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30話 デメシード

グロ注意です。

 リリとファーストは急いでスペードの間に向かっている。

 リリはすでにリモコンを手に持った状態だ。


 ファーストが簡単に報告を飛ばしてくれる。


「情報誌によると最低でも5件は同じような事件が起きています。犯人は定期的にデメシードを手に入れる方法を持っているか、増やす方法を知っていると思われます」


 リリはそれを聞いて伝える。


「うちじゃあ作れない素材だから、是非手に入れる方法が知りたいね」

「はい、捕まえるついでにその情報も手に入れましょう」


 スペードの間に着く。

 ノックをしてから深呼吸して、ドアを勢いよく開けた。

 ウィルが驚いている。


 リリは急いでリモコンを操作してウィンドウを表示した。


「こんばんは、急いでるからすぐに皆に聞きたいんだけどいいかな」


 空を走る光のメンバーは驚きながらもいいよという風に言ってくれる。

 リリは聞く。


「ウィルはデメシードを埋め込まれたの?」


 それを聞いて空を走る光のメンバーは何も言えないようだ。

 リリはそれを見て思った。


(おかしい、強制度はもうほとんどないのにどうして何も言えないんだろう。もしかして、治されてないと思ってるから?思い込みで効果が変わる支配のスキルっぽいといえば、そうだけどそこまで凝らなくてもいいのに)


 その時、天井からから吊り下げられているシャンデリアがランプのように、回転する青い光を放つ。

 ウィルは驚いている。

 リリは、あ、治療完了の合図だ、ちょうどいいタイミングだと思った。

 そのあとすぐに他の部屋でも同じように吊り下げられたシャンデリアが青い光を放つ。

 空を走る光のメンバー全員がそれを見て驚いている。

 なのでリリはすぐに言った。


「はい、皆、治療終わったよ」


 空を走る光のメンバーはそれを聞いて、さらに驚いたようだ。

 そして聞いてくる、どういうことかと。


「最初から治すつもりで、皆を森から連れてきたんだよ。犯人について知りたかったし、どうやって支配をかけられたかも知りたかったからね。研究目的にしたのは、どうせ治すのに抵抗しろって命令されてると思ったからだよ。合ってたね」


 全員が肩を落としながら合ってるねと伝えてくる。

 そこでもう一度リリは聞く。


「それで、もう1回聞くけどウィルはデメシードを埋め込まれたの?」


 ウィルが答える。


「そうだよ、あいつが世界中どこに行ってもこれを治せる奴はいないって言いながら、ここを切り裂いてデメシードを埋めてきたんだ」


 胸の中心を縦に指さしながら言う。

 リリは犯人の言動を馬鹿にして伝える。


「世界中どこに行ってもこれを治せる奴はいないって、自分が治し方を知らないっていう無知をさらけ出してるだけだよね。安心してねウィルそいつは馬鹿だから治し方を知らないだけで、治す方法はあるよ」


 空を走る光は希望が見えたような様子だ。

 ファーストに治すための人員を呼んでもらうように伝えてから、リリはデメシードについて知っていることを伝えようとする。

 かなりグロい話になるけど平気かを聞いた。

 全員が教えてほしいというので、伝える。



「デメシードっていうのは別名悪魔の種って呼ばれてて、最初は心臓に同化して、同化した対象から魔力を吸い取って成長するらしいよ。成長していくと体中の全ての臓器をデメシードが作り変えていって、最後に脳を作り変えてその人に成り代わるんだって。まったく同じように作り変えるから、知っていることも同じで外から見ただけだとデメシードが体を乗っ取ったってことが、誰にも分らないんだよね」


 それを聞いて、空を走る光はだいぶ引いている。

 リリも自分で話していてだいぶ怖い。

 続けてリリは成長を止める方法を教えた。


「デメシードはすごい早さで成長するから、だいたい7日くらいで体を乗っ取られちゃうんだ。清めの水とか聖水とかそういう悪いものに効きそうなアイテムを使うと、成長が止まるんだよ。ウィルが入ってる水槽にはそういうの全部入ってるから、完全に成長は止まってると思うよ」


