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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第61話 悩める少女



 私、明石沙織の抱える家庭の問題が解決して数日が経過した。


 普通のOLには返し切れないほどの膨大な借金。お母さんを蝕んだ未知の病。


 ずっと私たち家族を苦しめて来た問題をたった1日で全部解決しちゃったんだもん。


 篠宮さんは凄い。あの人の言葉には有無を言わせない説得力みたいなものがあった。


 この人に任せれば絶対大丈夫だ。そんな不思議な感覚に覆われた私は、親友の桜子ちゃんにすらずっと拒んできた助け舟の提案をあっさりと受け入れてしまった。


 あれも神力の力なんだろうか。私は玲緒奈ちゃんのお父さんである篠宮さんに特別な感情を持っているのかもしれない。


 普通に考えたら恋愛対象になんてならない。でも、この頃考えているのは篠宮さんの事ばかりだ。




 桜子ちゃんがずっと助けてくれるって言っていたのを拒んでいたのは、彼女と対等の立場でなくなるのが嫌だったからだっていうのもあった。


 桜子ちゃんはクラスでイジメを受けている私をずっと助けてくれた。


 借金のためにバイトバイトで遊びにも行かない私は、周囲から浮いていた。私にも分け隔てなく接してくれた彼女はいつしか学校では唯一の友人となっていた。


 一ヶ月ほど前だっただろうか。

 私はクラスの不良女子から嫌がらせを受けるようになった。


 理由はなんだっけ。確かリーダーの子の彼氏に私が色目を使ったからだとかなんとか言ってた気がする。

 後で分かったのはその男の人はキングキャッスルのお客さんだった。私を気にかけてくれるちょっと強面の優しいお兄さんだったけど、まさかあの不良の彼氏だったとは知らなかったのだ。


 勿論わたしは彼に対して特別な感情は持ち合わせていない。バイトだから話すことが出来ただけで普通は話しかけることもためらわれる怖い人だ。


 そのことをちゃんと彼女にも伝えたのだけれど、それなら私の彼氏はそんなに無価値な男なのかと逆切れされた。


 理不尽だけど反論はしなかった。何を言っても話は通じないから。

 一応その彼氏から釘でも刺されたのか直接何かをしてくることはなかった。

 暴力に訴えられたら私には抗う術はない。


 その代わりに学校での執拗な嫌がらせはこの頃ますますエスカレートしている。

 でもそれを止めてくれたのが桜子ちゃんだった。


 いつも私を助けてくれた桜子ちゃん。


 彼女は良家のお嬢様で、私とは真逆の裕福な育ちからまとう雰囲気は周囲を寄せ付けない独特のものだった。


 でも、私と彼女は妙にウマがあった。

 立場が真逆ということも理由の一つだと思う。もしかしたら最初は哀れみだったのかも知れない。


 どうしようもなく弱い立場の私を守ることは彼女にとっては当たり前の行為だったのだろう。

 旧貴族家に連なる家柄だって聞いたことがある。


 彼女の援助を断っていた理由。それは彼女と友人関係でなくなってしまうことが怖かったからだ。


 桜子ちゃんは私にお金の援助をしたからって恩を着せるような子じゃないのは分かってる。

 それに初めから彼女と私は立場そのものが違う。だから援助してもらうくらいでは私たちの関係は変わらないだろう。


 でも、私はそれがイヤだった。彼女の援助を受け入れることは、彼女と対等の関係じゃないって認めてしまうことになる。


 それだけはイヤだったのだ。




「沙織ちゃん、おはようございます」

「あ、桜子ちゃんおはよう」


 私が自分の思いに否定的になっていると友人の桜子ちゃんが声をかけてくる。

「どうかしましたの?」

「な、なんでもないよ」

「なんだかとっても嬉しそうですわね。何かいいことでもありましたの?」

「んとね、うん。お母さんの病気が治って、借金問題が解決したの」

「なんですって!?」


 桜子ちゃんの表情が驚愕に染まる。彼女は明石家の事情を知っている。稼ぎ頭の母が入院してからうちの経済事情は困窮を極めていたことを知る数少ない人だ。


「いったいどうして?並の額ではなかったですわ」

「うん、それがね」


 私は申し訳ない気持ちになりながらも一連の流れを桜子ちゃんに話して聞かせた。友人として全面的に信頼を置いている彼女になら自分の家の事情も話して問題ないと判断したのだ。


「不思議、というか、怪しいですわねその男。もしかして、お母さまのご病気もその男の差し金なのでは?」

 でも、篠宮さんの話を聞いた桜子ちゃんの反応はいまいちだった。

 いや、むしろ警戒心をあらわにして私に”そんな男に安易に身を任せるべきではないと説得し始める。


「そ、そんなことないよ!玲緒奈ちゃんのお父さんはそんな人じゃない」

「そう、ですか。失礼いたしましたわ。わたくしとしたことが、会ったこともない人を揶揄してしまいました。それにしても酷いですわ沙織ちゃん」

「う、それはその」

「わたくしが何度も手助けして差し上げたいと申しておりましたのに、ぽっと出の男に身を任せてしまうなんて、ふしだらですわ」

「ゴメンってば。私も気が付かないうちにとんとん拍子に話が進んじゃって、気が付いたら全部解決してもらってたんだ、ってふしだらって、篠宮さんとはそんな関係じゃないから!」

