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昨夜
昨夜の邂逅。
それは誰にとっても予想もしていなかった出来事だった。
「どもー。唐馬さん。こんばんはー」
快活な声を発したのは、派手な出で立ちの女。
紅虎子である。
「虎子くん……」
沈痛な声を漏らしたのは、今しがた彼が出てきたバー空の店主、唐馬歩。
「その中にさ、いるんでしょ? 例の男の子」
「……いると言ったら、どうするつもりかね?」
「私としては勝負したいとこなんだけどさ、粛清しろって言われてるのね」
「誰にだ?」
「在膳会長に」
「在膳九龍か……」
静かな呟き。
それは始まりの合図にすらならないものであったはずだが、紅虎子は不意に一歩を踏み出して、
「待ちな」
そこで、これもまた不意に動きを止められた。
背後から現れた巨漢。
華弓徒に右腕を掴まれたことで。
「てめぇの相手は俺だ」
「……誰?」
「この傷に覚えがねぇとは言わせねぇぜ」
弓徒は右頬を向けた。
そこに刻まれたるは三本の線。
それは、まさしく。
「ああー。確かにそれは私が付けた傷だね」
それが何か? とでも言うように、紅虎子は酷くあっさりと認めた。




