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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第87話 支えてくれる恋人達

 怒涛の記者会見を終え、控え室に戻った俺は大きく息を吐いた。

 紗綾は秘書として冷静に対応してくれたが、正直、あのフィルの爆弾発言には肝を冷やした。


「隆行さん、お疲れ様です」


 控え室の奥で、深雪が湯気の立つ紅茶を淹れて待っていた。

 黒髪をまとめ、知的なスーツ姿に身を包んだ彼女は、記者会見の場には出ず、あくまで裏方に徹していた。


「深雪……。助かったよ。お前が事前にまとめてくれた資料がなければ、質問攻めに耐えられなかった」

「当然のことです。私は隆行さんを表で輝かせるためにいますから」


 そう言って、深雪は柔らかく微笑んだ。

 その姿はどこか儚げで、それでいて凛とした強さを秘めている。


「……でもな、陰でばかり支えているのはつらくないのか?」

 俺が率直に問うと、深雪は少しだけ視線を伏せ――そして静かに首を振った。


「私は上乃介様に拾われたあの日から、誰かを支えることでしか自分を保てない女です。だからこそ、隆行さんを支える“今”は幸せなんです」


 その言葉には迷いがなかった。

 上乃介氏を失って心に空白を抱えた彼女が、俺と出会い、再び歩みを始めている――そう実感できる声だった。


「私は……隆行さんを上乃介様の代わりにしているつもりはありません」

「……ああ、分かってる」


 俺はその手をそっと握り、安心させるように言葉を返す。


「ありがとう、深雪。お前が隣にいてくれるから、俺はどんな無茶にも立ち向かえる」

「……はい」


 彼女の頬がわずかに赤らみ、握った手を少し強く握り返してきた。

 その細やかな力に、俺は胸が熱くなる。


 陰で支える覚悟を持ちながら、実際には俺を最も支えてくれている存在。

 それが深雪なのだ。


 翌日。

 社長室のドアを開けると、既に紗綾がデスクに向かって山積みの資料を整理していた。

 白いブラウスにタイトスカート、きっちりと結い上げた髪。

 “水無月コーポレーションの社長秘書”としての顔は、誰よりも誇らしく、美しい。


「おはようございます、隆行さん」

「おお……もう出勤してたのか。昨日は夜遅くまで付き合わせたのに」

「当たり前じゃないですか。私は秘書ですし……それに、あなたの恋人ですから」


 言い切る姿は、彼女の揺るがぬ覚悟そのものだった。


 俺がCEOになってからというもの、彼女は一日の大半を社長室で共に過ごしている。

 議事録の作成からスケジュール管理、書類の取捌きに至るまで、全てを完璧にこなしてくれる。



 まるで俺のもう一つの頭脳のように。


「でも、無理してないか? たまには休んでも――」

「嫌です。だって、隆行さんが頑張ってるのに、私だけ休んでなんていられません」


 真剣な瞳。

 それは、ただ仕事の責任感からくるものじゃない。

 彼女の深い愛情が、そのまま形になっていた。


「……あの時、絶望していたあなたを救いたいと思った。

 あの日からずっと、私の願いは変わっていません。私は“社長の娘”じゃなく、ただ一人の女として――あなたの隣にいたいんです」


 胸の奥に熱が広がる。

 社長令嬢として育てられ、周囲から持ち上げられることに疲れていた彼女が、俺を信じて支えてくれる。

 その一途さは、何よりも心を打つ。


「紗綾……ありがとう。お前がいるから、俺は社長になれたんだ」

「……ふふ、そんな大げさに言わなくても」

「いや、本当さ。だから――これからも頼りにしてる」


 彼女は小さく笑い、俺の胸に顔を寄せる。

 ほんの数秒の抱擁。

 それだけで、心の疲れが不思議と溶けていく。


 恋人であり、秘書であり、そして生涯のパートナー。

 彼女こそ、俺が最初に誓った“正妻”なのだと、改めて実感する瞬間だった。


 朝から晩まで会議と書類で埋まる日々。

 だが俺の社長室は、普通の会社のそれとは少し違う。

 そこには常に“家族の気配”があった。


 秘書デスクには紗綾。

 彼女は俺のスケジュールをにらみながら、手際よく電話対応をこなしている。

 いつも凛とした姿は、社員達の憧れそのものだ。


「隆行さん、午後三時からの会見準備が整いました。あと、この資料にサインをお願いします」

「ありがとう。助かるよ、紗綾」


 彼女の差し出す書類に目を通し、ペンを走らせる。

 すぐそばで支えてくれる恋人がいる安心感――これが俺の最大の武器だろう。


 そして、ソファスペースでは深雪が資料を整理していた。

 奉龍院で鍛えられた経営の目は鋭く、俺の判断を補強してくれる。


「この契約書ですが、細かい条項に注意が必要ですね。もし問題があれば私の方で調整しておきます」

「頼もしいな。深雪がいれば百人力だ」

「ふふ……私は陰の参謀ですから。あなたが前に立つなら、私は後ろで支えます」


 そう言って微笑む彼女は、昔の傷を乗り越え、いまや揺るぎない自信を纏っていた。


 そこへ突然――。


「たーかゆきサンッ! お昼休憩デース!」

 社長室のドアを勢いよく開けて飛び込んできたのはミルフィミー・アーガス。

 褐色の肌に金髪ロングを揺らしながら、両手いっぱいにランチボックスを抱えている。


「おいおい……ここは会議中だぞ」


「ノープロブレム! 仕事は大事、でも愛も大事デース!」

「……はぁ、仕方ないな」


 彼女の明るさに、室内の空気が一気に和らいだ。

 深雪も苦笑しながら、書類の束をテーブルに置く。

「……ほんと、にぎやかですね」


 さらに今日はフィルまで現れた。

「フィルは社長室でリモートワーク。問題ない」

 そう言って当然のように俺の椅子の下に潜り込み、膝に抱きつく。


「お、おい……社員が見てるだろ」

「気にしない。フィルはマスコット」


 紗綾が咳払いをして、にっこり笑う。


「……社長、そろそろ午後の会議に向けて集中していただけますか?」

「は、はい……」


 結局、俺の社長室は仕事場でありながら、恋人達との日常を共有する“家族のリビング”のようになっていた。


 だが、不思議と嫌な気分にはならない。

 むしろ、この空気こそが俺の原動力なのだ。


「……これが俺の日常か」

 書類に目を落としながら、思わず口元が緩んでしまった。






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