第15話「さようなら、おっぱい……。また、会える日を楽しみにしている」
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「どこで逸れちゃったの?」
エトナの質問に狐っ娘は指を森の奥に差す。
「もう少し奥……だと思います。奥に神聖な湖があって、そこで体力を回復出来るのですが、辿り着く前に逸れてしまって……」
「大変だったな……」
俺は三人に追いつき、さも自然に会話に参加する。さも、可哀想にと、同情の眼差しを狐っ娘へと向けながら。
「……」
だが、沈黙。誰も取り合ってくれようとしない。ぐすん。
「……えっ、パパ、なんか泣きそうなのです……」
「自業自得だよっ!」
「はい、俺が悪かったです、すみません。もうしませんから仲間に入れてください……」
「……う〜ん、わかりました、許します。初対面ですし、きっと場を和ませようと冗談を言ってくれたのですよね」
「そう、イッツジョークだ!!」
「本当に反省しているのかなっ!?」
エトナが鬼の表情でこちらを睨みつける。
「もちろんだ! 俺が今まで嘘をついたことあるか?」
「うん。嘘の方が多かった気がするけど」
「……」
日頃の行いが悪いとこうなります。
「まあ、今回は許すことにしようっ。メギツネさんも許してくれるみたいだし。一回だけだからねっ」
はいー。言質取った。
とりあえず、俺は感謝の意を全身に込めて、嬉々と震える(演技をする)。
フリだ。馬鹿め、俺がこんなことで本心から謝罪するわけなかろう。一切反省などしない。
男が男である限り、おっぱいは見たいものなのに、なんで謝らなきゃいけないんだ。少年である俺が大志を抱くのは当然だ! 絶対、俺の夢は諦めないからな!!
「あれっ、なんか怪しいなぁ?」
ギクッ。
エトナの勘が冴えわたる。俺の反省の色が薄いことに気づいたか。俺は地べたに許しを乞うように深々と頭を下げた。単純に顔を覗かれたら、嘘だと速攻でバレるからだ。断じて謝っているわけではない。そう、顔を隠すためなのだ。
「まあ、いっか」と、エトナは諦める。俺は口角を上げる。
勝った!! 俺の謝罪を信用するとはまだまだ甘ちゃんだな、我が幼馴染よ!!
まだ、おっぱいを拝む権利は行使していないッ! 権利があるうちは諦めないぞ。
「……それよりもっ、メギツネさんの職業は何なのかなっ? もしかしたら、今後、共闘するかも知れないし、一応把握しておきたくてっ」
エトナの質問にメギツネは答える。
「私は盗賊です。あまり戦闘向きのステ振りをしていなくて……。コボルトにもやられそうになっちゃいました」
「お、盗賊? なのです!?」
盗賊という単語にユイユイが反応した。どうしたんだろうか?
「わっち、いいことを思いつきました! 確か……盗賊ならアイテムの性能が分かる才能があるのです! 白うさぎさんがそんな事言っていたのですよ! さっきのコボルト討伐のお礼は、それでいいのです!!」
ウォイッ!! 俺のおっぱいを拝む権利に何してくれやがる!?
「あ、その程度なら全然良いですよ、じゃあ、クモキさんが身につけているこのマントにしましょうか! うーん、あまり見たことない素材ですね……。では、さっそく。【鑑定】!!」
コイツッ!! 強引に恩を返しに来やがった!! 俺は肯定どころか、なにも言ってなかったよねッ!?
「……こ、これは!?」
うぅぅ、バイバイ……、俺のおっぱい……。
「……すごいです。初めて見ました。レアリティSの防具になります」
おっぱい……。
「ええぇぇぇえええっ!? そのオンボロのマントがっ!?」
「たしかにクソダサなのです……」
相も変わらず、俺のパーティーは本当に優しい奴らばかりだな。涙で世界が歪んで見えやがるぜ。俺は涙をこぼさないように空を見上げた。うん、木々の緑で覆われていて、清々しい青空を覗くことはできなかった。まるで、今の俺の気持ちを暗示しているようだ。
さようなら、おっぱい……。また、会える日を楽しみにしている。
「身躱しマント。レアリティS。敵の物理攻撃を確率判定で自動回避して、レベル差が大きいほど確率は高まる。確率計算として、(相手のレベルー自分のレベル)+(運の良さ)÷10ですね。補足情報として、低レベル攻略を目指すなら必須級防具との記載がありますね」
「えーっと、俺のステを考えると……、レベル差がマイナスじゃない限り、ほぼ、100パーじゃねーか!!」
これは!! 俺のステータスを考えると、かなり使える防具を序盤で手に入れたな。おそらく、物理攻撃はほぼ無効化出来たようなものだろう。ただ、魔術攻撃は流石に防げなそうだから、注意する必要があるな。
「運の良さステはレアアイテムドロップ率にも影響を及ぼすのです。パパは序盤から良い防具を手に入れましたね! 腐ったミドリムシ色のマントですが素晴らしいです!」
「ユイユイ……例えが辛辣だ……」
マントってめっちゃカッコいいと思ったのにな。実世界では身につける機会もないし。女子にはこのロマンが伝わらないらしい。
はあ、と目線を下すと、視界の端になにか光るものが入ってくる。
ん? あれ、なんだ? 俺は周りを見渡す。女性三人(一人女児だが)は先を進んでおり、話に夢中で気づいてなさそうだ。もしかしたら、宝物かもしれない。
先ほどのコボルトの戦闘で使用した固有才能により、運の良さは最高値の状態。これはチャンスだ。きっとものすごいお宝かもしれない。俺のものだッ!! 絶対にみんなには知られないようにしないと。特にユイユイは金にがめついから、奪われちまう。
俺はバレないように、隠密行動をする。草地に落ちている光源に近づき、そそくさとしゃがみ込んだ。そして、光るものを手中に収めた。
《1ギルを手に入れた》
……って、たったの1ギルかぁぁぁい!!
ブオォン。
しゃがみ込んだ瞬間、頭上に突風が吹き荒れる。
「え!?」
「きゃあぁっ!! クモキくん、後ろっ!!」