 ウィルは自分が入っている水を見ている。

 最後に治し方を話す。


「治し方はね、普通に聞くとだいぶ酷いことみたく聞こえると思うけど、安心してほしい、失敗したことないから。まずデメシードを取り除きます」


 ここで待ったが入る。

 デメシードがどんな成長をするのかを知った空を走る光は、そのまま取り除いたらどうなるか分かったからだ。

 ダグが聞く。


「それって心臓ごとなくなって、死ぬんじゃないか?」


 リリが残念そうに言う。


「残念なことにそれしか方法がないんだよね。大丈夫、死なないようにやるから。いやだったら水槽が続くけど体が乗っ取られたりはしないよどうする?」


 怖すぎる、本当にあの運営は何を考えているんだとリリは思った。

 ウィルはすぐに答える。


「失敗したことはないんだよね。だったら治してほしい。このまま町に戻れないのは困るよ。あいつも捕まえたいし」


 空を走る光のメンバーは心配そうにウィルを見た。

 リリは伝える。


「絶対に失敗しないから安心してね。痛くもないようにする予定なので、目を閉じてれば気がついたら終わってるくらいの感じでやるよ。それから切ったりとかもしないよ」


 空を走る光は、切らずにどうやって取り除くのか疑問に思ったようだ。

 リリはデメシード用のスキルがある時点で、運営の正気を疑うしかないなと思った。

 ファーストがちょうど戻って来る。

 リリは空を走る光のウィル以外のメンバーに、治ったらまた連絡するねと言ってウィンドウを閉じた。


 リリはウィルが入っている水槽の水を抜く。

 ベッドや治療に使う道具をもってきたり、治すためのスキルを使う治療班が入って来る。

 リリはウィルについている鎖を外す。

 治療班がベッドなどの道具を置いていく。

 リリはウィルにベッドの上に寝るように伝えた。

 ウィルがベッドの上に横になる。

 全員の準備が整ったところで、リリが手順を確認する。



「まず最初に痛くないように痛覚無効の魔法を使います」


 種族が妖精の治療班の1人がお任せをと言ってウィルの近くに立つ。


「次に万が一動かれて外れると困るので体を抑えます」


 石でできたゴーレムと狼の獣人がウィルの頭の方と足の方に移動する。


「それで、デメシードを取り除くために道具を使います」


 巨大なバズーカのような見た目をした道具をもって、ドワーフがウィルのそばに移動する。


「デメシードを取り除けた瞬間に部位欠損回復と全回復、生命の炎をかけて回復します」


 狐の獣人、天使、フェニックスがスキルをかける用意をする。


「回復スキルを使った後HPが減ってないようだったら成功だよ、ステータスの確認よろしくね」


 エルフが状態解析のスキルを使うために杖を構えた。

 リリは全員の準備が整ったのを確認して言う。


「じゃあ開始するよ。ウィル心の準備は大丈夫?」

「大丈夫」


 ウィルは覚悟を決めたように言ってから、目を閉じた。

 それを見てリリが指示する。


「まずはステータスを見てね」


 エルフが〈状態解析〉を魔法っぽく使う。

 ウィンドウが現れた。

 エルフがリリの方を見て頷く。

 それを見てからリリは言う。


「痛覚無効の魔法を使ってね」


 妖精が〈痛覚無効〉を魔法っぽく使う。

 エルフがリリにステータスに表示されましたと伝えた。

 それを聞いて、リリはウィルの体を抑えるように指示する。

 ゴーレムと狼の獣人が肩と腰を抑えた。

 リリはドワーフの方を見て言う。


「じゃあそれをウィルに当ててね」


 ドワーフはバズーカのような見た目をしたものをウィルの胸の上に当てる。

 引き金に指をかけた。


「ここからは指で指示するから指を向けられたと思った瞬間に、魔法を使ってね」


 全員がうなずく。

 リリは戦闘モードと思って視界を切り替える。


 まずはドワーフに指を向ける。

 ドワーフはそれを見た瞬間に引き金を引いた。

 スキル〈摘出〉が発動する。

 バズーカのような見た目をしたものが赤く光った。


 それを確認してすぐにフェニックスと狐の獣人と、天使に指を向ける。

 フェニックスと狐の獣人と、天使は指を向けられた瞬間に無詠唱で〈生命の炎〉〈部位欠損回復〉〈全回復〉をウィルに向けて使った。

 ウィルを鮮やかな炎と魔法陣、光の輪が通り抜ける。

 最後にエルフを指さす。

 エルフはステータスを確認して言う。


「HPは減少していません」


 リリは頷いて言った。


「皆よくやったね、成功だよ」


 全員がやったー、よっしゃーという風に言いながら手を上げて喜んでいる。

 ウィルには目を瞑っている間の出来事だったので、光ったことしか分からなかった。

 リリが聞く。


「ウィル、今気分が悪いとかどこか痛いとかそういうのはない?」


 ウィルは胸の辺りに手を当てて、そういった感覚があるか探ってからこう答える。


「気分も悪くないし、痛くもないよ。治ったっていう感じもしないんだけど、治ったの?」


 リリはそれを聞いて、やっぱり気になるよねと思ったので伝える。


「私はあれ、かなりグロいから見るのはお勧めしないけど、ウィルが治ったっていう証拠が欲しいなら見せるよ」

