第4話【魔法の目覚め】
謎の羊と夜の森へと歩み出したソウ。
「まだ夜の森の中には入ってないはずなのに、もうだいぶ辺りは暗くなってきたな。」
「メェェ」
「全くお前は…ただでさえ体がちいせぇんだからこのまま暗くなったら見失うぞ?」
「メェ〜……」
暗くなった時に羊を見失わないようにどうしたものかと考えながら進んでいると、周りの木々が突然ザワザワと動き出した。
「っ!なんだ?!さっきまで全く音なんかしてなかったのに急に」
突然の状況に一気にその場の空気が張りつめたその時___________
「ガルルルル!!!!!!」
「ガウッガウッ!!!」
木々の間から突然凶暴な魔物が2匹現れた。
「コイツらは…狼の魔物か!!まだ森の奥までは入ってないから魔物とは出会わないと思ってたのに早速のお出ましかよ!クソがっ」
目の前に現れたのは、2匹の狼の魔物だった。
魔物はソウを見ながら牙をむき出しにして威嚇し、いつ襲ってきてもおかしくない状態だった。
(どうする……このまま走っても追いつかれるに決まってる。しかも高いところに登ったとしても2匹同時の相手は無理だ。)
────狼の魔物
非常に足が早く知能も普通の犬や狼よりも高い。嗅覚も普通の狼より少し優れているため、撒くのはほぼ不可能に近い。
(まだ鍵も魔女に何されたのか試してない…仕方ない…一旦ここは!)
ソウは腰にかけていた小さなカバンから、街を出る前に買っておいた小瓶に入った魔薬を取り出した。
「これでもくらえ!バカ犬共!!」
ソウは2匹の魔物に向かって力いっぱい魔薬を投げつけた。
小瓶は魔物の目の前で割れ、中に入っていた液体は小瓶が割れた衝撃で中から飛び出し、魔物や地面にびちゃびちゃとかかった。
すると──────
「グギャー!!!!!」
「グワッギューグル!!!」
2匹の魔物は声を荒らげて苦しみだした。
「へっ!夜の森に向かうって決めてから魔物のことはできる限り調べてお前らの対象法も考えておいたんだよ!
お前らの特技は足の速さと嗅覚!でも逆に、その特技こそがお前らの弱点にもなる!」
ソウが投げつけた小瓶の中には、人間には害がないが人間以外の生き物が吸ったら強力な匂いがして苦しむ魔薬だった。
2匹の魔物が苦しんでいる間にソウはその場から走り出しす。
「今のうちに逃げればっ!アイツらはオレの臭いを探せず追えなくなる!!まだ森の奥ではないから一旦入口まで戻っ…」
少し走ったところでソウは少しずつ歩みを止め、自身がおこなかった”とんでもないミス”に気づき冷や汗がじんわりとかいていた。
「……人間には害がない魔薬…”人間以外”の生き物が吸ったら…苦しむ魔薬」
ゴクリと生唾を飲む
「羊は、どこ行った?」
ソウは逃げることに必死になっていたのもあるが、元々は一人で旅に出るよう計画していたのこともあり、ソウ自身の身の安全が守れるような魔道具しか持ってきていなかった。
ソウは羊のことを考えながら息が荒くなる。
「アイツはまだ生きてるのか?それとももう…今引き返しても間に合うかわからねぇ…。しかも戻ったらオレは…もう一度逃げ切れる自信はない。」
ソウは今このまま走って森から出ると安全に逃げ切れる。しかし、助かるか分からない出会ったばかりの羊を助けに行けば自身の身の安全は保証されない。という究極の二択の中どうすればいいのか迷っていた。
「そもそもアイツは敵か味方かかも分からねぇ謎の生き物だ…元々はこの森の中で生きてた生き物で、あの狼の魔物には襲われないかもしれないしな……けど…。」
嫌な冷や汗が流れる中、ソウは拳を強く握りしめる。
「……けどっ!!オレはアイツをこのまま見捨てれねぇ!敵か味方かなんて今は関係ねぇ!」
ソウは逃げてきた道を戻り森の中へと走り出した。
(どうか…まだ間に合ってくれ…生きててくれ!羊!!)
急いで2匹の狼の魔物と出会ったところまで戻ってきたソウ。目に映った光景は……
「グギャー!!!!!」
「グワッギューグル!!
