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Little Twin Princess  作者: Clover☆Fairy
12/20

12章 インドの紳士

 アーメンガード、ハリー、リック、ロッティにとって、セーラとローラに会いに行くために屋根裏部屋に行くのは不可能なことでした。セーラとローラがいつもいるとは限りませんし、寮監(りょうかん)が夜の間生徒たちが()ているか見回りをするからです。そもそも、一般(いっぱん)生徒の寮から屋根裏部屋へ行こうにもそれなりに距離(きょり)がありました。

 ニコルの場合はプラチナ寮の上に屋根裏部屋があるので比較的(ひかくてき)簡単(かんたん)に会いに行けましたが、それでも危険(きけん)なことでした。学院の王子様のような存在(そんざい)である白薔薇(しろばら)が、屋根裏部屋に夜這(よば)いしに行っていると知られたら大変です。

 ある月が美しく(かがや)いた夜、ローラがセーラとベッキーにうながされて先に部屋に(もど)ると、ニコルがいました。この時ニコルは、アーメンガードにセーラとローラの様子を見に行ってほしいとお願いされていました。

「アーメンガードはお前たちのことをすごく気にしていたんだぞ。実は…その、(おれ)も……。」

 ニコルは言いかけて、顔を赤らめました。相手が幼なじみとはいえ、女の子と2人きりになるのははじめてです。ニコルはローラのことが異性(いせい)として好きだったのです。

「ニコル、ここに来たことがわかったら大変なことになるわよ。」

「わかってるさ。アーメンガードたちはここに来られないからな。」

 (まど)から入ってくる月の光に()らされたニコルは、昼間より色っぽく見えます。いつもは真面目(まじめ)なニコルでしたが、悪いことをしているというスリルを楽しんでいました。

 ニコルが部屋から出た後、ローラはセーラに言われました。

試練(しれん)があってこそ、本当のことがわかるのよ。」

 冬休みになり、多くの生徒が帰省(きせい)しました。セーラとローラはお(たが)い助け合っていましたが、別々の仕事を命じられることもありました。

 ローラはおつかいの帰り、通りがかりに家を見ながらこんなことを考えていました。

「セーラだったら、この家の家族を見ながらどんなことを考えるのかしら?」

 ローラはセーラから聞いた「大きな家族」について思い出していました。健康(けんこう)そうな4人の子どもがいて、見るからに豪快(ごうかい)そうなお父さん、しっかり者のお母さん、優しいおばあちゃんと何人かの使用人がいました。子どもたちは外を出歩くこともありましたし、お母さんの運転する車に乗ることもありました。夜になれば仕事から帰ってきたお父さんに子どもたちが群がり、コートのポケットにおみやげがないか(さが)します。彼らはいつも楽しく何かをしていて、それは豪快なお父さんの、そして大きな家族の雰囲気(ふんいき)に合っていました。

 子どもたちは16歳の男の子、12歳と9歳の女の子、末っ子が5歳の男の子でした。

 ローラはその家族を窓の外から見ただけなのですが、セーラは実際(じっさい)に会ったことがありました。

 ある昼下がり、セーラが家の前を通り過ぎようとした時、1台の車が道の前に()まっていました。どこかにお出かけに行くのでしょう。

 車に乗ろうとした5歳の男の子は10ペンス銀貨(ぎんか)を持っていました。ほっぺは明るいピンク色で、赤みがかった金髪と青緑の目をしたかわいい男の子は、マギモンのピリバニーのぬいぐるみを()きかかえていました。家の前に立っているセーラを見つけると近くに走って行きました。

「お姉さん、これあげるよ。」

 セーラは(おどろ)いて、その場に立ち(つく)くしました。

「ごめんなさい…。気持ちはとても(うれ)しいのだけど、いただけないわ!」

 顔が真っ赤になり、お金をもらうわけには行かないと思ったセーラはあせりました。その様子を見て、2人のお姉さんが走ってきました。

「ドナルド!いきなりお金を(わた)すもんじゃないわよ!びっくりしてるでしょ!?ごめんなさい、うちの弟が!ほら、ドナルドも早く!」

 9歳くらいの女の子が弟にあやまるよう言います。それを見て、もう1人のお姉さんは落ち着いた声で言いました。

「ノーラ、ドナルド。彼女にあやまる必要はありません。」

 その言葉に「ノーラ」と()ばれた女の子はびっくりしました。明るい茶髪にピンクのリボンカチューシャを着けた、「ジャネット」という名前の女の子は笑顔でこう言いました。

