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9話 設定

 空を走る光はその場にいる者を、見た目で分けていった。

 見たことのない種族の者は、話し合って決めている。

 代表以外は分け終わった。


 ウィルがリリに聞く。


「リリ様と同じ所に立っている皆さんも、分けた方がいいのかな?」

「そうだね。よろしく。そういえば紹介してなかったね。私から見て右からカーヘル、トレニア、デモク、ルーエル、プニプニ、ファースト、ぼーん、いなも、乙姫だよ」


 リリは抜かすのもなんだかなと思ったので、全員言った。

 名前を呼ばれた代表は、軽く手を振ったり、あいさつしたりした。

 空を走る光も挨拶を返している。


 ウィルが言う。


「まず、プニプニさんは確実に人じゃない人になるよ」

「だろうね。乙姫は?」

「鱗がある人もいたからね。大丈夫だよ」

「爬虫類系もいるのかな。ぼーんはどうだろう?」

「大きさだけなら特に問題ないけど、鎧の中は見せても平気なのかな?」

「うーん、スケルトンはアウトなんだよね?」

「アンデッドは人じゃないよ。例外があるかは、分からないかな」

「じゃあ、やめた方がいいね」

「あとの皆さんの見た目は大丈夫だけど、氾濫に連れて行くなら、トレニアさんとカーヘルさんはやめた方がいいよ」


 リリは首を傾げながら聞く。


「どうして?」

「冒険者じゃない人が氾濫に協力しようとする時は、冒険者ギルドで登録するんだ。その時に見た目が弱そうだと、弾かれる可能性があるよ。リリ様もそうだけど、背が低いってだけで子供に見えたり、弱そうに見られるからね。それに弾かれないためには、ちょっと強さを見せなきゃいけなくなるんだ。あとゴーレムだから問題ないとは思うけど、もし氾濫の時にそういう人が、強い所を見せたりすると目立つよ」

「それはちょっと困りそう。カーヘルと私は行きたいからね」


 空を走る光はかなり驚いた様子だ。


「え、リリ様くるの?」

「私も行くよ。100人も行くなら今回が一番安全だからね。それで強そうに見えればいいんだよね? カーヘル、どうしようか?」

「ドラゴンでいましょうか?」


 リリはウィルに聞く。


「どう思う?」

「大きさはどれくらいになるのかな?」

「この玉座の間だと天井にぶつかるね。室内はやめた方がいいかな」


 玉座の間は高さ10mを超えている。


「それは大きすぎるね。さすがに竜人族もずっとドラゴンではいないから、それだと入れる家はほとんどないよ」

「ではこれならどうだ?」


 と言ってカーヘルはドラゴンの角と尻尾だけ出した。


「それなら竜人族に似てるから、平気かもしれないね。ドラゴンになれることと、この見た目で成人なんですって、言っておけば問題ないよ」

「なるほどね。あとは私かな」


 リリはどうすれば強そうに見えるかを考える。

 まずはちょっと見た目を変えるくらいで、どうにかならないかなと思う。


「目を増やしたり、角を生やしたりして人じゃないですよってやってみるとか?」

「うーん、見た目はそのままで目と角が増えるんだよね? あんまり知られてないような種族だと、強さとか何ができるのか見せて欲しいって言ってくると思うよ」

「強さを見せて欲しいが1番困るんだよね……」


 自分の戦闘力はたいしたことなくても、戦いの役に立つようなスキルってなんだろうとリリは考え始めた。


「補助魔法で全能力アップとか?」


 代表達がどうなるか想像し始めた。

 いなもとカーヘルがどうなるかを伝える。


「Cランクの皆さんが、Aランクくらいの強さになりそうです」

「リリ様が100人にかければ、ゴーレムの出番はなくなりますね」


 空を走る光は常識的に考えてありえないと言いたげな顔をした。

 ルティナがおずおずと、外だとどう思われるかを言った。


「そこまでの強化を行えるのは、普通希少な魔法薬くらいです。今人類で一番強力な補助魔法の使い手は、聖都にいる聖女様だと言われていますが、そこまでの強化を100人同時にはできないと思います」

