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闇の魔女 2

楽しんで下さい。


 モール王国には二人の英雄がいる。


 一人は千の軍勢で万の軍勢を倒すとされる『軍王』ガーザス、彼は因縁深いアッシュ王国に幾度も深い傷を合わせたモール王国騎士団長だ。


 もう一人はモール王国の若い姫でありながら、一人で何度もアッシュ王国を退かせた『闇の魔女』ーーー


「モール・リアですか……」


「おお!よく知っていたな」


「はい、彼女は幾度も我らが軍を苦しませましたから」


(まさか、あのモール王国の英雄が捕まってるとは思わなかったなぁ)


 勿論、モール王国にだけ二人の英雄がいたら既にこの国は半分以上奪われているが、もちろんこの国にも英雄が二人いる。


 一人は一人で万の軍勢を出すという『傀儡の魔女』マキナ・バーサス、もう一人は一人で人首の山を作るアッシュ王国騎士団長『剣王』ハスがいる。


 確かに闇の魔女が出たとは聞いていたが、まさかモール王国の英雄が捕まるとは。ここの近くの前線にはハスがいたらしいが、ここまで大きく戦線が変わっているとは知らなかった。


「しかし、まさかモール王国の英雄が捕虜となっているとは驚きました」


「うむ、ここだけの話秘密裏に闇の魔女を捕まえる計画をしててな、昨日成功したのだよ!」


「なんと、素晴らしいですね!」


「あっ、すまんな、さっきの話は極秘でなぁ、漏らすでないぞ?」


「勿論です」


(こいつバカだなぁ。まぁ彼女を捕まえる為に世間には言えないような作戦をしたのだろう)


「うむ、それでは今日から仕事を頼んだぞ!」


「はい!スティーブ様の顔を汚さぬように身を粉にして働くつもりです!」


 そういうと、スティーブは地震を起こしながら仕事場に帰っていった。まぁ、どうせ娼館にでも行くだろうけど。


「さてーーー何しよう」


 明日からと思って、というか連れて来て突然「今からね」というとは流石クソデブ。暇つぶしの道具何も持って来てないな。まぁ、今日は大人しく寝とくか。


(噂の捕虜さんは全く動く気配もないなあ)


「…………」


 目隠しをされている筈の闇の魔女はこちらを静かに見つめていた。







 

 クソ……スティーブ様に仕事を任せられて一週間がたった。する仕事は3食決まった時間に食事を配給することぐらいだ。

 捕虜と一緒に一日を過ごしているのに平気なのは元地球の()()()なのに不思議ダァ。


 まぁそれは彼女がまるで人形のように殆ど動いていないのも要因の一つだからだろう。


 ドスドスドス


(あ、クソデ…スティーブ様が来た)


 俺の予想通りスティーブがやって来た。相変わらずの贅肉は素晴らしいな。それとなんか上機嫌だな。


「こんにちはスティーブ様!」


「うむ!」


「本日はどのような要件でしょうか?」


 心底不思議そうに尋ねてみると、まぁ概ねわかっていた回答を言った。


「明日から拷問を開始することを伝えにな!」


「なるほど、相手の手の内を探る為ですね!流石スティーブ様!貴族の中でもスティーブ様ほど国の為に働く方は居ません!」


「う、うむ。そ、そうだな」


(あ、こいつちょっと動揺してる)


「どうなされましたか?」


「へぁ?!いやなんでもない、では用事は済んだから私は戻る!」


 そう言って豚が駆けるように階段を登っていった。


(逃げやがった…チッ……もう少し遊んでやろうと思ったのに)


 クソデブが何故あれほど逃げたかというと、クソデブが言っていた拷問とは、まぁ、()()()()()()()()()であるからだ。要するに拷問とは名ばかりの『お楽しみ』である。


 そのため、それを国の為だと敢えて言ったことで心が小悪党のスティーブタは尊敬されてる後輩に嘘をついた事にちょっとした罪悪感を感じたのである。


 まぁ、わかった上で言ったけど(笑)


「ただ、このままアイツに『お楽しみ』させるのは面白くないな」


「全くそんな悪魔のような笑みを浮かべて何をするつもりなんだい?」


 牢屋の何処からか女性の声が聞こえた。


「珍しいなスカサハ、仕事中に出てくるなんて」


 そういうと影の中から猫が出て来た。


「とても面白そうだったからね」


「お?今日は猫か」


「うん、もしバレても誤魔化せるでしょ?」


 そう言って可憐なターンを猫が決めた。


「それで何をするつもり?」


 ルビーのような輝きを持つ瞳の猫は、体を見透かすようにハールを見つめた。


「なに、ちょっとした小細工さ」








 翌朝、勤務時間より少し早めに来たハールは、躊躇なく()()()()()()()()、すると今まで殆ど動かなかった闇の魔女が()()動いた。


「さて、闇の魔女さんこのお守りを差し上げましょう。なに?そんな申しわけない?いやいや、遠慮せずに貰ってください。ほら、断った方が迷惑になりますから。ありがとう?いえいえ、そんな感謝を受ける程ではーー」


「……貴方………何がしたいの?」


 闇の魔女は物語のような悪そうな声ではなく、人を惹きつける透き通る声をしていた。


「特に何も?」


 そう答えると、なんだか生真面目そうにため息を吐いた。


「私が開けた瞬間逃げ出すとは考えなかったの?」


 闇の魔女は手錠をつけてはいるが、何処かに鎖が繋がっている訳ではなかった。


「なるほど!気付きませんでした!!」


「……は?」


「いやはや、そんなこと思いもしませんでした!貴女はとても賢いのですね!」


「……え…」


「全く、娘さんが困っているよ」


 ()()()()()()()()スカサハが呆れたように声を掛けてきた。


「そりゃいけない、すみませんね闇の魔女さん」


「……え、えっと……」


「まぁ、そんな賢い貴女だから今日の拷問がどんなのか分かってますよね?」


「………」


(黙り込んだか……やっぱり覚悟を決めていたか)


 昨日ゴミが拷問すると言った際、ほんの微かに闇の魔女が反応しているのを見た。そう()()()()()、だ。


 まるで無理矢理気持ちを抑え込むように。


 そんなのを見たら、その覚悟を()()()()()()と思うよね?


 それとアイツの悲しんでる顔が見たいすごく見たい。恐らく俺も付いて行くだろうからとても楽しみだ。その写真を撮ったら高く売れるだろうなぁ。


「けれども、なんと!今ならそれを()()()()魔法のお守りを差し上げます!喜んでいいですよ!」


「全く、今日はいつにも増して(いじりが)激しいね」


「あ、わかる?」


「何年一緒にいると思ってるの?」


「そりゃそうか。兎も角、このイヤリングでも付けてくださいな。いいことがあるかもですよ?」


 そう言って、透明化したイヤリングを付けた。


「そうそう、この事は秘密ですよ?」


「……バラしたら?」


 恐らく本来の喋り方をした彼女は少し仕返しをする様に聞き返した。



「貴女が悲惨な目に遭うでしょうね」









 その後、拷問室から悲しげな豚の泣き叫ぶ声が響き渡った。


 兵士の間では天使の声ととても話のネタにされた。
















〈補足〉

ハール・・・黒掛かった茶髪、紫色の目、16歳、175cm

闇の魔女・・・黒髪、青色の目、15歳、164cm

メルバ・スティーブ・・・金髪、青色の目、169cm、デブ


・本編では説明するかわからないので載せました。

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