「メェー!!!」
2匹の狼魔物と羊が距離をとって睨み合っている姿だった。
「羊っ!生きてたか!!」
羊がまだ生きていることに安堵したソウは、羊の元へ駆け寄る。
「怪我は無いか?!本当にオレは…お前になんてことを……。」
「メェ~!」
後悔混じりの謝罪をするソウに返事をする羊。
羊は幸いにもまだ攻撃されてなく、怪我をおっていなかった。
「次は…いや、もう二度とお前を置いていかねぇ」
ソウは羊の前に立ち、2匹の狼の魔物の前に立ちはだかる。
「もう魔物から逃げねぇ…。オレは絶対にお前らを倒して、このまま森の中に進む!!」
ソウは覚悟を決め、首に吊りされていた鍵を手に取り力を込める。
「魔法を使っても何が起こるのかわかんねぇし、オレの魔法で2匹の魔物相手に勝てるか自信はねぇ。けど、オレが負けたら羊の身が危ねぇんだ!絶対負ける訳にはいかねぇ!!」
ソウが鍵に魔力を込めると____________
鍵についていた魔法石が眩い光を放ち出し、
狼とソウの間にソウと同じ大きさの鍵穴の魔法陣が現れた。
「ッ?!なんだこれ!オレの魔法は”開かなくなった鍵を自由に開けることができる魔法”…こんな何も無いところに魔力を込めても鍵穴の魔法陣が現れるわけねぇのに!」
突然の出来事に困惑しているソウ、
2匹の魔物も困惑している様子だった。
「しかも、今までこんなに魔法石が光ったことも魔法陣が大きくなったこともねぇ……一体あの魔女はオレの鍵に何したんだ…。」
未だ困惑しているソウだったが、2匹の魔物が明らかに動揺している様子を見て気合を入れる。
「やるなら今だ!」
ソウは手にしていた鍵に自身の魔力を込める。
「オレに力を貸してくれ!!」
____________『アンロック』
ソウが魔力を込め鍵を回すと、魔法陣が光だし魔法陣が扉のように開いた。開いた扉の先には別の空間が広がっていた。
「なんだ…これ…すげぇ…!」
初めて見る自身の魔法に一瞬目を奪われているソウ。そんな中先程まで怯えた様子だった2匹の魔物はパニック状態になりソウに襲いかかるように魔法陣へと走り出した。
「ギューー!!グギャー!!!!」
「ギャーーーーーググギー!!!!」
魔法陣の先にいるソウへと走った2匹の魔物は扉の中の謎の空間に入って行った。
2匹の魔物が魔法陣の扉の中に入った瞬間、
「今だ!」
____________『ロック』
ソウは鍵を回して魔法陣を閉じた。
その場には2匹の魔物の気配すら消え、静寂が広がった。
「………終わったのか?」
全身の力が抜け膝から崩れ落ち深くため息を吐くソウ。
「本当に…よかった…!!」
生死をかけた初めての瞬間からの安堵にソウは未だに心臓がドキドキとしていた。
「メェ!メェ~!!」
力が抜けていたソウの後ろから羊が鳴いて近寄ってきた。
「お前…無事でよかったよ。今度は…ちゃんと守れた」
安心して微笑みながら羊の頭を撫でるソウ。
羊も嬉しそうに体をソウに預けていた。
「ずっとお前って言うのも違うな。流石に名前つけるか!」
羊を抱え立ち上がる。
「そうだなぁ…」
羊の名前を考えていると、ふとソウの目に一輪の花が映った。
「よしっ、決めたぞ!今日からお前は『カルミア』だ!オレとお前が初めて出会った場所、名付けたところに咲いてた花!気に入ったか?」
「メェ~~~~~~!!」
羊は嬉しそうに返事をした。
「気に入ってよかった!カルミアは本当は暗いところでは咲かないらしいんだけどな、こんなところでも咲いてたカルミアなんて絶対今後のオレたちの旅に縁起がいいだろ。」
「よしっ!じゃあそろそろ行くか!
(オレの魔法は正直まだわかってないしけどな…)カルミアとなら大丈夫そうだ!」
「メェ!」
こうしてカルミアとソウは夜の森の奥へと歩き出した。
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─────さて…。魔物を前に逃げ出した時はどうしたものかと思ったが、何とか魔法を使って対象出来たようで安心したよ。
これからも旅を頑張っておくれよ?フフ…
ソウとカルミアが旅を再開した時、2人の様子をずっと見守っていた”誰か”がいたことは、誰も2人は気づいていなかった。




