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第2話『────ようこそ、仮想世界へ《HelloWorld》!!』

本小説のかっこについて

《》…システムメッセージ

【】…ステータスやアイテム名(たまに忘れているところもあるかも)

『』…NPCの発言

潜入フルダイブ


 俺を閉じ込めていた白い牢屋のような部屋が、左右に、上下にと、際限なく広がっていき、草原が写し出される。髪を撫でる穏やかな風が心地よい。とても、仮想現実とは思えない。まるで、現実世界だ。


『──この世界こそEternal Saga。遥かなる刻と共に紡がれる冒険譚ぼうけんたんが貴方を魅了することでしょう』


『────ようこそ、仮想世界へ(HelloWorld)!!』


 辺りを見回すと、緑一面、草原の上に一人立っていた。巨大な岩がごろごろしているくらいで、周囲に生き物は何もいなそうだ。


 取り敢えず、潜入フルダイブしたら、やることは決まっている。まずは、ステータス確認だ。


制御システムコンソール!」


 システムコマンドにより、仮想ウインドウにステータスの詳細が表示される。


 プレイヤーネーム:クモキ

 種族:人族

 職業:弓兵アーチャー

 固有才能ユニークスキル

 短を捨てて長を取る……ランクE 長時間、最も低いステータスをレベル分減少させ、最も高いステータスをレベル分増加させる

 称号タイトル:なし


 LV1

 体力35

 力14

 身の守り2

 知力12

 素早さ9

 運の良さ−999

 才能スキル:なし


 装備:

 木の弓矢 レアリティE 力+1

 全種族装備可能。初期装備。

 旅人の服 レアリティE 身の守り+1

 全種族装備可能。初期装備。

 不運の腕輪 レアリティ? 運の良さ-∞

 全種族装備可能。呪いの装備。


 固有才能ユニークスキルガチャは外れっぽいな。というか、なんだよ、【短を捨てて長を取る】って。


 一応、レベルが上がれば強くなっていくスキルにみえるから、今後に期待って感じか。一番低いステータスが下がるみたいだが、身の守りで良いのか……? 運の良さもマイナス999で逆カンストしているが、固有才能ユニークスキルを使用すると、これがさらに減るのか?


 逆カンストだから、デメリットなしで使える可能性もあるな。そう考えると、ありなのかもしれない。


 俺が一人で悶々と考えていると、前方から異様な生物が現れた。


 真っ白な兎だ。だが、普通の兎とは違う。二足歩行で歩き、タキシードを身に付けている。真っ赤な蝶ネクタイがお洒落だ。


『やぁ、ようこそ、クモキ様。私の名は白ウサギ。貴方様のサポートを行いますぴょん』


 サポート? なるほど、チュートリアルの案内役というところか。しかし、直立した兎で、さらに喋るとは……。


「こんなに珍妙な動物は見たことない。待てよッ!! サーカス団に売れば、一儲けできるんじゃ……。ぐへへ」


『クモキ様、心の声が漏れています……。この仮想世界、Eternal Sagaにはサーカス団なる職業クラスは御座いませんので、私はほっと胸をなでおろしているところです、ぴょん』


 チッ。俺の大富豪計画が……。


『……さて、クモキ様。ステータスは既に確認されましたか?』


 「あぁ、確認した」と、そう短く伝えた後に、仮想ウインドウを人差し指で操作し、白ウサギに表示されているステータスを見せた。


『……こ、これは……!?』


「ん? どうかしたのか?」


『運の良さのステータスが最大値である999つまり、カンストしていますぴょん!! 実は基本ステータスは現実世界のIQや短距離走のタイムといった様々な要素が反映されるようになっているのですぴょん! 恐らくクモキ様は相当に徳を積んできたのではないですか?』


 こいつ、マイナスを見逃してやがる! 傷をさらに抉ってくるな、おいッ!! いや、怒りをしずめろ。俺はもうガキじゃない、立派な高校2年生だ。冷静沈着な大人の対応で、過ちを訂正してやる必要がある。


「よく見てみろ、マイナスだ……」


『……』


 白うさぎは、すんと、沈黙して俺と目を合わそうとしない。何度も何度も仮想ウインドウを確認する。


『……てへ、見間違えたぴょん!』


 まずは、謝罪だろうがよぉ!! こいつ、やはり、サーカス団に売り払うしか!


『クモキ様。目が、目が怖いぴょん……。それと、もう一つ。固有才能ユニークスキル! これはまた最低ランクのクソオブクソ使えないものを手に入れましたね!」


 決めた。ぶん殴ろう。こいつ、ぶん殴ろう。


 俺は拳を上げながら、白うさぎに歩み寄ると、奴は『ごめんぴょん、ごめんぴょん』と繰り返し謝罪した。


 白うさぎの言葉を信じるのであれば、現実世界の能力が反映される。こと、運の悪さには絶対の自信がある俺からしたら、不運の腕輪を手に入れたことも、固有才能ユニークスキルガチャで不遇のスキルが手に入ったことも、当然と言えるか。


