ここは ていと です
帝都までの道のりは平和だった。マモノや帝国の兵士に遭遇することはなかった。
そして王都を出て3日後、私たちは難無く帝都へ到着した。それこそ罠ではないかと疑うほどに…。
街の入り口が見えてくると、少女は立ち止まり振り返る。
「…ここまでってことだな。助かった。気を付けてな」
クキョさんもやや疑っているのか、彼女にしては淡泊なやり取りだ。
少女の方も忍者のようにサッと去るのだろう思っていたが、なかなかその場を離れない。
「どうした?帰らないのか?」
少女は何も言わず、ただ一点を見つめていた。
――私の眼だ。
彼女は私に何かを託している。自分には出来ないことを私にしてほしいと―――そう目が訴えている。
それもまた『決められた道』なのだろうか?
だけど私は自分で決めた。そうであっても私は――――
私は彼女に向かって強く頷いた。それを見た少女は深く一礼して風の様に去っていった。
「わけ分かんなかったな。渡されたもんにも、使者です。言葉は話せます。しか書いてなくてな。問題児に慣れてるアタシでも対応に苦労したぜ」
「アナタが、言うの?第二号でしょ?」
「それなら、オマエは三号だな」
二人が言い争いを始めそうな雰囲気になってきたので、間に入り街へ入ろうと促す。
あの説教事件以来、こういうことが増えたように思う。喧嘩するほど仲が良いってやつだよね?
―――この街で見つかるのかな?私に出来ることが…。
街の景観は王国と変わりない。戦争が始まる前は姉妹国家であったということだろうか。
ふと気になることがあり、不審に思われないよう気を付けながら辺りを見回す。
王国でも見なかったがここでも茶髪や金髪を見なかった。私のとこには結構いたのに。
「ナタカ、どうした?もうちょい先まで行こうぜ。この辺りは店も少ないみたいだからな」
キョロキョロ見てたからお腹減ってると思われたのかな…。
街の中心部まで来ると熱気が格段に増した。所狭しと人々があふれ、かなりの賑わいを見せていた。通常時なら問題ないが、今は戦争中。その賑わいは異常なほどだった。
「何かあんのか?」
クキョさんも気にしてるようだ。
その時、ぐ~、とおなかが鳴る。誰のとは言わないが。
「そ、そこの店で腹ごなしついでに情報を集めるか」
バレバレですよ、クキョさん…。
クキョさんが屋台のおじさんに注文しつつ、尋ねる。
「オッサン、それ3つな。いつもこんな賑やかなのかい?」
「お嬢さんたちは旅の人かい?このご時世に」
おじさんの言葉についドキッとしてしまう。平常心、平常心。
「今だからこそ、アタシら傭兵の出番って訳さ」
そう言って、クキョさんは背中の大剣を指差す。ついでにチラッと水着鎧を覗かせていた。
それで背負ったままだったんですね。…隠せるほどの大きさではないけど。
「へぇ、傭兵ねぇ、初めて見たよ。いるんだね、そんな人」
クキョさんがおじさんと話している間、自分が襤褸を出してはまずいと思いクマさんに話しかけた。
「クマさんが着てる服っていつも違いますよね?服いっぱい持ってるんですか?」
彼女が外出時に着ている服は毎回違うもので、同じ服は一度たりとも見なかった。今日も外套の隙間から覗く服は今まで見たことがないものだった。
「おトーさんと、おカーさんが、いっぱい、用意、してくれる。だから、全部、着る」
「ふふ、御洒落さんなんですね?」
「それほど、でもない」
なんか嬉しそうに照れてる。可愛い。
「マギ大会?!」
クキョさんが大声出して驚いている。その声は歓喜しかなかった。
「そうさ。あ。これね」
クキョさんはおじさんから食べ物を受け取り、それを私たちに手渡す。それを食べながら私たちも話に耳を傾けた。
「これはマギ大会の前夜祭さ。もう少し早く来てりゃ、お嬢さん方も参加できたのにねぇ」
マギ大会?
「マギ大会ってのは…」
戦いは1対1の場合、魔力量の差で武器に優劣が付き、結局のところ魔力量が多い方が勝つことが多い。(もちろん武器種によっては違ってくるが)
そこで、みな平等に一般的な大きさの武器を使うことでその差を失くし、腕だけで競うことを目的として作られたのだ。
魔技大会ってことね。
話を聞いたクキョさんの目の色が変わった。嫌な予感しかしない。
「出れねぇのは残念だが、これは見に行くしかねぇな!」
やっぱり…。
すかさずクマさんに目配せする。彼女は私の意図を汲み取ってくれたようだ。
そして、私たちは慌ててクキョさんを引っ張っていき、他の人に聞かれないようボソボソと小声で説得を始めた。
「クキョさん、何しに来たか分かってます?」
「ん、先に、情報、集める」
そう、ここで何をしたらいいのか何もわかってないのだ。敵地でもあるしまずは情報が必要!
二人がかりで説得を試みるが。
「いやいや、使いが遅れたのはこれに合わせてだって。それにこれも立派な情報収集だ」
ぐ…、クキョさんが何故か冴えている…。戦闘大好きっ娘、恐るべし…!
クマさんは既に諦めて、首を横に振っている。長い付き合いでクキョさんの性格が分かっているのだろう。
だが、私が諦めてはいけない!
が、ダメでした。いいように言い含められてしまった…。
「よし!じゃ宿を探すぜ!」
ルンルン気分なクキョさんは宿でもご機嫌だった。
そして魔技大会が始まった―――




