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第16話 姉弟ケンカだとさ←巻き込まないでください!

 真黒な髪は輝く金の髪に、瞳の色は今の色よりも青みが強まり、小麦色の肌が嘘だったかのように白く変り果て、細身の青年がそこに立っていました。以前にも一度こういった変化の様を見せていただきましたが、どうにもなれません。あぁ、でもなんとなく感なんですが、この姿もレイさんの作った偽物である気がします。レイさんが、なぜ変装をしているのか知りませんが、まぁいいです。人間だれしも秘密の一つや二つや百個くらいあるはずです!


「な……あんた。なに、今の。初めて見たんだけど、また新しい魔道具を作ったの。っていうか、いいなそれ。私にも貸してよ。それつかったら、傾国の美女にだってなれそうじゃない」

「はぁ。さすが、ユリア姉さん。ろくなことに使わないよね。残念、あげないよ。ちなみに、これは新作じゃなくてレイフォードとして作った魔道具の第一号作」


 レイさんは、姿が変わっている説明をすると、瞬きをするわずかな間にささっと、私のよく知るレイさんのすがたに戻ってしまいました。


「え、嘘でしょう。私のメガネを持ってしても、あなたが変化していること気づけなかったわよ。それが、第一号ってあんた相変わらず企画外ね」

「おほめいただき光栄です、姉弟子様」


 慇懃無礼に、お辞儀すると、レイさんはたぶん面白半分からかい半分で私をちょいちょいっと手で呼び、呼ばれたとおりに近づいた私の肩を抱きよせます。その仕草に違和感なくするっと警戒心の隙間を縫って引き寄せるものだ。




「ちょっ、この子誰! 嘘、もしかして、レイこの半年師匠もだれもいないのを見計らって女を連れ込んでたの! そ、それとも結婚? 奥さん? なんで、結婚式に呼ばないのよ」


 めちゃくちゃ早口でまくしたてるその声は、とても大人びた声なのにそれが年端もいかない少女というかもう幼女の口から飛び出してくるのに違和感があるのだけど……それは、私だけ? それにしても、いろいろと突っ込みどころが満載な言葉が出てきます。


 これは、私が突っ込んだほうがいいのかしらん? それとも、誤解を解くために無難に自己紹介かなぁ

 ?


「そう、ユリア姉さん。彼女はアザレア。俺の弟子兼お嫁さん候補」


 かあぁあああっと顔が赤くなってしまうではありませんか。心音も心なしか早くなっている気がします。異世界でのスキンシップはこれくらいなんてことがないのかもしれませんが、日本生まれ日本育ちの私にはちょっときついですね。彼が、この1週間で随分と楽しい性格をしていることは、理解していたはずなんだけど、《魅了》の魔道具でも使っているのではないかと錯覚するくらいいい声をしているので、心臓が悪いです。


 もし、これで彩月と呼ばれていたらもう足に力が入らないかもしれない。まったくこれを無意識にやっているのだから、立ちが悪いのです。


 いつかこのヒト女の人に刺されちゃいますよ。まぁ、私はそんな修羅場に巻き込まれるのは御免なのです。


「え、あ。初めまして。レイフォードの姉弟子のユリア・ミュンセン・フィロソファーよ」

「こちらこそ初めまして。レイさんの弟子になりましたアザレアと申します」


 理由はよくわかりませんが、レイさんも私もユリアさんもみんなフィロソファーって付くのには何か意味があるのでしょうか。この世界での正式な挨拶だとかいう、スカートを軽く摘まんで一礼をする。これも、レイさんから教わったことです。


 ユリアさんは、私にちょっと失礼とてもにこやかな笑顔で言うと、その小さな手でレイさんの服の袖を強く引っ張り、(あの小さな体躯にいったいどれだけの力を秘めているのでしょうか)半強制的にレイさんをしゃがませて、耳元で何かをまくし立てています。


 なんかすごく問い詰められている感がありますが、問い詰める方の余裕のなさとは違いレイさんの方は余裕綽々ですね。ユリアさん、たぶんレイさんに遊ばれていますよ。まぁ、私も悪乗りしたから人のこと言えませんけどね。


「ふぅ、まぁ大体の事情は分かったわ。あんたも災難だったわね。これから、3日くらいレイを借りたいんだけど、いいかしら?」


 レイさんは、どこかにお出かけ?そうなると私は、いったいどうすればいいのでしょう。お留守番でしょうか。こうなって考えると私は、レイさんなしではこの世界でまともに生活できるかはなはだ謎ですね。


