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第19話「なんでこんなに恥ずかしい台詞をキメ顔で言えるのっ!?」


 *


 ──恵菜Side──


 私は悟くん、ううん、クモキくんのことが好きっ。


 先輩にも、友だちにも、家族にだって、誰に対しても等しく、声を大にして伝えられる。クモキくんが好きです、って。


 外見がカッコいいところも、面白いところも、優しいところも、少しHなところだって。

 全部が全部、大好きだっ。


 だけど……。


「赦さないと言ったんだッ!! 俺の総てを賭して、オマエを(ほふ)る」


 あれれ? まさかっ、クモキくん、まさか、厨二病を再発しちゃった? 発症中のクモキくんは恥ずかしいんだよなぁ。唯一やめてほしいとこです、はい。もう良い大人だしね~。


『フフ……フフハハハ、威勢が良いノハ勝手ダガ、貴様ごときニ何が出来ル!?』


「あまり俺を舐めるなよ?」


「パパ……」

「……クモキ、くん…………(気付いて)!」


 やめてぇぇええ、これ以上厨二病にならないでっ!! 気づいてっ、気づいてっ、クモキくん!! あ、全然気づいていない、これダメなやつだ……。


 クモキくんは、何度も何度も弓を引いて、矢を放った。草饅頭のような色のマントをなびかせながら。うん、あんまし、あのマントはカッコよくないですっ。


 それでも、モデルがいいんだろうなぁ。端正な顔立ちに艶やかな黒髪。どんなものでも見通してしまうような透き通った空色の瞳。テレビに出演している俳優さんよりもカッコいい。


 のくせに、気さくだし、性格だって、思いやりがある。完璧なのにっ。運が悪いという最大の欠点と、厨二病さえ発症しなければ……。うぅ……。まだ、間に合うかな?


『フハハ、ソレガどうした!? こんなモノ、ダメージのウチにも入らんワ!!』


「こんな事で倒せるなんて思ってない。俺はただ試行を増やして検証しただけだ。必ずダメージを与えられるということをなッ!!」


 まだ、完全体厨二病にはなってなさそう! 今なら間に合うかもっ。


 私は、ぱちぱちとウインクで合図。ダメだ。ぜんぜん気づいてくれないっ。早くどうにかしないと、クモキくんが手遅れになっちゃう。恥ずかしい人間に成り下がっちゃうぅぅ。


『な、ナンデ当たらないッ!!』


「ふっ、簡単な事だ。偶然による運任せも、俺の前では必然へと収束する。確率による回避ではない。絶対回避だ」


 うわぁっ、なんか言ってる。これは完全体厨二病モードだっ……。こうなったら、もう手遅れです。不治の病。治す薬はありませんっ。


「こっちの手番だ。──さあ、必然の運ゲーを興じようか────、収納インベントリ


 そもそも、必然の運ゲーって、運ゲーじゃないじゃん!! ダメだっ、こいつ。早くなんとかしないとっ。


「ママ―?」


「うん? どうしたの? ユイちゃん?」


「パパ、なんかいつもと様子がちがうけど、どうしちゃったのです?」


「見ちゃいけませんっ!!」


 私はユイちゃんの視界を手で遮る。うん、あの姿をクモキくんも見られたくないよね……。ユイちゃんも年ごろの女子ということを考えると、精神衛生上、悪影響を及ぼすかもしれないし。もしかしたら、厨二病が感染しちゃうかもしれないしね、見せないことに越したことはないよね。


「【運命のダイス】ッ!! 既に賽は投げられた。故に問おう。お前は、勝運を引き寄せられるか? この、俺から──」


『テメエ……』

「うわぁ……」


 心の声が漏れちゃう。


 二つのサイコロはころころと転がった後に静止した。示しているのは両方とも数字の6。やっぱり、運の良さカンストって凄いんだなぁ。サイコロ見ていたら駄菓子のキャラメルが食べたくなってきたなぁ……。


「さて、次のゲームだ。ダイスロォォルッ!!」


 キャラメル、家にあったかなぁ……。確かこの前持ってきた気がするんだけど、食べちゃった気がするなぁ。ファミリーパックのキャラメルを用意しなきゃ(使命感)。


「……次。ダイスロォォルッ!!」


()ぜろッ! 我が覇道を阻む者を何人たりとも許容しないッ!! 塵一片たり……』


 はっ!? ついつい、クモキくんの厨二病姿を見たくなくて、現実逃避をしてしまっていた。大丈夫っ、今ならまだ、引き返せるっ!!