 

 人の枠を越えちゃったかと、リリは腕を組んで違う方法を考える。

 拠点をダンジョンみたいにするスキルがあったな、と思い出した。


「じゃあトラップ作成で落とし穴に落としたり、能力低下かけたりは?」


 デモクとトレニアとプニプニが答える。


「リリ様の落とし穴って、今回の出てくる魔物程度じゃ落ちたら絶対に上がってこれないやつですよね」

「能力低下も抵抗できないですから、上を通った魔物全部にかかりそうですね」

「進行速度がかなり遅くなることでしょう。ですから魔法で処理するのも、前衛で対応するのも問題なくなりますな」


 グローが半信半疑な様子で言う。


「罠で氾濫をどうにかできたって話は、かなり弱い魔物しか出ない土地じゃなきゃ聞かないな。能力低下も、毒を使うのが普通だ。上を通るだけって……」


 グローは何かあまりよくない言葉を言いそうになったのか、そこで言葉を切る。


 グローの態度で上を通るだけで効果があるのはおかしいんだな、とリリは気がついた。

 他に自分が戦わないやつはと上を向いて考える。


 思いついた大規模戦闘のイベント専用魔法を、ポロッと言ってしまった。


「軍勢を召喚?」


 ぼーんとルエールが言う。


「リッチの軍勢なら15万頭程度であれば、一方的な殲滅が可能ですぞ」

「ヴァルキリーの軍勢を呼べば、50万頭くらいまでだったら何とかなりそうですね」


 空を走る光は、そんなことができる人に心当たりがなかったようだ。

 ウィルが言う。


「今回の氾濫に対抗できる規模の何かを、召喚できる人は知らないよ。それにリッチを召喚したら、邪神との関連を疑って討伐も考える人が出てくるだろうね」

「流石にこれは使えないね」


 イベントで使っていた魔法は、規模は合ってそうなんだけどなーとリリは違う方法を考える。

 うーん、と唸りながら傾き始めた。

 拠点の全員が少しハラハラしながらその様子を見ている。

 リリは攻撃しないでどうにかする方法が思いつかなかったので、やけになって言った。


「えー、もうさ、氷の杖みたいに武器を使って、範囲魔法攻撃しちゃうとか?」


 代表達はそれなら色々できると思ったようだ。

 乙姫とファーストが言う。


「ウォール系の魔法であれば、魔物の進行を止めることも可能でしょう。ポーションによる回復や、前衛が倒し切る時間を稼げるかと」

「それならゴーレムと共に使えそうです。使える者が制限された武器にしてみてはいかがですか。リリ様の見た目や、戦闘能力に関係なく参加できると思われます」


 これならいけるのかなとリリは思った。

 空を走る光の方を見る。


 空を走る光は使用者が制限された武器なら、かなり強力な効果を持っていてもおかしくないと思ったようだ。

 ナリダが言う。


「人を選ぶ武器は、強力な効果がある物が多いから登録の時に弾かれたりしないわ。氷の杖もザーツマールの王族しか使えないみたいよ。再使用までに時間がかかるものも多いから、試し撃ちはさせられないと思うけど、鑑定はされるわよ」


 リリは空を走る光に一応聞いてみる。


「これなら腕試ししようとはしてこないよね?」


 空を走る光は今までで一番悩み始めた。

 リリは焦ったように聞いた。


「え、この方法なら強さ関係ないよね。ギルドで確認されるの?」


 ウィルが考えながら言う。


「ギルドは確認しないと思うよ。それよりも、そんなに強い武器が使えるのに、戦えないなんてあり得ないって思って、個人的に戦い方を教えようとしてくる人たちがいそうなんだよね」

