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一秒
一秒、だった。
深い皿、浅い皿、グラス、箸、ナイフ、フォーク、スプーン、鍋……種類は多様。
油、ソース、米粒、焦げ……汚れもまた、多様。
仮にここに一般の主婦がいたのならば、そのあまりの量と雑多さに、頭を抱え、どこから手をつけたよいかと悩み、結局、諦めるだろう。
それ程の皿を前にしても、陽は冷静に、最善手を選択し、標準的な協会員の最高速度である、一秒一枚の速度で皿を洗い、喜一の手元に、一瞬、目をやった。
本当に、一瞬。
ただの、様子見。
しかし、それだけで、充分だった。
「——!?」
なぜなら、喜一のラックには、既に三枚の皿が置いてあったからである。
一秒で、三枚の皿を洗う。
有り得ない——事ではない。
協会のトップである在前九龍は一秒に九枚。異なる汚れの付着した皿を洗う事が可能である。
故に、一秒で三枚の皿を洗うのは、不可能では無い。
しかし、それが可能なのは、
「まさか、これ程とは……」
実力者だけ、である。
「……負けました」
圧倒的な、彼我の実力差。
それを理解した事で、陽の口からは、自然と敗北が宣言されていた。
決闘開始から、僅か一秒での決着、だった。