「愚者めッ! 俺の絶対回避が物理攻撃だけだと思ったか? 無論、魔術もだ。如何なる攻撃も回避可能」


「っ、クモキくんっ!!」


 気づいてっ!! これ以上、醜態を晒す必要なんてないんだよっ!! 素のままのクモキくんで充分カッコいいんだよっ!!


 クモキくんは私の呼びかけに反応して、少しばかり微笑む。あ、これ、絶対に理解していないやつだっ。


『糞、クソガァァァァァァアアア!!』

 くそ、くそがぁぁぁぁぁあああ!!


 私の心の声がコボルトさんの言葉と完全に重なる。


「これで46656ダメージだ。次で十万を遥かに超える。つまり、次の賽は死の宣告を意味する。……決死の覚悟は出来たか?」


『……、死? シ、死にタクナイ、死にタクナイッ!!』

 ……、もう無理。み、ミタクナイ、ミタクナイっ!!


 私はいままでユイちゃんの視界を遮っていたけど、もう自分が限界になってしまった。両手で自身の顔を覆い、極力、醜態を晒すクモキくんが映らないように心がける。


 あぁ、コボルトさんも、あの大きな体で逃げていく。わかる、わかるよ。恥ずかしかったんだよね、私もこの場から逃げたいよっ。


「1,679,616ダメージ。遂に百万を超えたな。……さて、」


 私の心に百万ダメージだよっ、考えてよっ。私の気持ちも考えてよっ!!


「俺が放った矢は必中。距離など関係ない。如何なる軌道を描く矢も、等しく標的へと収束する。運命に導かれるようにッ!! ──さあ、再び、必然の運ゲーと興じようか────」


 あ、また、必然の運ゲーとか言ってる。気に入ったんだねっ、クモキくん、そのワード気に入ったんだねっ……。


 クモキくんが渾身を込めて放った矢が放物線上に飛んで行った。でも、その落下位置にコボルトさんは居ない。……うーん、間違えちゃったのかなっ?


「こ、このままじゃ当たらないのです!!」


「……いや、狙い通りだ」


「ほ、ほかの矢と衝突したのです!? まさか最初から二本の矢を放っておいたのですか!?」


「フッ……」


 キメ顔のクモキくん。そこに「すみませーん」と、私の後ろから呼び声が聞こえてくる。クモキくんの耳には入っていないようだ。他の冒険者かなっ?


 私は振り返って、確認してみる。すると、男子がこちらに向かってきていた。


「どうかしたのっ?」


「すみません、僕、弓兵アーチャーなんですが、まだ狙った場所に矢が当たらなくて。ちょっとあっちで練習してたんですよ。そうしたら、偶然、貴方のパーティーの方が放った矢と当たっちゃって……。すみません」


 えぇぇぇえええええ!! クモキくんっ。何がフッよ。思わせぶりな態度をとって。結局運の良さに頼ったんじゃないっ!!


「いえっ、大丈夫です。なんか色々、うちのほうがすみませんっ!」


「は、はぁ……」


 なんかこっちが謝罪する羽目になってしまった。恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだよぅ。あのフッは、結局なんだったんだろう……。紛らわしいなっ。


「お前の敗因はただ一つ。博打を打つ相手を誤ったことだ」


 うぅ、なんでこんなに恥ずかしい台詞をキメ顔で言えるのっ!? もう私のライフはゼロよ!!


 私は厨二という病を心から呪った。将来、看護師になって、厨二病患者さんに寄り添ってあげよう。私のような被害者を出さないためにもっ。


 私の進路は、このとき、確定したのだった。



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