒の飛竜(ダークドラグーン)は醜い体となってなお、生ける死竜(ドラゴンゾンビ)として立ち上がったのだった。



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