帰還パーティーとその後
王城では国王と王妃の帰還パーティーが開催されたのだが、来た貴族は王都に比較的に近い貴族達ばかりだった。
「どう言う事だ、余りにも少ないぞ。招待状は全部に送ったはずだぞ」
王太子がイラつきながらも言った。
第2王子のラムダは「やっと終る」と言っていた。
目の下に隈を作り、今にも倒れそうだ。
暫くすると「国王陛下並びに王妃陛下の入場」と声がかかった。
通常ならば音楽がかかるが、王都には現在楽団はいない状況だった。
スタリオンがいなくなってから王都がおかしくなって来ていた時に他国へ行ってしまったためだ。
国王と王妃は入場して驚いたがやはりと思った。
会場はガラ~ンとして来ていた貴族も20人もいなかった。
一応今回の外遊先での会議の結果や国外との付き合い等の話をしたが余り長く話さなかった。
その後に来ていた貴族と話したが、今回の事の苦情が大半だった。酷い所では数日前に来て、急いで王都に来た貴族もいた。
楽団もいないので話す声だけが響き、ダンス等も無い。
食事も簡単なサンドイッチだけでデザート類も無い。酒に至っては何も無い状態だ。
一通り話した後は1度退出してから控室に行き、宰相と公爵を呼んだ。
少しして宰相と公爵が来て話し合いをした。
「こんなにも酷いとは思わなかった。これならやらない方がマシだ。あの件を実行に移す。宰相、書類は揃っておるな。それと公爵、本当に良いのだな」
「揃っています」
「構いません。陛下の御心のままに」
「わかった。ではやるぞ。王妃済まぬな」
「いえ、現実を受け止めます」
「うむ」
短い話し合いが終わり、宰相と公爵が会場に戻り、
その後に国王と王妃が戻った。
「王太子、バイオレット嬢コチラに来て皆の方が見なさい」
王太子とバイオレットが国王の側に行き、貴族が集まっている方を向く。
「皆の者聞いてくれ、王太子とバイオレット嬢の婚姻が整ったから此処で書類にサインをして、晴れて夫婦となる。盛大に祝福をしてくれ。宰相書類を」
「はっ」
宰相が書類を持って来て、侍従が机を運んで来た。
「直ぐにサインを書きなさい」
国王がそう言うと王太子が「やったな、認めてもらったぞ」と言ったのだが、バイオレットは嫌そうな顔をして父親である公爵の方を見た。
「バイオレット書きなさい。お前の望んだ事だ」
王太子は直ぐにサインをして、バイオレットは嫌々サインをした。
書き終わった書類を見て、国王は大きな声で言った。
「これにて婚姻は整った。皆の者拍手を」
多少疎らであったが拍手があった。
「それから第2王子ラムダも此方に来い」
ラムダはふらふらしながら国王の側に行った。
「これから大事な事を話す。
第1王子のシグマは王太子剥奪をして、管理王領のみの仕事として領地を復興せよ。爵位は男爵とする。
第2王子のラムダも同じだ。
王族としての籍は現状残すが王族としての権限を剥奪する。1週間以内に着任しろ。以上。
帰還パーティーを終了とする」
「国王陛下並びに王妃陛下、退場」と声がして2人は出口の方に歩き出した。
シグマは「父上ー」と叫んだが国王は振り向きもせず会場を後にした。
シグマとラムダはその場にへたり込んだが、直ぐに国王の所に向かった。
バイオレットは父親で有る公爵の所に行き、色々と言っていたが「お前の望んだ事だろう。シッカリと責任を果たしてシグマ男爵と領地を盛り立てなさい。家に戻ったら侍女1名とメイド2名を選び連れて行きなさい。私に出来るのはそれ位だ。屋敷に戻るぞ」
へたり込んでしまったが公爵に連れて行かれ屋敷に戻った。
◆
国王と王妃は控室に入り力なくソファーに座った。
「王妃済まぬ、国を纏める為にはこうするしかなかった。籍だけは残した。後はあ奴らの努力次第だ」
「はい、裏帳簿の発見の時から覚悟はしてました。
昨夜の話し合いの時には王妃としても覚悟を決めたので気にしないで下さい」
国王と王妃は昨夜に話し合った。パーティー次第で結論を出し、王領に着任させ経営をさせる事にした。