 もしかしたら、実はこの【木の弓矢】と【旅人の服】という装備が伝説の武器と防具という可能性も……。


『ちなみに、【木の弓矢】と【旅人の服】は凡庸な基礎装備ですぴょん!』


「ですよねーー」


『これらは初期装備なのでレアリティについて判別できていますが、レアリティや詳細な装備やアイテムの効果については、【鑑定】スキルがないと、本来わかりません。例えば【薬草】は『体力を回復させる』ということは説明文で理解できますが、どの程度回復するのかはスキルでしか分からないぴょん! レアリティはS、A、……、Eの全六段階に分類されます。Sが最高等級で、次点がAという具合ですぴょん。一般的にレアリティが高ければ高いほど、効果が絶大となります』


「白うさぎ……。このステじゃ、攻略にはアイテムにかかっているといっても過言ではない!! よって、今すぐお前の知っている範囲のアイテム効果を、俺に教えるんだ!!」


『……そ、それはズルぴょん!!』


 「チッ」と俺は軽く舌打ち。白うさぎはそんな俺に目もくれずに説明を続けた。


『【鑑定】スキルは盗賊シーフが覚えることになりますぴょん!』


 なるほど。取り敢えず、アイテムのレアリティや効果の確認は、他の冒険者の情報頼みにするしかないか。


『……次に戦闘についてだ、ぴょん! 弓兵アーチャーは、武器を念じるだけで弓と矢筒が現界しますぴょん! やってみるぴょん!』


 俺は白うさぎの言う通り、右手に木の弓を、背中に矢筒を背負っている姿をイメージした。すると、想像と寸分違わない位置にそれらは現れた。まるで初めから身につけていたようだ。


『手中に武器がある状態だと、カーソルが表示されますので、照準を合わせて矢を放つぴょん! 最初は難しいかも知れませんが、頑張ってぴょん!』


 白うさぎのチュートリアルが終わるのを待っていたかのように、不穏な足音が忍び寄る。重低音の唸り声をあげながら。


「グルルルルル」


 岩陰に隠れ気づかなかったが、銀色の剛毛を(まと)う狼が計五体。隠れながらも、俺に襲いかかるタイミングを計っているようだ。


 初戦闘の緊張のためか。俺は震える手を無理に落ち着かせた。


 一呼吸置いてから、矢筒に手をやる。そして、木の弓に矢をつがえ、構えた。いつでも射抜けるように。


 その状態で、白うさぎに素朴な疑問を投げかけることにした。


「……なあ、一つ聞いていいか? 【運の良さ】ってどんなステータスなんだ?」


『……【運の良さ】、ですか。【運の良さ】は、クリティカル率やレアアイテムドロップ率、魔物とのエンカウント率は勿論のこと、離れた敵に対する攻撃の命中率といった運に絡む要素全てを数値化したパラメータになります、ぴょん』


「なるほど、なッ!! え、命中率ッ!?」


 俺は矢を放った。しかし、思った軌道を描かずにひょろひょろと失速。無情にも大地へと刺さる。運の良さが命中率に紐づくということだが、今俺のステータスはマイナス999。おそらく、超至近距離じゃないと当たらないだろう。


「クソッ!!」


 俺は矢筒に手を掛けて、矢を放つ。放つ。放つ。


 だが、殆どは草地に吸い込まれ、地から矢が生えたかのようだった。


 魔物(モンスター)の側にあった大岩・・にも刺さった矢は数本あったが、狼の魔物(モンスター)はもちろん無傷の状態だ。


 おい、命中率に影響があるとか、さすがに絶望的なんだが……。


 俺はこうなった元凶である白うさぎへ視線を向けた。いや、実際には自分の不運さが原因なのだが、白うさぎにあたりたくなった。当の白うさぎはというと、俺の全ての恨みを込めた視線を無視して、呆然として立ち尽くしている。その目線は俺へと向けずに、先ほど矢が刺さった大岩を凝視していた。そして、しばらくしてから、後ずさりしながら呟く。


『……てへ。ひ、一つ言い忘れたぴょん』


 俺もコイツに文句の一つでも並べてやりたいが、そうも言っていられる状況じゃない。狼たちは、俺に襲いかかろうと、いまにも前脚に力を入れて、踏み込もうとしている。


「グルル」


「ちょっと、今戦闘中で、忙しいから後にしてくれ!」


『い、いや、大事なことぴょん』


「わかった、手短に頼む!」


『あの岩、動かないけど、爆弾岩っていう魔物(モンスター)ぴょん。矢を当てないように気をつけるぴょん! ……攻撃すると大変な事になるぴょん!」


 ……。


 …………。


「は?」


 岩だと思っていたモンスター、爆弾岩は、ぴえん(死語)といまにも言い出しそうな悲しみが満ちた表情を浮かべた。そして、閃光が辺りを包む。次の瞬間。


 ドゴォォォォォォォォォォオオオン。


 地鳴りが響き、爆発する。瞬く間に俺の視界は黒煙で覆われた。


 *


 ???Side


 えっ、何の音っ!? あまりの物音に私は耳を塞ぐ。しばらくすると爆発音はおさまり聞こえなくなった。私は丘の上からぐーっと背伸びをする。それから、手を双眼鏡のようにして、爆発地点を覗いてみることにしたっ。


「見つけたよっ、悟くんっ!!」


 早く会いたい気持ちが抑えられないっ! 私は丘から急いで降りると彼の方へと駆け出した。



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