色々あって
「そのような事があって、弓徒だけ山に籠もる事になりました」
一人街に戻り、バーに帰り、喜一は唐馬に事の子細を告げた。
「そうか……。まあ、君も彼も一流の皿洗い師だ。人を見抜く目は間違いないものを持っている。弓徒君が師事すると決めたのであれば悪い人物ではないのだろう。彼は何かを掴むはずだ」
「はい」
「しかし、あの紅虎と戦うとなると生半可な成長では……」
紅虎こと、紅虎子。
その実力を知る唐馬としては、一週間程度の修行では不安が残ると言いたいところが本音である。
弱さというのは幸福であると思う時が、唐馬にはある。
実力に差がありすぎて、歯牙にも掛けられない。それはそれで無用な戦闘を避けられる。
一方で、半端に腕に覚えがあれば無用な挑戦をして、結果、深く傷ついてしまう事もある。
喧嘩が強いだけの不良が一流の格闘家に試合を挑むようなものだ。
弓斗は復讐だと言っていた。
半端な自尊心が不幸な結果を招かなければいいが……。
「店長、聞きたい事があります」
「……何かな?」
最悪の結末を想像するのをやめ、唐馬は伏せていた眼を喜一に向けた。
彼は尋ねた。
「紅虎子と弓徒の間には、一体何があったのですか?」




