第17話 カウントダウンがおかしいんだとさ
ようやくバトルです。主人公たちの規格外の片りんが……出てたらいいなと思ったり。
さてさて、場所は家の裏庭ではなく、家の裏にある樹海の中にある少し開けたレイさん達曰く実験所に案内されました。なんか、常識を覆すほど大きな木の切り株があるんですけど。
これ、だれが切り倒したの!
小学校の運動所並みっていうか、何ていうか。地面が土や砂ではなくどう見てもめちゃくちゃきれいな切り口の株にしか見えないのは、私の気のせい。眼科行ったほうがいいかな。この世界にも眼科あるのかなそもそも。
「えっと、それではよろしくおねがいします」
「手加減は、してあげる。だから、存分に戦いなさい」
普通、手加減しないわよ! とか言うセリフじゃないんですか。まぁ、こっちとしてはありがたい申し出なので正直助かってます。
《MagicーBrain》と私とレイさんが呼称している魔道具。アイディア私、製作レイさん、使用者私の魔道具は、現在製作途中なので、この戦いでは使えません。私専用の魔道具(予定)速くできあがるといいなぁ。
いけない、今は目の前の戦いに集中しなきゃ。
ユリアさん近接戦闘が得意らしい。腕力とかすごそうに見えたのは気のせいじゃなかったんだね?
私が普段身に着けている魔道具は、防御、加速、治癒、翻訳、状態異常回復、電撃、身体強化の7つの魔道具です。翻訳は、戦闘には関係ないですが、私の日常生活を支える大事な道具です。防御は、一種の結界のようなものだとか、私の体は地球産ですので、こちらの世界のウィルスとかに免疫がないだろうからとかなり特殊な防御の魔道具らしいです。そのほかに物理的や精神的、対魔法の防御機能も備わっています。これと加速、電撃は、街中で乱闘戦になっても己の身を守れるようにとの配慮でしょうね。身体強化は、体力のない私にとって乗り物の少ないこの世界で少し移動するにも、ぶっちゃけダウンするのを見かねたからでしょうね。
さて、この基本装備のほかに、現在サバイバルナイフと腕輪型の魔道具と指輪型の魔道具を数個ほど持たされています。このナイフの刀身部分よく見てみると細かな、ラインや、記号、図形がうっすらと細やかに刻まれています。魔道回路というのだとか。柄の部分にある魔宝石が、大気中の魔素を取り込み、魔法を発動するための重要部分なのだとか。まぁ、これらすべて、レイさんの受け入りですが。
「アザレア、いいかい。ユリア姉さんは、近接戦に持ち込んで来ると思うから気を付けてね。それと、めちゃくちゃタフだから、あの人。攻撃した後その場所で呆然としていたらすぐさま意識を刈り取られる危険があるから注意しろよな。防御の魔道具なら、最高魔法以外なら防ぎきるはずだから、安心してバンバン攻撃していいぞ。右の腕輪は、運動能力の向上、中指のは弓矢になるから、遠距離攻撃に向いているね。ほかにも、このチェーンにとおっている指輪は各属性の初級魔法や纏いは可能になっているから。左の腕輪は、新作でね、効果は体感してみてくれ」
「え、Commandは?」
「あぁ、《幻肢痛》だ」
準備体操をしているユリアさんに気づかれないように、ひそひそと耳元でレイさんがささやく。レイさん、これから戦闘だというのに、その前に戦闘不可になりそうです。その声反則です。
「えっと、その昨日の説明は?」
「ん? だから、試してみればわかるって、ほかの魔道具と同じように、魔道具を意識して起動させればいいよ。それじゃあ、狩っておいで」
なんか、勝っておいでっていわれた気がしないんですけど。獲物を狩ってこいっていわれた気がするのは気のせい? そんなことが、この場所にたどり着く前に行われた、会話だったりします。
あんまし、体動かすのは得意じゃないんですが、こう勝負事ってどうしても胸がざわめく感じがします。少し、気分が高揚しているのは、きっと私が未熟者の初心者だからなのでしょうね。熟練の物ならこういう時冷静でしょうし。
まぁ、やれるところまでやりやりましょうか。ぎゅつとナイフの柄に手をかけると、ナイフから情報が送られてくる。このナイフの使い方、戦い方。精神感応がどうとか、物の記憶がどうとか、超能力の一種を応用したとか難しいことをそういえばレイさんが言っていましたね。このスピード学習。
レイさんに、狩ってこいと言われた以上負けるわけには行きません。負けるとしても、ぎりぎりまで粘ってやります。さぁ、始めましょう。それに、レイさんに反則的な情報をいただきましたし、まずは先手必勝です。加速の魔道具の起動準備をし、目の前の敵ことユリアさんに向けます。
