39/184
師の名
決闘は終わった。
しかし、皿は運ばれてくる。
集めた皿は、結果如何に関わらず、洗う。
それが皿洗い師の仕事であり、流儀である。
「千歳喜一。一つ、聞いていいですか?」
皿を洗いながら、陽が尋ねた。
口調は、重々しい。協会員として、敗北の許されなかった決闘で、敗北した。
その事実に、彼女の精神は押し潰されそうだった。
だが、一つ。たった一つだけ。聞いておかなければならない事があった。
「何だ?」
皿を洗いながら、いつもと同じ、淡々とした声で、喜一は応えた。
勝利の余韻に浸っている様子は無い。仕事をしているだけ。といった風である。
それが、より一層、陽を惨めにさせた。が、それでも、彼女は聞いた。
「あなたの師は、誰ですか?」
これ程の使い手が、野良のはずがない。
ただ単に、才能という言葉では片付けられない。
必ず、師がいる。
では、それは誰なのか?
これ程までの実力者を育て上げた師とは、一体何者だ?
この問いに、
「唐馬歩だ」
彼は、答えた。
「唐馬——!?」
その名に、陽は驚愕した。
なぜなら、その名は……
かつて、協会のトップにいた者の名だったからである。
とりえあえず第一部完。
しばらく更新停止します。
修正とか書き溜めとか、諸々済ませたら第二部始める予定です。




