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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
四章 最狂の騎士
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崩壊と新生

 真夜中。

 クロウは、爆発音に目覚めた。

 扉を開けて外に出ると、鉱山から煙が上がっていた。

 何かあったのだと察したクロウは、室内に戻るとベットからエレが見つめていた。

 

 「何かあったの?」

 

 「ああ、鉱山で爆発があったみたいだよ、民衆や兵士が松明をもって向ってたよ」

 

 その言葉を聞いたエレは、すぐさま駆け出して出て行こうとクロウの横を通り過ぎようとした、そのまま低い呻き声をあげて気絶した。

 

 「エレ…済まないけど朝まで眠っててくれ…この好機を無にすることはできないから」

 

 優しく微笑んでクロウは、エレを担ぎ上げるとベットに寝かせて呟く。

 

 「ありがとうエレ。君の協力は凄く助かったよ、君たちが望む領主になれるように頑張るから」

 

 そのまま、振り返らず扉を開けて外に出ると、大通りを一直線向かい疾走する。

 何分か走ると城の城門が見えてきた。

 クロウは、城門に倒れている兵士に駆け寄ると息絶えていた。

 

 「何があった…まさか! いや…くそ! ケイか! 爆発の事もそれなら納得できる…」

 

 焦る気持ちを抑えて、場内に足を踏み入れると真っ暗だった。

 どうにか見えるのは中央の螺旋階段だけだった。

 クロウは、螺旋階段を素早く駆け上がると二階部分に到達する。

 

 暗闇の中、拍手の音が響き渡る。

 

 「ようこそ! 円卓の騎士クロウ。私は褐色のセグラント。君を待っていたよ」

 

 クロウは、暗がりに向かい問いかける。

 

 「待っていたとはどういうことだ!? ケイはどこにいる!」

 

 五感を使い辺りを見渡しながら警戒強める。

 

 「待っていたとはどういう事か、教えてあげよう。君にはこう伝えたほうが解りやすいんじゃないかな? 漆黒の者」

 

 その言葉を聞いた瞬間、クロウは体を猫のように身震いさせる。

 

 「…ケイを殺したのか! 答えろ!」

 

 クククと、低い笑い声と共にセグラントは答えた。 

  

 「まさか。自分の妃を殺すほど愚者じゃないだろう」

 

 指を鳴らす音がこだまする。

 一瞬にして、蝋燭に火が灯るとセグラントが玉座に座り、葡萄酒を飲んでいた。

 満足そうに、自分が望んだものが手にはいったような悦に浸りながら。

 ケイは、下着姿で銀髪を絨毯に惜しげもなく広げていた。

 その光景を目にした瞬間、クロウの中で何かがはじけた。

 

 「ケイ…?」

 

 ケイは体を抱きしめ強張らせて、生気のない瞳でクロウに言う。

 

 「見ないで……汚れた私を見ないで…」

 

 ケイが漏らした言葉を聞いた瞬間、クロウはセグラントに襲い掛かった。

 セグラントも疾走すると剣を引き抜き、クロウと刃を交える。

 つばぜり合いになりながら、クロウは激怒した。

 

 「殺してやる! お前だけは絶対に殺す!」

 

 勝ち誇ったように嗤うと、セグラントは言葉を返した。

 

 「なんだ? ケレモンに惚れていたのか? 残念だがもう私の物だ、諦めてもらおうか」

 

 拮抗する剣と刀から火花が散る。

 クロウは、刀を引くと素早く右に避けて水平に切りつけた。

 セグラントは、剣を返し受けると力一杯弾き素早く後退する。

 

 「どうやら剣技では敵いそうにない。この後しないといけないことがあるんだ。君は邪魔だから早速! 死んでもらおうか」

 