「それは断れないの?」

「リリ様が言っても状況的に難しいだろうね。普段だったら僕たちも止めたりしないから、かなり怪しまれるだろうし」


 ファーストがリリに確認する。


「リリ様は弱者のフリをするつもりなのですか?」

「うん? どういういこと?」

「リリ様は手加減が上手くいかなかった時のことを考えて、腕試しや戦闘を避けたいのではないですか」


 リリはそうだねと頷く。


「腕試しをしなければ、強いということは知られてもいいと思いますか?」

「まあ、やばいと思われない程度なら良いと思うよ」

「では自分の身は守れるくらいには強いとだけ伝えましょう。そして、腕試しのような行為はしたくないと、断ればよいのではないですか」

「断れるの?」


 ファーストは事実を伝えるように淡々と言った。


「手合わせを断っても仕掛けてくるような者は、ただの襲撃者です。護衛が相手をしても問題ありません。それにリリ様の手加減の練習相手としても、丁度良いのではないですか」


 全員がそれなら平気そうだと頷いている。

 リリは急に手加減の難易度が上がりすぎではと思った。慌てて言う。


「え、それって大丈夫なの? やり過ぎで捕まらない?」


 ファーストとウィルが答える。


「襲ってくるのですから、捕まるのは襲ってきた方なのではないですか」

「相手が冒険者だったら、犯罪者でもない普通の人に襲いかかった時点で、他の冒険者に再起不能にされても仕方がないよ」


(再起不能は過激すぎない……? いや、私が手加減できなくてやらかしたら結局一緒? あれ、もしかしてみんなが戦っても私の手加減の練習でも、同じ結果になるってことじゃ)


 リリは全員が襲ってきた相手は再起不能になっても仕方がないと、考えていたことに気がついた。

 他の方法も思いつかないしと思いながら言う。


「うーん、それが常識なら良いのかな……」


 それを聞いたほとんどの代表達は、安心したように笑った。

 リリ様にやっていただけるのであれば、といった感じである。

 ファーストが納得したような様子で言う。


「リリ様のような強力な魔法の使い手が、我々の里にいるとなれば、我々は十分に独立してやっていけますね」


 リリは、不思議そうに聞く。


「魔法の使い手って言うけど、今回は武器でしか魔法攻撃しないよ?」

 

 ファーストは微笑んで頷く。


「はい、問題ありません」


 リリは、ファーストが楽しそうだと思った。

 ファーストはその顔のままリリに質問する。


「リリ様、ゴーレムは氾濫の後、どうなさる予定ですか?」

「使えそうならくーの店で売るか貸すかしようと思ってたよ。平気かな?」


 ファーストは頷く。


「はい、リリ様。ゴーレムは隠れ里であるキャラリックメルの生命線ともいえる技術です。私は貸し出しの方がいいと思いますが、いかがですか?」


 リリはその設定で決まりなんだ、と思った。


「そういう設定なら貸し出しでいいよ。それにしても隠れ里キャラリックメルとか、隠しステージ感があっていいね」


 その場にいる全員が隠しステージという言葉を聞いて、一瞬それは何だろうとつっかかったような表情をしたが誰も何も言わなかった。

 ファーストが微笑んで言う。


「ありがとうございます。では今までの話を元に、空を走る光と我々の設定を決めてもよろしいですか」

「任せるよ」


 ファーストはお任せくださいと一礼して話し出す。


「アルバートとサラの出身地であるキャラリックメルは、隠れ里で、遠隔操作ができるゴーレムの技術を持っています。それを知った空を走る光は、里への連絡手段を持ったくーの元を訪れ、ザーツマールを助けるために力を貸してほしいと言いました」


 全員が設定を話すファーストを見る。


「くーは里へ連絡をしましたが、交渉は当然難航します。ゴーレムの技術を開示しろ、作れる技術者を渡せ、といったことを言われたくないからです」


 ほとんどの者がそうだろうなと聞いている。

 リリはそこまで考えていなかったので、初めてそういうこともありそうだなと思った。


「そこにリリ様が現れます。空を走る光がリリ様について知っているのは、あの犯人に支配をかけられるほどの実力者であるということだけです」


 空を走る光は戦わずに実力が知れるのはここだけだったと、納得した様子だ。

 リリは、支配って使えることを知られて捕まったりしないんだろうかと、いまさら思う。


「リリ様は話を聞いて、条件を出します。嘘をつかないこと、キャラリックメルについて誰にも何も言わないこと、この2つを守れば、ゴーレムを貸し出せるように手配すると言いました」