「双方、準備はいいね。じゃあカウントダウンいくよ、10,9,8,2,1,ゼロ」
あらかじめ、レイさんがインチキカウントダウンをすると知らされていたので、スタートダッシュはこちらの方が早かった。
『Command:《身体強化》《加速》』
レイさんに予め、充電(なんか本当は充魔って言うらしいんだけど、地球で暮らしていた私にはこっちの方が言いやすいので、こう口にしています)してもらった魔道具を音声認識で起動させる。
普通の魔道具は一つの物質に、一つの魔法しかこめられないらしいのだが、レイさんは二重三重と同じ物質に魔法を込めちゃう賢者さんなので、この加速はただ体を加速させるだけでなく、思考速度もともに加速してくれる優れもの。
「ちょっ、レイ卑怯じゃない! って、速」
戦闘中に敵からわずかとはいえど、視線をレイさんにずらした隙を狙い、とりあえずユリアさんの顔をめがけて右ストレートを遠慮なしにぶち込む。美人の女の顔に何しとんじゃあって思うけど、まぁレイさんが、多少の大けがの一つや二つ瞬く間に回復してくれるので、死にさえしなきゃ問題なし。本当に、レイさんって規格外だよね。
―――バシッ
「甘いわねっ、《シールド》」
しかし、その攻撃は、ユリアさんが咄嗟に腕をクロスして顔面をかばい、詠唱短縮し発動させた《部分・物理障壁》によって弾く。だが、これは想定の範囲内。続けざまに、左から《雷撃》をまとったパンチを防御のがら空きな胴体にぶち込む。これは、入った。ユリアさんの体が大きくのけぞり、びくりと震えるが、いったいどういう鍛え方をしているのかすぐに建て直し、後ろ足で地面を蹴るようにして半歩前に進みながら左の拳を真っ直ぐ出してくる。しかも、ご丁寧にこっちの攻撃を真似したのか炎をまとった拳だ。
『Command:水壁』
咄嗟に指輪の魔道具を発動させ、一気に後ろへ跳躍。逃げるだけなのはむかつくので、去り際に攻撃用の魔道具を発動させる。待機中の魔素に命令を与え何もないように見える空間から突如として出現した高く分厚く大きな水壁をものともせずに突き破る炎の拳にはさすがに冷や汗をかく。あんなの喰らったら丸焼きになってしまう。人間の丸焼きなんてグロテスクなだけで美味しくもなんともないじゃないか。
『Command:雷球』
水を浴びた状態で雷を喰らって感電してくれればいいんだけど、この人そういえばさっき、即席スタンガンを浴びても平気で次の攻撃を仕掛けてきたのよね。びりびりとした紫色の光の球が、効いてくれると助かるんだけどなぁ。敵を前に目をつぶるのは、得策ではないけれど、ぎゅと強く目をつぶり、その動作に気づかれないうちに魔道具を発動。
目をつぶる前に、にやりと笑いながらユリアさんに上を示す。思わずといった様子でつられてユリアさんは、閃光弾をもろに喰らったことだろう。
『Command:光球』
それにしてもこの人欲よそ見をする人だなぁ。それでも生き残っているってことは、それだけの防御力があるってことか。再びユリアさんに接近しながら、今度は腰に下げていたサバイバルナイフを抜き、その勢いを持ったままユリアさんののど元めがけて一閃。
お母さんごめんなさい、彩月はついに人に向けて刃物を全く躊躇なしに刃物をふるうような悪い子になってしまいました。決して、お母さんの教育方法が悪かったわけではありませんので、安心してくださいね。
レイさんに、魔法使いとの戦闘を早く終わらせるのはのどをつぶすといいよと言われたので、さっそく実践してみました。
「うわっ、なんか近づいてるし」
ユリアさんは、視界が効かない状態だというのに平常心で、こちらもまたナイフを抜いた。澄んだ金属音が、樹海に響く。
「あぁ、もうめんどくさいっ」
縦横無尽ナイフを走らせるがそのどれもが、ユリアさんに止められて決定的な攻撃につながらない。うん、さすがはレイさんの姉弟子だけあるね。それにしてもこの人も、レイさんも基本研究肌のはずなのにどうしてこんなにでたらめに強いんだろう。やっぱ、貴重な素材を手に入れるためだったりするのかな。
レイさんに期待されているのに、結果が出せないとか情けなくて泣けてくるんですけど。このままじゃあ、先週の鬼のような一週間が無駄になるような気がするので、さらに速度を上げますよ♪
心が少しだけ浮ついた気分になるのは、気のせいです。えぇ、断じて戦闘狂なんかではありませんからっ。
いつも読んでくださってありがとうございます。年間冒険ランキングBEST100中100位に入っていて、驚きました。これからも、頑張るので、よろしくお願いします。