成功なら王領からは手を引かせ、王城内の仕事をさせる予定で、婚約も認め婚姻迄はやる予定ではなかった。
しかし結果は失敗となった。
国王と王妃が話していると突然出入り口の扉が開き「父上どう言う事なのですか!!」と言って来た。
「貴様ら部屋の入り方も知らんのかー!! 国王を何だと思っているのだ。礼儀作法をやり直せ!!」
「いえ、そうではなく」
シグマが言い出した。
「何だ、言ってみろ」
国王は睨みをしながら言った。
シグマとラムダは落ち着いて話そうとしてソファーに座ろうとしたら国王が怒鳴った。
「何座ろうとしているんだ、誰が許可を出した!! 貴様らは立っていろ!!」
「母上〜」
シグマが言ったが王妃は何も答えなかった。
「どうせ貴様らの事だ。王太子の剥奪、王家の権限の剥奪、王領への赴任の事であろう。
その前に幾つか聞きたい事が有る。
1つ目、何故スタリオンを追放した。折角あいつが苦労して国をよい方向に持って行った。
あいつが色々とやったお陰で行政がスムーズになり、無駄な金の支出も無くなり、その上国の収入も少しずつではあるが上がって来ていた。何故追放した」
「・・・・・」
「・・・・・」
シグマとラムダは何も答えなかった。
「何とか言ったらどうだ。どうせ貴様らの事だ、スタリオンを王位にと言う声が段々と大きくなったのが気に食わなかったのであろう。
それと貴様らの遊びの金を国庫から使えなくなったからだろうが、違うか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「沈黙は肯定ととるぞ。反論はないのか?
2つ目、王都が廃墟同然となっている。何故だ?
シグマ答えろ」
「わかりません」
「ラムダはどうだ?」
「俺もわかりません」
「貴様らは王都内でやりたい放題だったそうだな。貴様らの尻ぬぐいをスタリオンがやっていたんだよ。
貴様らは民から信用されていなかったんだ。だからスタリオンが行った後に何処かに行った。
貴様らや貴様らに同調する貴族達を嫌がってな。
そのあおりで物価が高騰になり余計に民達が出て行ったからこの様な事になったのだよ。
本当なら物価の高騰等を抑えて民の流出を抑えなければいけない事をしなければならないのに、貴様らは何もしなかった。違うか?」
「それは書類の仕事が多すぎてそこまで回りませんでした」
ラムダがどうにか声を出して言った。
「仕事が多いだとー、笑わせるな!! スタリオン1人の時に回っていて、貴様ら2人になって貴族会議が開けぬ程行政が止まった。どう言う事だ? 教えてくれ」
少し間が開き国王がまた話し始めた。
「宰相に言われたぞ、2人は本当に学院を卒業しているのかとな。それに法律のことを何も知らんとな。
行政に携わる者がこの様な事でどうする。
4つ目だが貴様らが管理している王領だが提出している最新の報告書に嘘偽りはないのだな」
「ありません」
ラムダが返事をした。
「そうか、領内に一人もいないのに誰が小麦の収穫をしているのだ? 外部にでも委託でもしたのか? それなら発注書と予算書、支払いの証明書を出してあるはずだが、無いな。どう言う事だ? 説明してくれるか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
2人はまた黙ってしまった。
「王城に戻って来た後にある人物に言われて貴様らの管理王領を見に行かせた。全てわかっているのだ。
最後にこれに見覚えはあるか?」
国王は2冊の冊子を出した。
「何故それが、いや見覚えはありません」
シグマが言った。
「そうか、これは貴様らの王領の裏帳簿だ。最大税率以上を取り、王城には標準税率で報告して残りを自分達の懐に入れていた様だな。ご丁寧に貴様ら2人からの命令書も一緒に有り、[鑑定]したら本人の直筆とわかり押してある印も本物だ。言い逃れは出来んぞ」
「くっ」
「どうしてバレたんだ」
シグマは苦虫を潰した様な顔をしてラムダは呆然とした。
「以上をもって貴様らの王領赴任を決めた。王妃は裏帳簿が出て来るまで貴様らを信じ庇っていたのだぞ。