「はぁ。俺が行くのは決定なのかよ」

「決定よ。決定。だって、お偉いさんから依頼受けちゃったもの」


「受けたのは、ユリア姉さんであって、俺じゃない」

「手伝ってくれたっていいじゃない。ケチっ。あんたなら、お得意の魔道具で一気に片づけちゃいそうじゃない」


「俺は、目立ちたくないの。知ってんだろ。それに、俺には大事な予定がぎっしり詰まってるから無理」


 彼女と予定がぎっちりとねと、付け加えるレイさん。まぁ、間違ってはいませんね。私を少しでも早く異世界で独り立ちできるように、勉強中ですからね。この間は、戦闘用魔道具の扱い方を教えていただきました。レイさんは、微妙なニュワンスを地球で言うあれみたいな感じといった風にイメージしやすくしてくれるので、魔道具をちゃんと発動することができるようになりました。戦闘用の魔道具って、生活用の魔道具と違って個人差っていうのがあるそうです。


「それ、予定じゃないでしょ。あんただって、魔法石の供給が減って値段が高騰したら困るでしょ」

「まぁ、確かに。はぁ、あきらめなきゃダメっぽいな。しょうがない、その代りこの子も連れて行くからね」


「! ちょっ、Cランク越えの魔物がうろちょろしている中にこの子を連れて行くっていうの。冗談でしょ。ねぇ、あんた……えっとアザレアだってけ、あんたのランクいくつなの」


 魔物ってたしか、食べるとおいしいのもいるってレイさんが言ってたなぁ。いけない、強くて自然災害以上の厄災を招くような存在をただの食べ物としか認識しなくなっている私って、ヤバくないですか。レイさんの教育方法が悪いんです! 大声では決して言えませんけど。だって、魔物の説明の時、この魔物はこの足の部分がうまいぞとか、こいつの皮を加工するとなかなかいいバックができるぞとかいうから。


「私、ランク知りません」

「はっ?」


 いったいどういうことなのか説明して頂戴とレイさんに詰め寄ってますが、私も何やら危険地帯にどうこうするの決定ですか? 嫌ですよ、私戦闘能力限りなくゼロいえ、マイナスですよ。


 規格外に強いレイさんにその姉弟子さんにどうこうって私足手まとい以外の何物でもありませんよね。私、いい子にお留守番で構いませんよ。


「アザレアの戦闘能力は、俺の最高傑作達をつかえば、Cランクなんて楽勝だね。今製作中の魔道具を完成させればAランク以上は狙えるんじゃないか」


「れ、レイさん、私にそんなこと無理に決まってます。レイさんの魔道具はどれも素晴らしいですが、私はそれを使いこなせませんし」


「大丈夫。ユリア姉さんより、魔道具の使い方うまいから。アザレアってさぁ、俺が想定下通りの扱い方してくれるしね。姉さんとか師匠とか人の説明無視してろくな使い方しないし」


「だって、あんたの作る魔道具ってごちゃごちゃしてて使いにくいんですもの。それなら自前の魔法で戦った方が何倍も速いわよ」


「む、姉さんとはやっぱこういうところ合わないよね。ねぇ、アザレアちょっと姉さんと模擬選してみてくれない? ついでに、この間、話していた新作の魔道具試してみようか。大丈夫、姉さんは簡単に死なないし、君の攻撃くらいじゃあ死なないから安心して試しておいで」


 どうやら、私、模擬選決定のようです。姉弟ケンカに巻き込まれていませんか!

 まぁ、私もレイさんの魔道具を馬鹿にされているような感じがして少しムカッとしていましたからね。レイさんの許可もあることですし、遠慮なく戦闘経験を積ませていただきます。


 悪い癖です。私、自分が気に入っていたり大事に思ってたり、その……行為を抱いている相手が悪く言われるのは冗談でもあまり好きではないんですよね。こうなんていうか、条件反射的にシャーって猫みたいに威嚇したくなるといいますかなんといいますか。




 あ、ちなみにこの世界で一番下位ランクはFだとか。




 ちなみにレイさんは、Sランク相当だとか。


 ……それなら奴隷商に雇われた護衛なんて、目じゃないですね。このヒトを敵に回したくないとかなり本気で思った私は別に悪くないと思うのです。


 ランク制についてあまり詳しくありませんが、Sランクって、魔王様レベルじゃないんですか?





もしかしたら、2日に一度更新になるかもです。お気に入りが増えたり減ったりする今日、おぉっと浮上したりちょっぴりしょぼんとしたりしてます。これからもよろしくお願いします。めざせ10万文字です。十万いったら、大きな改稿作業をするかもしれません。誤字脱字まとめてチェックとか?


これからも、よろしくお願いします。

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