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衝風
「彼は私の友人だ」
淡々と、唐馬は告げる。
「え?この人って唐馬さんの友達なの?年齢離れすぎてない?」
飄々と、虎子が応える。
「共に皿を洗えば、皆友だ」
「いいセリフだね。今度あたしも使おっかな」
「彼に手を出せば、それが始まりの合図となる」
「始まり? 何の?」
「闘争の」
弓徒は風を感じた。
空気の流れが起こすものではなく、気の衝突が生んだ、闘いの中で生きる者にしか感じ取る事が出来ない風……。
濃厚な暴力の気配……。
もしも今、ここに何も知らない一般人が通りかかれば、本能的に危機を感じ取り、叫び、駆け出しただろう。
恐ろしいモノが、在る。
弓徒は思わず息を呑んだ。
ありえない話だが、ふとした拍子に深海に脚を踏み入れたとしたら、こんな気分になるのかもしれない。
冷水を浴びせられたどころの話ではない。
つまりは、死の予感。
いや、死すら悟らせない、一瞬で全てを覆う闇。
黒。
そういうものを感じ取った、彼の前で——
「面白そうじゃん、それ」
虎子は、笑い続けていた。
禍々しい笑みだった。