 命令の内容はバレても良いんだねと、リリは頷いている。

 ファーストはリリが頷いているのを確認してから、空を走る光の方を見て言った。


「空を走る光はそれを了承します。そして、詳しいゴーレムの説明と、貸し出せる数を聞いて気がつきました。グレイトホーンの数によっては、ゴーレムがいても対応しきれないかもしれないと」


 何もしなかったら、ギリギリって言ってたねとリリは思い出した。


「その話を聞いたリリ様は、空を走る光にこう言います。魔法でせ……」


 ファーストはここで一度止まる。そして微笑んで言った。


「これは、違いますね。リリ様は優しいので、ザーツマールの観光案内をしてくれたら、そのついでに魔法で丁度いい感じに減らしてあげるよです」


 流石ファースト様、分かっていらっしゃるといった声があちこちから聞こえる。

 リリは、そんなこと言ったら怒られそうだから言わない……いや目標のために言うかも……と、どう反応したら良いか迷った。

 リリが何か言う前に、ウィルが提案する。


「リリ様、設定はそのままで良いと思うけど、説明する時は僕たちが頼んでリリ様に来てもらったことにしてもいいかな?」


 リリは、なんでファーストに聞かないんだろうと思いつつ聞く。


「えーと、どうして?」

「僕たちが頼んで連れてきたって言った方が、リリ様に仕掛けてくる人たちの相手を、僕たちがしてもおかしくなくなるよ」


 リリはそうなんだと聞いている。

 そのあとウィルは言いにづらそうに言った。


「それに……観光のついでに氾濫をどうにかするって最初から言ったら、すごい喧嘩を売られると思うよ」


 聞いた瞬間に、当たり前だね! と思ったリリはもう笑うしかなかった。

 勢いよく言う。

 