 吐き捨てると指を鳴らす、影は巨大なドラゴンに変わると咆哮をあげて蝋燭の灯りを打ち消し、暗闇に包まれる。クロウに向い短剣のような牙を無数に打つ放った。

 クロウは、全身を刺された痛みに耐えかねて膝をつくと吐血する。

 漆黒の闇に包まれ、錆びた鉄の臭いが口内を駆け巡る。

 

 「何が起きた…? 俺が死ぬのはいい。せめてケイを…助ける力が欲しい。力が力さえあれば…。」

 

 言葉に呼応するように、クロウの黒曜石のような瞳がアメジストの様に徐々に変貌を遂げていく。


 闇の中輝く瞳を見たセグラントは、動揺を隠せない。

 

 「その瞳は…お前は一体何者なんだ…!!」

 

 静かに立ち上がると、目にも止まらず速さでセグラントの目の前に佇む。

 恐怖のあまりセグラントは、ケイの髪を掴み人質にとると剣を首に掛けて叫ぶ。

 

 「来るな! 近寄るな! 近寄るとケレモンを殺すぞ…」

 

 クロウは、冷めた瞳でセグラントを見据えて嘲笑う。

 

 「昔、覇王は言いました。鳴かぬ鳥なら殺してしまえと、俺はその覇王程気長に待つ人間じゃない…。 ケイを殺す? 散々弄んだ挙句に殺すのか!? 無様だな、余程自分が命が大事なんだな」

 

 冷たく呟くとセグラントの首に、何か冷たいものが走り抜けた。

 セグラントの首がゆっくりと滑り落下する。

 噴水のように赤い水を空に向かい噴出させた後、壊れた人形の様に崩れ落ちた。

 転がったセグラントの顔は、摘みたての林檎の様だった。

 クロウは、抜け殻の様なケイを抱え上げると呟く。

 

 「君は、汚れてなんかないよケイ…。自分を犠牲にして俺を護ってくれた…」


 ケイを、玉座に座らせると、主を失い人影を求めて闇の中を駆けずり回るドラゴンを見つめる。

 ドラゴンは、紫に目を輝かせるクロウに狙いを定めると下から突き上げるように食らい覆い隠す。

 空に向かい巨大な影柱が立ち昇る。

 やがて、静かに収縮し消失した。

 

/


 深遠の闇の中。立っているのか、浮いているのか、ワカラナイ。

 何もない。

 孤独な世界―――。

 懐かしいそんな言葉が似合ってるのかもしれない、クロウはそう感じた。

 腹の中で胎動するように稚児のように体を丸めている。

 隣に、誰かいたような気がして悲しくなる。

 このまま、こうしていようかと思った矢先。

 隠者の声が響き渡る。

 

 「クロウ、お前は無能者だ! お前が持ってるものは全てお前の半身からお前が捕食し獲得した能力だ! お前の本質は無だ! 紛い物はお前自身だ! 父を憎め! こうなったのは全てランスロットの所為なのだからな! お前は生まれついて世界に君臨する『捕食の王』なのだ!」

 

 「俺は、王になどなりたくない…。それにお前が仕組んだ事だろう…」

 

 「そうだ! 私が、仕組んだ事だ! だがランスロットの事は別だ…。神はお前に何もしてくれなかったではないか! お前は私と同じなのだ! 憎いなら王になれ! 力で世界を手に入れ、全てを平伏させろ!」

   

 クロウは、瞳を見開くと刀を手にとり斬り下ろした。

 闇の空間を、切り裂いて静かに下り立つクロウの姿は変貌を遂げていた。全身漆黒姿でコートの下に着込んだ紅い着物なびかせ、手には漆黒に染まった刀を携えている。


 気を失い玉座に座るケイを、悲しそうに見つめて腕を伸ばし掌でケイを覆い隠す。

 静かに腕を下ろすと、ケイはいつもの姿に戻っていた。

 踵を返し去っていくクロウの背中には、月光が真紅の逆さ十字を映し出していた―――。

 

 

   

ネット上での執筆を辞めます。


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