「一応見たいかな」


 リリはドワーフからバズーカのような見た目をしたものを受け取る。

 何か乗せられるものをと探していると、ファーストがお盆を差し出してくる。

 ありがとうと言って受け取って、それの上で見た目がバズーカの物を振る。

 べちゃっと音がして、お盆の上に何かが落ちた。


 ウィルにだいぶグロいよと言って渡す。

 ウィルはお盆を受け取ってその上に載っている物を見た。

 心臓に1つ金色の目がついており、一定の間隔で脈打っている。

 目はギョロギョロとあたりを窺っている。

 ウィルはそれを見て、うっと声を出した。

 これが自分の体にいたんだと、見たことを後悔する様子から、治ったんだなと実感したような雰囲気に変わっていった。


 ウィルはうん、本当にグロいねと言いながらリリにお盆を返す。

 リリはお盆の上に載っているデメシードを見て、イベントの時よりはだいぶましな見た目をしているなと思った。

 これは伝えないでおこう。

 本当にやばいのだ。


 とりあえず治療班には撤収を呼び掛ける。

 デメシードも布をかけて持って行ってもらう。

 もしかしたらまだ回復アイテムを作るのに使えるかもしれない。


 とりあえずウィルに今日はもう遅いから空を走る光の皆に治った報告だけして、寝たらどうだろうと聞く。

 ウィルがそれもそうだねと言うので、水の入っていない水槽に入ってもらう。

 リモコンを操作する。

 ウィンドウが現れた。


 空を走る光のメンバーは、ウィンドウが現れた瞬間にどうなったのか聞いてきた。

 なのでウィルがちゃんと伝える。


「皆、安心してほしい無事に治ったよ」


 空を走る光のメンバーはそれを聞いて喜んでいる。

 ウィルはデメシードの見た目には、一切触れないことにしたようだ。

 なので続けてこういう。


「今日はもう遅いからこのまま寝てしまおうと、思ってるんだ。明日の朝直接会おうね」


 ウィルはリリの方を見て言う。


「いいよね?」

「もちろん」


 空を走る光はそれを聞いて、直接会えるのが楽しみというように笑う。

 なのでさっさと日付を変えてしまおうとウィルはこう言った。


「じゃあ、皆明日すぐに会えるように今すぐ寝よう。おやすみ」


 他の空を走る光のメンバーもそれに賛成のようで、おやすみと言って寝る体制に入った。

 リリはリモコンを操作してウィンドウを消す。

 ウィルに一応伝える。


「今日からはもう水槽の中で寝なくてもいいんだよ。隣のベッドで寝たら?」


 ウィルはそれを聞いて笑って答える。


「いや、いいよ。水の入った水槽の中で寝るなんて体験これから出来そうもないからね。出来れば水槽の蓋を閉めて、水を入れてくれると嬉しい」


 リリはそれを聞いて面白いなと思ったので、ウィルが言っている通りに蓋を閉めて、水を入れてあげる。

 そしておやすみと言って部屋を出ていった。


 トランプの館の地下へ向かう帰り道、リリはファーストに聞く。


「ねえファースト、もう犯人の居場所とかは見当がついてるんだよね」

「はい、現在他にも関りがあるものがいないか調査しておりますが、ほぼ確定で間違いないかと思います」


 リリはもう1つ聞く。


「空を走る光の皆だけでも捕まえられそうかな?」


 ファーストは犯人とその仲間の強さを思い出しながら答える。


「はい、現在見つかっている犯人であれば実力差的には何とか捕まえられると思います。ギリギリの戦いになると思いますが」


 リリはそれを聞いて考えて言う。


「うーん、ギリギリかぁ、じゃあ私達は空を走る光が捕まえやすいように、何か支援しないとね。他にもいる犯人の協力者は犯人を捕まえる時にこっちで、邪魔できないようにしてあげよう」

「それがよろしいかと思います」


 リリは次に明日のことを考えた。


「明日は久しぶりにみんな体を動かすから好きなように動けるようにしてあげないとね。拠点のみんなには空を走る光がいることは伝わってるんだよね」

「はい、少なくとも小宇宙エリアの者たちには確実に伝わっております」

「なら侵入者だって襲われる心配はないね。空を走る光のみんなにも、野生の魔物じゃないから攻撃しないように伝えないとね」


 あとはと考えてリリは言う。


「今着てる服だと、この星を自由に動くのは難しいから運動着ってことで、ジャージでも用意してあげようかな」


 ファーストは今いる星の様子を思い出して答える。


「それがよろしいかと思います。溶岩地帯や氷河などは今のままですと危険だと考えられます」


 最後にファーストに聞く。


「スキルとか自由に使えるようにしてもいいよね?」


 ファーストは少し考えて答える。


「スキルが使えないままですと、犯人との戦いに向けた訓練ができなくなると想定されます。彼らが我々に向けてスキルを使うとは、今のところ思えないので問題ないかと思います」

「ありがとうファースト、これで明日の準備は万全だね」

「はい、リリ様、こちらこそ聞いていただいてありがとうございます」


 リリはとりあえず、明日の準備をということでジャージを作りに工房に向かった。


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