「頼んだことにしてもらおうかな。というかファースト、分かってて言った?」

「はい、誰かがリリ様に違う理由で行くことにした方がよいと伝えるところまで、想定させていただきました」

「そこまで設定だったんだね……」


 ファーストはその通りですと頷いた。

 リリは諦めて言う。


「はぁ、それならもう頼まれたことにした方がいいね」

「リリ様、この設定で進めてよろしいですか」

「うん、いいと思うよ」


 リリの認証を得たファーストは、空を走る光を見て言った。


「では、皆さん。数の調整とリリ様の魔法については、偵察の結果が出てからお伝えします」

「分かったよ」


 空を走る光はザーツマールが落ちるのが避けられればそれで良いと、前向きに考えることにしたようだ。

 キャラリックメルの全員がこれから忙しくなりそうだと、様々な顔で笑っている。

 ファーストがリリを見て言う。


「リリ様、他に何か気になることはございますか?」


 リリはお開きの雰囲気を感じたので、最後だと思って空を走る光に気になったことを聞いた。


「えーとね、いまさらなんだけど支配の魔法って、法律で使うのを禁止されてるとかないの?」


 リリがそれを言った瞬間、空を走る光だけではなく、全員が驚いたようにリリを見た。


 キャラリックメルの全員が、リリに何と声をかけようか迷っている。

 空を走る光はどんな常識で生きてきたら、そんな事が言えるのだろうと思った。

 リリはそんなに反応されるとは思っていなかったので、何かおかしいこと言ったかなと焦り始めている。


 ウィルは慎重に答えた。


「リリ様、支配も含めてだけど、魔法の使用を禁止するなんて法律はないと思うよ」

「え、何使っても捕まらないの?」


 空を走る光は、何をするつもりだ、と混乱が深まったようだ。

 キャラリックメルの面々は、リリが捕まるのかどうかが知りたいのだと理解した。

 ファーストが代表して言う。


「リリ様、どんな魔法でも使えるだけでは罪にはならないという意味だと思われます。何に使用したかによって、捕まるのではないですか」


 リリはファーストの方を向いて聞く。


「あの犯人に支配を使った事がバレるのは大丈夫だったんだよね?」

「はい、黒の砂に対する聞き取りでは、誰が使ったのかという話になりませんでした」


 アルバートとサラも頷いている。


「空を走る光は奇蹟が起きたと説明し、それ以上の追求はありませんでした」


 空を走る光は嘘が本当になってしまったような気分で頷いている。

 リリはそれで説明になるの……と信じられない気分だ。

 ファーストはさらに続けて言う。


「説明を受けた者達は実際に使った人について調査するべきかを、最終的に町長に確認しています。町長は奇蹟が起きたのであれば、使った人は存在しませんと回答しました。その後、グルークの町で調査が行われている様子はありませんでした」


 リリは考えが二転三転して、最終的に説明になってないと思った。


「色々言いたいことはあるけど見逃されてるよね、それ。結局もし調査されて見つかったら捕まってたの?」


 ウィルが答える。


「捕まったりはしないと思うけど、支配を使えるってことで色々と有名にはなるだろうね」

「うん、そろそろ分かってきたよ。悪い意味で有名になるんだね」


 リリはファーストの方を向いて聞く。


「設定に支配を使ってるところを見て実力が分かったって入れてたけど、人に説明できないよね?」

「空を走る光の皆さんはキャラリックメルについて何も言わない約束です。リリ様の実力も先程の設定も詳しい説明はできません」

「全部察されるだけなら大丈夫ってこと?」

「はい、証拠はどこにもありません。証言できる者もおりません」


 リリはファーストが真面目に言うので、完全犯罪みたいだねと笑ってしまった。

 リリは空を走る光にも聞いてみる。


「つまり、私が外に出て支配について何も言わなかったら、大丈夫だよね?」


 空を走る光は楽しそうに聞かれて、自分達のことを忘れているんじゃないかと毒気を抜かれたような気持ちになった。

 ウィルは分かってるとは思うけどと言いたげな雰囲気で言う。


「あの事件の犯人のことで、リリ様が捕まったりはしないと思うよ。でも、いつか僕たちに支配がかかってることに気がつく人がいたら、どうなるか分からないよ」


 それを聞いたリリは獲物が罠にかかった瞬間を見た時のような笑みを浮かべた。

 事情を知っているキャラリックメルの者達も、同様に笑みを浮かべる。口に手を当てたり、顔を背けたりして笑ってしまう者もいた。


 空を走る光は急な変化に緊張したように1歩下がる。

 ウィルは考えても答えが出ない予感がしたのか、直接聞くことにしたようだ。


「何かおかしかった?」


 リリはやっと聞いてくれたと楽しそうに笑みを浮かべながら言う。


「みんなは私が何の魔法をみんなにかけたのか覚えてないのかな」

「何のって……っ!」


 空を走る光はリリが何という名前で自分達に魔法をかけたかを思い出したようで、まさか、という表情でリリを見る。

 リリは空を走る光の表情を見て、笑みを深くして言った。


「みんなに魔法をかけた時、私言ったよね。みんなに祝福の魔法がかかったよって」


 リリは無詠唱で〈範囲〉〈状態解析〉を使い、空を走る光のステータスを見る。表記は前見た時から変化していなかった。

 この表記でも、効果は変わらないと実験で分かったことを思い出してリリは頷く。

 そして信じられない顔をしている、空を走る光に向かって言った。


「みんなに今かかってる魔法はね。祝福を受けたって信じた人にだけかかる、支配の祝福だよ!」


 空を走る光はせきを切ったように話し出す。


「こっちの方がバレたら大ごとだよ!」

「祝福が本当にかかってるなんて普通思わないわよ!」

「そんなの想像できないよな……!」

「教会で論争になりますよ!」

「絶対今まで以上に面倒ごとに巻き込まれるだろこれ!」


 今までの態度が嘘のような慌てように、リリはつい笑ってしまった。

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