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第25話「ふっ、俺が来たからには、もう大丈夫だ」

 

 *


 Eternal Saga――ブローラ山の(いただき)。アーゼスト森林やエラルドの街を一望できる山頂に、この闇夜に紛れる程の漆黒の竜がいた。


「グォォォォォォォオオオ!!」


 漆黒の飛竜(ダークドラグーン)。この魔物(モンスター)はレイドボスであり、複数のパーティーでの討伐が必須となる程の強敵だ。


 実際、詠唱なしの火炎や氷結の息吹に、三十を超す熟練の冒険者達は苦戦していた。いや、既に生存者は半数だ。残りは青い炎へと変わり果てていた。


「クッ、こ、このままでは……」


 冒険者から弱音が吐かれる。息をするかのように自然に吐露された。だが、彼等の心配もこれまでだ。なぜなら、俺が、いや、俺たちが駆けつけたからだ。


「……、あ、あれは、まさか!?」

「ま、まちがいない!! 称号付き(タイトルホルダー)だ!!」

「奴は称号付き(タイトルホルダー)運王ウンキング!?」


 山頂に大歓声が沸く。無理もないだろう。満月ですら雲に隠れ、暗雲が立ち込めていた戦況だ。そこに俺という一筋の光が照らされたのだから。


運王ウンキング運王ウンキング!!」


 俺は右手を悠然と空へ掲げてから、強く握る。すると途端に先程の歓声は止み、周囲は静寂に包まれた。


「ふっ、俺が来たからには、もう大丈夫だ」


「「「うぉぉぉぉおおおおおおおッ!!!!」」」


 地鳴りとなり、冒険者みなの士気が高まっていくのを感じる。称号付き(タイトルホルダー)である俺の為せる(わざ)だな。と、漆黒の飛竜(ダークドラグーン)が翼をはばたかせて、後退しだした。ふっ、魔物(モンスター)も俺に恐れをなしたようだ……。


 ボスを逃亡させた俺は、決め顔で冒険者たちの歓声に応える。対して、漆黒の飛竜(ダークドラグーン)は翼で夜空へと舞い上がり、ぎょろりとした満月のような黄色い瞳を、こちらへ向けた。そして、奴の口から、真っ赤な灼熱の球体が吐き出される。


 あれ、ちょ……、これまずくね?


 どう考えても、物理攻撃ではない。つまり、身躱しマント頼みの回避は不可能だ。そして、俺の装甲は自慢じゃないが、紙よりも薄っぺらい。


 あ、これ詰んだ。


 俺が諦めムードになると、すかさず背後から駆け寄ってくれる姿があった。エトナだ。


「もう、クモキくん、調子に乗りすぎだよっ!!」


 骨が(こしら)えられている大盾を掲げて、竜との間へと割って入ったのだ。


鉄壁アイアンシールド!!」


 エトナは防御力を高める才能スキルで、攻撃に備える。その直後、竜からの火炎の球が盾へと衝突、爆音が鳴り響く。エトナの体力は大幅に削れるが何とか一命をとりとめたようだ。おそらく耐久力を高めるためにステ振りを体力に特化したおかげであろう。


「ありがとうな、エトナ!!」

「うんっ!!」


 今度はこっちの番だ。


収納インベントリ、【運命のダイス】ッ!!」


 先の巨大なコボルトを倒した際にやった作戦と同じ。今回はサイコロを計二回。つまり、36の2乗。1296倍のダメージだ。だが、【識別ジャッジ】で敵の体力を確認する限り、まだこれでも届かない。となると、基礎ダメージを増加させるしかない。俺は矢を精一杯引きながら、隣に居るユイユイにアイコンタクトで合図を送った。


「目をぱちぱちさせて、なにをやっているのです?」


 気付いていなかった。


「矢に魔術を付与するんだッ!!」


「なるほど! わかったのです!」


 ユイユイは一呼吸を置いてから才能スキルを発動する。それにより(やじり)に変化が訪れる。白く発光を始めたのだ。そう、これこそが魔術師ウィザード才能スキル。武具に属性を付与して、弱点による基礎ダメージ量の増加を図ることができる。


属性エレメントセイント!!」


 一度発動をすると、あまりの(まばゆ)さに目を開けておけない程の光だ。視界が奪われて、まぶたを塞がざるを得ない。だが、それはこの闇夜に慣れていた敵も同様だ。


「グ、グ、グォォォォォォォオオオ!!」


「俺が射る矢は必中。それは、例え俺が目を(つむ)っていたとしても、一切変わらない。必ずお前を捕捉し、お前が倒される運命へと帰結するッ!!」


 俺は弦を抑えていた右手を離した。


「さあ、必然の運ゲーを興じようか――」


 矢は凄まじい勢いで、漆黒の飛竜(ダークドラグーン)を射抜く。


 《クリティカルダメージ。基礎ダメージ200×ボーナス乗算1296。計259,200ダメージ》


 断末魔を放ちながら漆黒の飛竜(ダークドラグーン)の巨体は消滅した。


 《Congratulations!! 漆黒の飛竜(ダークドラグーン)を討伐した!!》


 ぐるりと俺らを包囲する冒険者たち。熱を帯びた大歓声が、俺、運王ウンキングを称賛する声はとどまることを知らなかった。


「……それにしても、改めて聴くと運王ウンキングってダサいのです……」

「うぐっ!!」


 ユイユイのぽつりと漏らした言葉の棘は、俺の胸に深く、それは深く、突き刺さったのだった。


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