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あーしグレース! 夜露死苦!!  作者: 高山小石


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1/6

第1話 よくある婚約破棄からの罰的婚姻中に

 ……ッ! ダンッ!


「グオォオオオッ!!」


 小刻みに続く振動と獣の声に目を開ける。

 壁沿いに天井まで備蓄品がキッチリ積まれているのが見えた。


「あーし、なんで避難所で寝てんのよ?」


 体を起こそうとして動けなかった。

 内から叩かれ続けるような頭痛に顔をしかめながら、なんとか首を持ち上げると、婚礼衣装が目に入ってガクッと力が抜けた。


「結婚式の最中に魔物に襲われて前世を思い出すってナイわー」


 でも、今あーしが無事なのは、魔物にふっ飛ばされたあーしを見捨てることなく避難所まで運んでくれた誰かがいたということだ。


「受けた恩はキッチリ返す! それがっいぃ゙っ!」


 魔物に飛ばされた衝撃と前世の記憶が戻ったせいでか、頭が割れるように痛いんだけど!

 回復術の副作用でまだ体も動かない。動けるようになるまで記憶の整理しよう。


 あーしは元公爵令嬢グレース。

 どうして元かを十秒で。


 第二王子から冤罪かけられ婚約破棄。

   ↓

 王命で罰として不人気な辺境での婚姻を強制。

   ↓

 式の最中に魔物の襲撃。←今ココ


「あーもーっ! ダンダングルグル、ぅるっさいっ!」


 さっきから外にいる魔物は、アタシのことが気になって仕方ないらしい。

 いらだたしげに前足をドスドス、吐き出す湿気た熱い息で何度も窓を曇らせている。


 辺境であるここは、国境にもなっている魔の森に面してる。魔の森は名前を裏切らず、森からは実に様々な魔物が出てくる。


 現在、窓から見えている魔物は、見た目二足歩行小型恐竜の姿だ。大型犬ほどの大きさながら力押しタイプ。

 獲物であるあーしが見えているのに手が出せないのが腹立たしいっぽい。


 前世を思い出すなら、もっと早く思い出したかったわー。なんて現実逃避してみたり。


 だって、めちゃくちゃあざとい令嬢にしてやられたんだよ。王子も王子だよ。王子が簡単に骨抜きにされるなんて、情けないにもほどがある。

 もう少し早く思い出せていたら、あの令嬢の目論見をバッキバキに折ってやったのに。


 婚約破棄はいいとして、ラノベ大好きミーちゃん情報によると、テンプレとかでは、辺境に追放後はのんびりスローライフが始まるはずでは?


 なんでガチな戦闘生活!?


 今あーしがいる避難所は、辺境のいたるところに建てられている。


 魔物よけがほどこされた頑丈な避難所は、しばらく籠城生活もできるように、武器・食料・衣類・寝袋といった生活必需品が大量に備蓄されている。


 でも今この避難所にあーし以外の誰もいない。ということは、みんな戦いに出てるってこと。それくらい今回は侵入された魔物の数が多いってことだ。


 ちなみにマジ戦闘職な方々は、交代で最前線を維持しておられるとか。


 象やキリンより大きい大型魔物はもちろん警戒対象だけど、頻繁に大量発生する小型魔物が意外と曲者くせものなんだよねぇ。

 小型魔物は前線をすり抜けて街にまで入ってくるから。


 でもそれが日常過ぎて、辺境の住人は、女性もお年寄りもチビっ子も、もれなく戦える。


 辺境に来た日、小学生くらいの子どもが、一人で平然と、その子と同じ大きさの魔物を倒しているの見て絶句した思い出。

 まぁ公爵令嬢だったあーしも、日替わりで現れる魔物にすっかり慣れちゃったけど。


 微妙な例えをするなら、不快だけど、倒してもたおしても、いなくならないアレみたいな?

 

 はぁ。ようやく体が動くようになってきたけど、あーしは戦わないほうが邪魔にならないかなぁ。


 魔物に慣れるのと魔物に勝てるのはまた別物なんだよね。

 剣も扱えないあーしは、小型魔物にも苦戦してしまうザコっぷりだったり。


 壁に据え付けられている、辺境内魔物感知地図で魔物の位置を確認……ひぇっ。


「ウソでしょ……」


 ここ一番の大量発生具合にゾッとした。

 地図は魔物の赤い点で染まっていた。


 これは手近なの一匹でも減らさないとだよ。

 でも、婚礼衣装は一人で着替えられないし、避難所から出て戦うのは普通に怖いし。うん。避難所から首だけ出してヒット&アウェイを狙おう。


 剣を扱えないあーしの唯一の対抗手段。太もものガーターベルトに隠し持っていた武器を抜き取る。


 窓ごしに鼻息荒くあーしをうかがっていた魔物 はいつの間にやら増えてた。奴らに武器をビシィッと向ける。


「いーい? あんた達のおかげで皆が準備してくれた式が台無しになったんだからね! その報い、とくと受けとりやがれください!」

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