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暖かみ
「……」
総料理長、犬飼賢介は言葉を失っていた。
それは、今まで見て来た皿洗いとは、次元が違った。
今年で齢五十になる彼は、これまで多くの皿洗いを、大勢の皿洗い師を見て来た。
超一流ホテルや、レストランには、最低でも五人。協会から派遣された皿洗い師がいる。
五人。とは言うが、五人が同時に流し台に立つ事は、まず無い。
一人一週間。
たった一人で一日中、流し台に立ち、決して不平不満を言わずに皿を洗い続ける。
その気になれば、不眠不休で三日日間。全くペースと、腕前を落とさず、皿を洗い続ける事も可能だという。
……しかし、疲れを見せず、ただただ黙々と皿を洗う彼らの姿は、まるで機械だ……。と、総料理長は常々思っていた。
凄まじく仕事は出来るが、人間味は感じない。
とてつもなく高機能な食器洗い機を置いているような感覚なのだ。
故に、彼は皿洗い師達を不気味な存在だと思っていた。
けれど、今日の皿洗い師は違った。
彼は、二人から、暖かみを感じていた。