「お姉様、どうか弟の持っている10ペンス銀貨をもらってあげてくださいな。気持ちを無下(むげ)にしたくはないでしょう?」

 ジャネットがそう言ったので、セーラは10ペンス銀貨をはにかみながら受け取りました。

「ありがとう。なんて、優しいのかしら。」

 セーラがそう言ったのを確認(かくにん)すると、3人の子どもたちは車に乗りました。

「ドナルド、どうして10ペンス銀貨をあげるなんて言ったの?お姉ちゃんもどうしてそんなことを言ったのよ?」

 ノーラはなぜ2人があのような行動をとったのか不思議でしかたなかったので、問いかけました。

(おこ)られたら、どうするつもりだったのよ?」

「あのお姉さんは怒っていなかったよ。」

 ドナルドが言ったので、ジャネットもにっこり笑ってこう言いました。

「あの方は、まるで原石のようでしたね。」

 姉が何を言っているのかわからず、ドナルドとノーラは首をかしげました。

 セーラがミンチン学院に戻ろうとした時、1台のトラックが学院のとなりにあるお屋敷(やしき)の前に停まっているのを見かけました。玄関(げんかん)は開いており、引っ()し業者の人がそこから出たり入ったりして、荷物や家具を運んでいます。チーク材の美しいテーブルや椅子(いす)、東洋風の豪華(ごうか)刺繍(ししゅう)の入ったついたてを見て、セーラは(なつ)かしく感じました。

「きっとインドから裕福(ゆうふく)な家族が引っ越してくるのよ。まだ会ったことはないけど、仲良くなれそうだと思うの。」

 セーラはその日の夜、うきうきした様子でローラに話しました。ローラもおつかいに行くとき、近所のお屋敷に注目しました。窓の外からちらと見ただけなので(くわ)しくはわかりませんでしたが、東洋風の家具も多く、仏像(ぶつぞう)までありました。

 お屋敷の主人は188㎝もの長身で細く、青いロングヘアが特徴的(とくちょうてき)なスーツ姿の紳士(しんし)でした。この紳士はどういうわけか、左手首の辺りをおさえていました。

旦那(だんな)、けがしてるんですから無理は禁物ですよ。」

 お屋敷の前にいた紳士に、「大きな家族」のお父さんが少し心配そうに声をかけました。遠慮(えんりょ)のない物言いなので、親しい関係なのでしょう。

「これくらい軽いけがだから大丈夫(だいじょうぶ)だ、カーマイケルくん。医者に()てもらったからな。」

 落ち着いた表情で、紳士は言いました。エリック・カーマイケルが遠慮せずにそのお屋敷に入って行って、長時間いるのをセーラとローラは見ていました。

 お屋敷に住む紳士は独身(どくしん)で、ヨーロッパの裏社会(うらしゃかい)ではそこそこ有名な人物でした。セーラは、紳士がマフィアの抗争(こうそう)でけがをしたんじゃないかと想像(そうぞう)して心配しました。

 一方、ウェールズの実家(じっか)に帰っていたハリーは、自分の部屋のベッドに横たわっていました。ベッドの上にはリスのナッツ、オオカミのショコラ、ロップイヤーのミンティが(なら)んでいました。ナッツ、ショコラ、ミンティは「アニマルアカデミー」のキャラクターです。ナッツはバニーユとフレーズのいとこで、ショコラとミンティは友達です。

 ハリーもこのアニメが好きで、ぬいぐるみも集めていました。

 ハリーは、ミンティを持ち上げて言いました。

「ミンティ、ショコラのことが好きなお前の気持ちがわかった気がするよ。おいらも好きな子ができたんだけど、なかなか勇気を出せねぇんだ…。」

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