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闇の魔女

楽しんで下さい



「貴方、私を助けてくれない?」


 そう俺に話しかけてきたのは、麗しい囚われの令嬢だった。










 これは数週間前の話。


「ハールお前の為に特別な仕事を手に入れたぞ!」


 そう言ったのは、現在()()()の戦線からやや離れた位置にある街の詰所の上官であるメルバ・スティーブ、通称『クソデブ』である。


「よくわかりませんがありがとうございます」


 ただ、あくまでもそれは俺を除いた仲間達の意見であって、気に入られている俺には関係ないが。


「どうだ!もっと褒めよ!」


「さすがメルバ家次期当主第一候補スティーブ様!貴族の中の貴族!」


「もっともっと!」


「その敏腕さを買われて後方支援を託された天才!」


「はははは!」


『『『地位が高かったから回されただけだろ』』』


 この流れは俺が気まぐれに一年前から続けているここの恒例行事だ。他の仲間からは奇怪な目でよく見られるが、スティーブの反応が面白く未だにやっている。まぁ、いい仕事を回してくれるので続けている面もある。


「おっと!仕事が少し残ってるから少し待っておけ。その間楽しみにしとけよ!」


「はい!」


 そう言ってク……スティーブ様は上機嫌で腹を揺らしながら去っていった。


「お前は相変わらずだなぁハール」


「だって面白いだろ」


 呆れながら俺に話しかけてきたのは暫くここで仕事をしているナルハだった。


「あのクソデブにそんな理由で媚を売るのは貴方ぐらいよ」


 そう言ったのはナルハと同じ同僚のマーサだった。


 この二人は歳が16歳と同じなため、よく話すメンバーだ。


「あんな安い言葉であんな機嫌良くなるなんて可愛いだろ」


「ちょ、笑わせないでよ」


「そ、そうだぞハール、いくらお前の見るからな皮肉にも気付かずにじょ、上機嫌だからって」


「そうか?」


 二人は腹を抱えて大爆笑した。


「はぁ、まあアイツに媚を売れるのは貴方ぐらいね。女の私とかがしたら下手したらいやらしい事されるかもだし。既に何人かはセクハラされてるし」


「男でもあの男に媚びを売るなんて嫌だね」


「まぁいい仕事貰えるらしいし俺は気にしないけど」


「全く羨ましい限りだな」


「そうね。あ、この足跡はクソデブだわ。じゃ、私達は仕事に戻るからいい仕事でも楽しんできてね」


「おう」


 すると力士もびっくりな振動を鳴らして『歩いて』きたスティーブが戻ってきた。


「よし、ハールいい仕事場に行くぞ!」


「了解です」


(さてさて、いい仕事場とは一体何処なんだろうか)



 現在この国、アッシュ王国はモール王国と戦争している。両国は元々仲が悪く頻繁に小競り合いを起こしていた。しかし、ここ数年前からモール王国側でこちらの国を他国と結んでいる貿易の同盟から外させようとさせていると噂が立っていた。


 最初は国民も王国自体もそこまで信用していない噂だったが、王様が念の為調査させたところ、この噂は()()だった。しかも、あと一年でその計画が実行されるところだったのだ。


 もし、この同盟が打ち切られると向こうの国に戦争を仕掛けられたら他国からの食糧支援を受けるモール王国にアッシュ王国は負けてしまう。


 それを打破する為に、国境沿いにある村を敢えて小競り合いの中心にして、「我が国民が被害を受けた!これは貴国に謝罪を要求する!!」とかなんとか因縁をつけて相手に無理難題を要求した。


 すると予想通りにモール王国はそんな自覚自演をしたのはアッシュ王国だ!と主張して要求受け入れる筈がなく、戦争が始まった。


 給料が安定してるからと兵士になった俺からすれば、死ぬかもしれない戦場に行くかもしれないとハラハラドキドキしていたが、運良く後方支援の配属になり一安心していた。


 しかも上官に媚びを売ったお陰で前線に行く必要も無くなったため、金をもらいながら程よく仕事をする毎日だ。


(さて、いい仕事とはなんだろうなぁ)


 暫く詰所を歩くと、地下に進む扉をスティーブが開けて進んでいった。


「スティーブ様、もしかして次の仕事とは」


「うむ、()()()()()()()()()()()()()


(なるほど、これがアイツらが話していたことか)


 実はここ数日スティーブはこの街にいなかった。その前にスティーブの媚売りメンバーと飲みに行った時、()()()()()の輸送をスティーブがしていると聞いていた。


「責任ある仕事を下さるとは感激です」


「うむうむ!」


 まぁ、捕虜の監視といったら厳しいイメージがあるが、実際は魔法封じの手錠を使い捕まっている為、余程のゴリラでなければ監視役は特に仕事がないのだ。つまり()()()の仕事だ。


「それになハール」


「なんでしょうかスティーブ様」


「この捕虜は()()()()じゃ」


「………」


「ハールお前はいい奴だからな、私でも羨ましい仕事を譲ってやろう。是非ともこの仕事を()()()()()()


「流石スティーブ様器もお広い!」


「はははは!」


(大物…奴隷捕虜………譲る……まぁ、そういう事か)


 高笑いを続けているスティーブをつい冷ややかな目で見てしまった。


(はぁ、全く、この世界は腐ってるな)


 奴隷捕虜とは捕虜となった国に甚大な被害を齎した者がなるものだ。公式にはそんなものは存在せず、どの国も認めてはないが、噂好きの仲間からはどの国も存在しているそうだ。


 そしてその捕虜になるものは漏れなくーーー


「よし、これからお前が監視するのはモール王国にて我が国に甚大な被害を与えた大罪人()()()()だ」




 麗しい美貌の女性なのだ。




 牢屋にて魔法封じの手錠を手脚にされ、目隠しをされていた女性はボロボロの服を着ながらもシルクのような黒髪と陶器に勝るほど艶やかな肌をしていた。









 





 

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