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タローがぷるるん・ぷるぷるぷー


「船長! 右舷後方クレーン作動確認」 

「予定は?」

「ありません」

「現場の管轄確保を」

「イヤアッサー!」


 船に起きた異常事態。その原因究明に動く船長とクルー達。

 船の進行は止まっている。仕方がない、安全確保のためだ。

 これを怠ると船は沈没してしまう。ちょっとした油断が命取りとなるそれが航海。

 大きな船だって、この大海のなかにあっては、かろうじて浮いているゴム風船のようなものだ。

 それを理解していない船長がまとめている船などは容易く沈む。

 だがこの船の船長はちゃんと分かっている様子。


 そのおかげで、問題を起こした彼女達もかろうじて生きながらえている。


 では、その現場の状況。


「っうッ! ぅわあーん! ぁあーん」チィルールの悲鳴。半べそ状態。


 かろうじてドラゴンの攻撃を上下にせかせかと避けているが捕まるのは時間の問題だ。

 だって、蛇に追われるハムスター状態。


「なにあの子? 誰か助けてあげれないの?」

「おいアレ、海龍じゃないか!」 

「助けるって、どうやって?」

「残酷よ。見てられないわ」

「クレーン乗ってるヤツ、船員が何とかしようとしてるみたいだけど、なんかスゴイ抵抗してるっぽい。なんで? 下にいる子、殺したいんかな?」


 異常を察した野次馬がデッキから海面の惨状を眺めている。


(まさか私の入れ知恵を本当に実行するとは。いざとなったら助けてあげるつもりでしたが、さすがにコレではどうすることもできません。仕方ないですね)


 野次馬に混じってトロイと名乗った人物も様子を眺めている。


(哀れ。チィルール殿下の命もここまでのようです。まぁ、こういうのも、オバカ殿下には相応しい死に様なのかもしれません。でも……)


 トロイは隣でデッキの手すりを握り締め、震えてる少年に視線を向けた。

 それはタローである。

 トロイにはタローの考えていることが分かる。


「海面まで十数メートル。液体の水に着地とて、この高さからだと相当の固さかと?」

「へへ、知ってる。でもまだこの高さなら、コンクリートまではいかないんじゃない! の?」


 だが、その高さ自体が問題だった。ビル四、五階ぶんくらいの高さがある。

 投身自殺するなら充分な高さだ。飛び降りるには覚悟が必要だ。


「もう、あの子はダメでしょう。いまさら貴方が行ったところで何ができるというのです?」

「ああ、このままじゃ、アイツは必ず死ぬ。でも、もしオレが傍にいたら?」

「自惚れですね。一緒に死ぬだけです」

「だよな。ははは……。ハァ、ハァ、だからさ、ハァ、ハァ、行ってやん、ハァハァ」


 タローも同感。なのだが?


「あなた、呼吸、いえ心拍が……」

「ハァハァ、バカの相手は、ハァハァ、バカにしかできねー!!」

「ちょっ……」

(考えるなー! 理屈じゃねー! バカになれー!)


 トロイの忠告を無視してデッキから海面へと身を投げ出したタロー。


「ぅあああー!」


 ジェットコースターなんかよりも、もっとダイレクトな落下そのモノの恐怖。

 想像以上の恐怖にタローはスゥーと意識が背中から抜けて気絶しそうになった。


「タロー!」とチィルールの声。


(チィルールの声! すぐ行く。待ってろよ。いつも一緒だって約束したもんな!)


「主人公なら! こんくらい上等! ダァー!!」


 そうだ。ヒロインの為に高いとこから飛び降りるとか、普通のアニメやラノベの主人公なら誰だって一度はやったことのあるパターンのはず。

 そう思えば、どーってことない。

 だからきっと大丈夫、という思いがした。

 平気になった。

 余裕ができた。 


「うおおお! 救う! お前を!」

 

 そー思ってた時期がタローにもありました。


 そして、タロー、着水の直前、ドラゴンがまさにソコに現れた。


「キタ―! 喰らえーっ! 『投身自殺巻き添えアタック!』」


 ドラゴンの脳天にタローのドロップキック炸裂!


『ドゴン!!』鈍い衝突音。


『ヒギャワアーウォオゥオー!』空間に響き渡る悲鳴。


 無論、タローの悲鳴ですが……なにか?


 ドラゴンの脳天にドロップキックを入れたタローはそのままドラゴンの頭蓋骨を砕いて貫き、その脳みその中へと、自らの胴体、首から下を全部めり込ませていた。


 脳天を貫かれたドラゴンは即死。水面にプカプカと浮いている。


「ひひ? ああ……わわあ……」と悲鳴後のタロー。身動きしようにも体が抜けない首しか動かない。


ドラゴンの頭の上にはタローの頭しかない状態。そう今まさに彼は、全身をもって化け物の脳髄を余すことなく味わっているのだ。


「あわわわぁ……プルプル・ぷるぷる・脳みそプルルーッ!」とタロー。


「グチョグチョなのーヌルヌルなのー」タローの発言。


「あったかーいー!」タロー。 


「キュッキュッって締め付けてくるの。きっつーいー」タロー。


「奥の天井、ちょっとザラザラしてるのー」タロー。


「許して? ねえ、許して? お願いだから勘弁して?」と、タロー、なんか……


 その後、タローが突き刺さった海龍は、クレーンだけでなくその他ワイヤーも絡めて女性陣総出で魔法力を発揮、おかげでなんとかデッキに引き上げられた。


「た、タロー!」


 一緒に救い上げられたチィルールがタローに駈け寄る。


「ぷるぷる・ぷるるん・ぷるぷるぷー」

「しっかりしろー! タロー!」

「脳みそ・ぷるるん・ぷるるんるーう!」

「た、タロー!! なんでこんなことにーっ!」


 海龍の頭に突き刺さったタローにしがみ付くチィルール。

 でもやっぱタローの頭『ぷるるん』してた。

 


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