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第23話『目を見ればわかるの。こやつ童貞じゃわい』

7/1 22:30 エピソードの逆転を修正しました。正しい形で投稿しています。


 *


 俺はバルトレキア王が腰かける玉座の手前、赤い絨毯の上に、味の無いガムのように吐き捨てられる。任務を遂行した衛兵たちは、バルトレキア王に敬礼をして、玉座の間から立ち去っていった。代わりに俺の頭を絨毯に押し付けている人物が残る。近衛騎士団ユーストレンその人であった。


「ぐっ!?」


『陛下、勅命通りにクモキなる冒険者を連れてまいりました』


『ふむ……』


 威厳のある声が(うえ)から聴こえてくる。俺は頭を抑えられて動かす事すら叶わない。ふと脳裏によぎる。このまま処刑されてしまうかもしれない。だが、ここで何かを発言すれば心象を悪くしてしまう可能性もある。俺は生唾を飲み込み、次の言葉を待った。


『ユーストレン、一つ聞いても良いか?』


『はッ、何なりと!!』


『……なぜ、客人を押さえつけているのだ?』


「へっ?」

『え?』


 驚愕のあまりに自然と声が漏れてしまう。ユーストレンも俺と重なった。つまり、彼女も驚いているという事だろう。


 実際、先程まで力の限りを以って、俺の頭を抑えつけていたが、彼女の腕は力なく手を離していた。正直、何が何だか分からない。取り敢えず体勢を整え、座ることにした。


 目線を上げると目の前には、バルリレキア王が王たる象徴の冠を頭上に載せて、玉座へと腰かけていた。


 バルリレキア王に対して、しどろもどろになっているユーストレンが言葉を紡ぐ。


『え、えーっと、確かクモキを連れてこいと……』


『丁重に、じゃがな。お主が耳を傾ける前に出て行ってしまったのであろう』


『……で、ですが、こいつには婦女暴行の容疑が!?』


『あはは、ないない。目を見ればわかるの。こやつ童貞じゃわい』


 こいつ……、当たってやがる!!


「はい、童貞です!!」


 俺は小学校1年生が、先生から出席をとられたときに、「はい、元気です!!」と答えるがごとく、元気よく返答した。


 ぷるぷるとユーストレンは震えだす。あまりの失態に頭を上げることができないようだ。ここは、今までの非道の行いを正す場面だッ!!


「あれれー? まさか、ユーストレンさんってば、王様の勅命を最後まで確認せずに、俺を連行してきちゃったのかなー? しかも婦女暴行罪と決めつけて?」


『うぐぐ……』


「あー、後頭部が痛いなー。なんでだろう。まさか、騎士様ともあろうことが、いち冒険者である平民に対して、額を床に付けさせたなんてことないよなー?」


『だ、だゃってー! うぅぅ……』


「だって、で済んだら警察いらねーんだよ! さて、身体で払う準備は出来たかな?」


『……うぅぅ、こぉのぉ、ドウテイがぁー』


「今日で卒業だな!」


『や、やめろぉーっ』


 ユーストレンは本気で半ベソをかきだした。顔は崩れて今にも全壊しそうだ。仕方がない、ここらで終いにしておくか。


「……と、まあ、冗談はこれくらいにして、流石にここまでの仕打ちを受けて、『はい、許します』とは、いくら聖人君子の俺でも言えないですね」


『……数々の非礼、ほんとーっに、すまなかった!!』


 彼女は土下座に近いほど深々と頭を下げた。はぁ……、女性にここまでやらせて許さない訳にはいかないな……。


「……お金」


『えっ?』


「お金で解決しましょう。俺たち、この前のコボルト討伐クエスト報酬が貰えないということが分かって、困っているんですよねー。ああ、困ったなー(ちらッ」


『そ、それは……』


 ユーストレンは言い(ども)る。当然の反応だ。国の財を動かすなど、一騎士団員が自由に出来る権限を優に超えているのであろう。財政大臣でもない限り、流石に無理か。


『フォッ、フォッ、フォッ。流石に威勢が良いのぉ。……金銭か。安心せい。元からそのつもりじゃわい。特別報酬を与えるために、ここに呼んだんじゃからのぉ』


「と、特別報酬!?」


『そうじゃ! 先の蛮族の狂戦士(コボルトバーサーカー)討伐の件。実は、ミノタウロスをも倒した腕鳴りの冒険者がやられてのぉ。我が衛兵達も恐怖に震え上がり、討伐隊を派遣出来なかったのじゃ。我が兵ながら、情けない……。彼処(あそこ)はバルリレキアと近隣諸国を繋ぐ交通網の一つ。流通の要となる拠点なのじゃ。それが遮断されて、我が国民にも影響を及ぼす可能性もあった。そこを貴殿の活躍により、即時討伐。我が城下は歓喜に沸いたぞぃ。よって、クモキ殿よ。貴殿には報酬として金50万ギルを与えるッ!!』


「……なん、だと!?」


 50万ギル!? 元々の報酬と桁が違うじゃねーか!! ずんだ餅は50ギルだから、換算すると、ずんだ餅1万個分!! ユイユイとエトナが聞いたら妄想に浸って、当分現実に帰ってこないレベルだぞッ!!


『……コホン、あともう一点。称号タイトルじゃ。貴殿の活躍を耳にはしている。其方そなたには称号付き《タイトルホルダー》になってもらう!!』


「……なん、だと(2回目)!?」


 俺が最終目標にしていた、百人しかいない称号付き(タイトルホルダー)に、こんな低レベルの内からなれるというのか。ふっ、俺の才能が恐ろしい……。


「……ふっ、ならば仕方がない! それで手を打とうではないかッ!! フハハ!!」


『さすが、我が国が誇る英雄よッ!! 英断するのも早いッ!!』


「フハハハハ!!」

『ふぉっふぉっふぉ!!』


 こうして、俺の称号タイトル授賞式典には、国を掲げて盛大に行われることになったのだ。



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