見事に裏切ってくれたな。
わかったならさっさと支度して赴任しろ」
国王が言い終わるとシグマが叫んだ。
「1人もいないのにどうやってやれって言うんだ!!」
「自分達で人を集めれば良いじゃないか。少しは頭を使え。もう言う事は無い、さっさと下がれ。
これ以上失望させるな。近衛此処者たちを追い出せ」
近衛によってシグマとラムダは国王の控室より追い出され、2人はその足で宰相の所に向かった。
宰相はシグマの後ろ盾なのでそこから話しを通そうとしていた。
◆
「宰相いるか!!」
2人は宰相の執務室に飛び込んだ。
「両男爵方どうなされましたか?」
宰相は入って来た2人に言った。
「巫山戯るな、誰が男爵だ!! お前は俺の後ろ盾なんだろう。どうにかしろ」
「あぁその事ですね。それに関しては陛下に言ってありますが、もう後ろ盾からは降りていますよ」
「何だとー、巫山戯るな!! スタリオンに鞍替えか!!」
「国の事を思えばそれも良いかもしれませんね。白アリに食い尽くされるよりは余っ程発展が出来ます」
「俺達が白アリだとー、馬鹿にしているのかー」
「実際馬鹿でしょう。法律も知らない、行政は止める。陛下のいない間に何も実績を残していない。
やったのは金を無駄に使った事だけですね」
「くー、もういい」
シグマとラムダは乱暴に扉を閉め、出て行った。
◆
2人が部屋に戻ると、何人かが荷物を纏めていた。
「何をしているんだ、直ぐに止めろ」
そう言うと「陛下の命令なので止めません」と言われた。
「父上はそんなにも俺達を追い出したいのか」
シグマとラムダはその場で膝から崩れた。
◆
公爵と共に帰ったバイオレットは力なく項垂れていた。そして公爵の執務室で母親と共に話しを聞いていた。
「先程も言ったが、これはバイオレットがスタリオン殿下との婚約破棄を自ら行いシグマ男爵と婚約をしたのだ。結果はどうあれ、自ら望んだ事だ。
私達としてはスタリオン殿下との縁を結べばバイオレットにも良いと思ったのだがな」
「お父様とお母様はどうしてそんなにもスタリオンを持ち上げるのですか?」
「本当に知らないのか?」
「何がですか?」
「スタリオン殿下は商会を使って魔導具や玩具を始め色々と作り販売をしている。勿論お前の来ているドレスやジュエリーもそうだ。王都での流行りはスタリオン殿下が作り出していると言っても過言では無い。
実際に作っているのは商会だが、アイデア料や特許料は莫大だろうな。それに王城での働きは目を見張るものばかりだった。スタリオン殿下によって王城は物凄く良くなった。
ただ一部の利権に群がる輩には疎まれていたがな」
「どうして教えてくれなかったのですか?」
「これから2人でやっていくのだから色眼鏡で見て欲しくなかったからだ。
それでこれからの事だ。侍女1名とメイド2名はお前に付ける。それとこれを持って行きなさい」
公爵は魔石が付いた指輪を見せた。これはスタリオンが作った魔力タンクとストレージと言う収納が付いた物だ。そしてリング部分はミスリルだ。
この事をバイオレットに伝えた。
「後、日持ちする食料を持って行きなさい。外の荷馬車に積んである。
それと指輪の収納の方に1年分の生活費を入れておく、贅沢しなけけば食べていけるはずだ。侍女とメイドの給金は此方で出すから気にするな。
最後にこのお金の事はシグマに言うな。彼奴はその事を聞いたら直ぐに強請ってくるぞ。そして直ぐに底をつくのが目に見えてわかる。だから絶対言うな。
私達から出来るのはこれくらいだ。それと此方から離婚と言うなよ。相手から言わせる様にしろ。そして証拠を揃えておけ、そうすれば私達も力になれる。
馬鹿な娘だが、私達の可愛い娘でもある。元気で暮らせよ。何かあれば相談にはのるからな。
学院には休学届を出しておく」
「はい、わかりました」
数日後にはバイオレットはシグマ男爵の治める王領に向かった。
ご覧いただきありがとうございます。
お星様、リアクションありがとうございます。




