第20話《固有才能《ユニークスキル》の効果切れました。ステータスが元の状態に戻ります》
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「パパ!! すごい、すごいのです!! あんなに大きなコボルトを駆逐するなんて!!」
俺の身体が大きく仰け反った。ユイユイが体重を乗せて、抱き寄ってきたのだ。
「ふっ、当然だろう?」
……ふぅ、やれやれだぜ。あれ、エトナは? いつもならエトナも心配そうに駆け寄ってくるのに……。いたいた、っと、ほら、駆け寄ってこいよ! あれ? なんか、ものすごく哀れんだ瞳で俺を見つめている。まるで、捨てられた小動物に向けるかのように。俺、なんかしたか?
「わー、スゴーい、オメデトーっ」
「エトナ、全く心がこもってないんだが……」
「ソンナコトナイヨーっ」
この反応、そうか……照れ隠し、だな。俺の言動を垣間見て、更に俺に惚れ直したというところか。それで、恥ずかしくて素直になれない、と。可愛い奴めッ! ……ふっ、俺はなんて罪な男なんだ!
さてと、悪いが、恥ずかしがり屋さんをずっと待つわけにもいかない。システムメッセージが仮想ウインドウに表示されているし、内容の確認といくか。
《おめでとうございます! レベルが上がりました! LV7→15》
《振分ポイント40獲得。ステータスに分配して下さい》
伊達にLV80のボスじゃないと言うことか。経験値がパーティーで等分されたとはいえ、膨大な値を獲得できた。おかげで、一気にLV10を超えたな。振分ポイントも取得出来たし、力と素早さに振っておくか。確定っと。
次は、お待ちかねの……。
《新しい才能を獲得しました》
待ってました!! どれどれ……。
・狙撃LV1……弓装備時に射程を僅かに伸ばす。LVが上がるほど、射程が伸びる。
三連矢LV1……三つの矢を同時に放つことが出来る。LVが上がるほど、威力が上がる
LV7→15
体力35
力40→70(+30 固有才能により現在75)
身の守り2
知力12
素早さ13→23(+10)
運の良さ−999(固有才能により現在999カンスト)
才能
識別LV1、夜目LV1、アイテム付与LV1、酒乱化、狙撃LV1、三連矢LV1
おおおお、やっと冒険者っぽくなってきたな……。あとはアイテムドロップか。これは、アクセサリーか?
《クモキはアイテムを取得した》
・狂戦士の指輪 レアリティ? 特殊効果:敵の全耐性を極微小下げる。【鑑定】により具体的な数値が判明。
レアアイテムっぽいぞ!! 【鑑定】スキルがないから、詳細の効果は分からないが、確認してみるか。なになに……狂戦士の威圧により、敵の全耐性を極微小下げる、か。器用貧乏な感じが半端ないな……。まぁ、せっかくのドロップだし、ありがたく貰っておこう!!
「装備:狂戦士の指輪」
さて、全ての事務処理を終えた俺は、狐っ娘が青い炎になってしまった地点へと視線を移した。既に五分は経過してしまっている。初めから何も無かったかのように、火種は消滅してしまっており、そこにあるのは落ち葉のみだ。
「くそ、間に合わなかった……、ごめんな、メギツネ……」
「メギツネさんは優しいから、きっと、わっち達を怨んでいないのです」
「「メギツネ……」」
俺達は星空を見上げる。ちなみに、いまはまだおやつの時間。星一つ出ていない、青空だが。
「……ふたりとも、メギツネ言いたいだけでしょっ!?」
流石エトナだ。俺達の意図を察したか。
「バレたか。いや、マジで最初名前聞いた時に笑い堪えるのに必死だったよな……」
「まさか名前がメギツネだとは思わなかったのです……」
「……さて、取り敢えず、豊樹の枝木に帰るか! もしかしたら、狐っ娘もいるかも知れんし!」
「これでクエストの報酬はがっぽがっぽ、なのです!」
ユイユイの目がお金に変わっている。きらきらと輝いていた。
「うん、そうだねっ! そのお金で、ずんだ餅も食べたいしっ、じゅるり。ずんだ餅を考えていたら、おなか空いてきたよ」
「ユイユイの指なら食べてもイイぞ」
「ママとはいえ、さすがに嫌なのです!!」
うーん、なにかを忘れている気がするのだが……。
俺達は獣道を折り返し、エラルドへと帰還するために歩き始めた。
俺はこのとき、気づかなかったのだった。仮想ウインドウに表示されていたメッセージに。
《固有才能の効果切れました。ステータスが元の状態に戻ります》




