1.追放
「ケルト・アシモナ、あなたを追放する」
「……は?」
それは、ダンジョン探索で一息ついたときに言われた。
「またかよ。もう冗談はやめてくれ」
「冗談じゃない。三ヶ月前からあなたがパーティーから抜けるよう仕向けているのに」
俺に冷ややかな目線を向けながらそう言うのは、うちのパーティーのリーダーで魔術師のエレナ・スミアスだ。
大きく綺麗な眼、高い鼻、長い睫。そして、煌びやかに輝く美しい白髪。
完璧な容姿である。
そして、魔術師としても史上最強と巷で話題になるほどの実力者である。
三ヶ月前までは性格も最高だったが、今は最悪である。
「ケルトが早く出ていってくれればこんな非道なことを繰り返さなくてよかったのに。ちゃんと責任取ってよ」
腹黒い性格が前面に出ている。
今までは猫をかぶっていたのだろう。
「追放する理由を教えてほしい」
「そんなのパーティーにあなたがいらないからに決まってるじゃん」
「なんでいらないんだよ」
「そんなことも一々言わなきゃいけないわけ? そういうところが追放したいと思うんだよ」
エレナはいつも曖昧な回答しかしない。
「もっと明確な理由を教えてくれよ」
「あーもううるさいな。ずっと黙っててよ」
腕を組んでそっぽ向くエレナ。
俺と会話をしたくないらしい。
エレナに嫌われることなんてした覚えはないんだがな。
「またエレナの機嫌を損ねてるな。いい加減にしろ」
怒りの表情を露わにし、エレナの前に出てきたのは、うちのパーティーの副リーダーで剣士のカトル・レンセルだ。
綺麗な金髪に目鼻口と顔全体が揃っている美男子である。
『瞬殺の剣士』という二つ名に相応しい実力も持っている。
メルと同じく外見や実力は完璧だが、内面は最悪だ。
こいつも三ヶ月前までは内面も良かったんだがな。
「お前はエレナに歯向かうような立場じゃない」
近くの壁を力強く叩きつけ、睨みつけてくる。
「俺は歯向かったんじゃなくて、正確な理由を聞こうと」
「正確な理由なんてどうでもいいだろ。追放は追放なんだ。今すぐここから立ち去れ」
カトルは俺の方向に剣を突き出してきた。
俺はそれに恐怖を感じ、足が竦んでしまった。
「早く出ていけよ。邪魔者」
悪態をつきながら近づいてくるのは、弓使いのロードス・ケミシアンだ。
綺麗な茶髪で顔が整ってる美男子だ。
『百発百中の射手』という二つ名に相応しい実力も持っている。
二人と同じで外見や実力は完璧だが、性格は最悪である。
こいつも三ヶ月前までは性格は良かったんだが。
「早く出ていかないとお前を射るかもしれない」
弓を突き出し睨みつけてくる。
俺はこれにも恐怖を感じ、足が竦んでしまう。
「ケルトは活躍しているから追放するべきじゃないよ」
唯一俺の味方となってくれるのは、魔術師のメル•ミアティアだ。
大きな眼に小さな鼻、サラサラでふんわりと芳しい花の香りがする黒髪。
俺とメルはエレナのパーティーに同時加入したので、仲が良い。
「あ〜そういえばメルもいたね」
「こいつ存在感皆無だよな」
「背後に誰もいないと思って後退したら絶対こいつがいるもん」
三人はメルに悪態をつく。
「メルも追放だからね」
「そうだ、ケルトにしがみついて生きていけ」
「ケルトは一応実力があるが、こいつはない。追放は妥当だな」
俺に対して以上の悪態をつく三人。
そんな三人にメルはギュッと包むように杖を握り、三人のいる方向に向ける。
「言葉を魔法で対抗するんだ」
「魔法で対抗するなんて雑魚のやることだよ」
「そんなことできるから雑魚でも探索者続けられるんだろうな」
三人は嘲笑いながらメルに言う。
メルは一歩後ずさりするが、杖の方向は変えない。
「本当に打っちゃうよ」
メルのそう口にする言葉には震えを感じた。
目には涙が溜まっているように見えた。
メルは強がりだ。
今は我慢しているのだろう。
でも、心の中ではとても苦しんでいるはずだ。
「そんなに悪口を言いたいなら俺に言え。メルに言うのはやめろ」
「そんなこと言われたら雑魚にもっと言いたくなっちゃうな」
「雑魚にはなに言ってもいいんだぞ」
「雑魚はストレス発散のためにいる存在なんだよ」
三人は悪態をつくのをやめようとしない。
さらにエスカレートしそうな勢いもある。
俺には止められそうにない。
「この雑魚に魔法をお見舞いしちゃおっかな」
「エレナの魔法ならあの雑魚は即死するだろうな」
「大丈夫大丈夫、手加減はするから。雑魚を何度も的として使えるよう」
「やっちゃえやっちゃえ」
この三人は諦めたほうが良いのかもしれない。
約三年という期間優しく接してもらったから、態度が豹変してもそれが表の顔だと信じたかった。
でも、そんなことはないようだ。
今の三人が表の顔。三ヶ月前までのは裏の顔だったんだ。
三ヶ月変化がないんだからそう思うしかない。
「もうやめてくれ」
もうメルを苦しめてはいけない。
そして、俺も苦しみたくない。
「出ていくからさ」
俺はメルの腕を掴み、ダンジョンの出口へと向かった。
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