「ではどんな関係ですの?」

「えっと、それはその」


 私は返答に困った。篠宮さんは玲緒奈ちゃんのお父さん。それだけのはず。


 感謝はしてる。でも、私の中に新たに生まれ出たこの気持ちは何だろう。


 昨日から思い浮かぶのは篠宮さんの顔ばかりだ。

 自分よりも25歳も年上である男性。しかも友達である玲緒奈ちゃんのお父さんだよ。


 普通なら恋愛対象になる年齢差じゃないし。私は人並みにアイドルも好きだし、同級生たちと同じようにイケメン俳優も好きなはずだけど。


 私が好きなタイプって包容力のある男性だと思ってる。年上で経済力があり、女性に対する気遣いの出来る紳士。

 子供っぽい理想だって桜子ちゃんは笑ったけど。


 しかしその理想像の条件を並べ立ててみると……。

(あれ?篠宮さんって私の理想そのものだ。いやいや、でも玲緒奈ちゃんのお父さんだし)


 あり得ない。そう自分に言い聞かせてかぶりを振る。

 恋愛経験のない私にとって、常識から外れた年齢差という観念はそう簡単に振り払えない。


(それに、ハーレムなんてありえないよ。私は私だけ好きになって欲しい。いくら玲緒奈ちゃんのお父さんでも、他の女の人と仲良くしてたら絶対嫉妬しちゃう)


 私が返答に困っていると桜子ちゃんは悪戯っぽい笑みを浮かべて”やれやれ”と首を振る。

「冗談ですわ。そんなに嬉しそうな顔をしている沙織ちゃんを見るのは初めてですもの。その篠宮何某(なにがし)にちょっとやきもち妬いてしまっただけですわ」

「もう桜子ちゃんは冗談がうまいなぁ」


 そんな他愛のない会話で笑い合いながら、私たちは学校へと登校していった。


 でも、この時の私は彼女がどんな思いでその会話をしたのか、知る由もなかった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「それじゃあね桜子ちゃん」

「ええ、ごきげんよう。また明日」


 そうして桜子が駅のホームから電車に乗る沙織を見送ったのは、やけに目障りな夕日のさす午後の事だった。


 電車の音が耳障りなほど五月蠅い。人ごみに塗れた駅の改札。

 有象無象の喧騒の音はガラスを金属でこするよりも不快なものに聞こえる。


「ヒッ」

「な、なんだ」


 通りがかる人々はその可憐な少女にあまりにも似つかわしくない悪魔のような形相に恐れおののき道を開いた。


 踵を返したその少女の通る道を阻むものは存在しない。


 ロータリーのスペースを大幅に占拠する黒塗りのリムジンの前には恭しく扉を開くメイド服の女が立っている。


「お帰りなさいませ、桜子お嬢様」

「調べはつきまして?」

「ハッ。中でご報告いたします」

「結構」


 その臣下の最敬礼ともいえるふるまいを少女は気にも留めない。

 傲慢ともとれる態度に疑問や苦言を呈する者は存在しない。

 何故なら、彼女にとってそれはあまりにも”当たり前”の光景である。


 生まれた時から当たり前にあるもの。彼女にとっては使用人とは自分に尽くして然るべき存在なのだ。


 そこに理由はない。何故なら彼女は絶対的上位者であり、彼女の気分一つで使用人一人の人生などいくらでもコントロールできる権利を持つ支配者だからに他ならないのである。


「仰せの通り、篠宮隆行について調査した結果をご報告いたします」

「……」


 沈黙を肯定と捉えたメイドはいつものように主からの要望通りに命令を遂行した。


「篠宮隆行42歳。水無月コーポレーションで最近頭角を現し始めた本部長。ほんの数か月前まで万年課長をしていた模様……」

「……」


 淡々と報告を続けるメイドの言葉に静かに耳を傾ける桜子。


「そして、ここからが重要なところですが」

 必要な要点をまとめた報告を黙々と聞いている彼女の眼が、ある言葉を境に見開かれる。


「この男、恐らく神力に目覚めたものと思われます」

「なんですって……?」


 差し殺すような視線を向ける桜子。屈強な男ですらしり込みしてしまいそうなほどの鋭い眼差しを受けても、そのメイドの態度が変わることはなかった。


 既に子供のころから慣れっこである彼女の射殺すような目つきに動じることなく調べ上げた事実を淡々と述べ続ける。


「今、なんと?」

「篠宮隆行は神力に目覚めたと思われます、と」


 ピクリ、と桜子の眉が動く。その言葉の意味を彼女はよく理解していた。


「根拠はあるんですの?」

「はい。数か月前、彼は〇〇組系列の闇金から金を借りています。それ自体が盗難被害にあったカードを不正使用されたためですが、不可解なことに次の日には組織が壊滅し、借金はチャラ」

「組織が壊滅?どういうことですの?」

「そのままの意味です。当家の情報網をもってしても何故警察が一斉摘発に乗り出したのかはいまだに不明。当局のトップも決して口を割ろうとしません」


「まさか、その年になって神力に目覚める者がいるなんて思いませんでしたわ。ましてやあの規模の組織を人知れず壊滅させたとなると、()()()()()()()()()()神との邂逅によって目覚めさせられたのかもしれませんわね」


「はい。その可能性は十分あるかと」


 少し考えてから桜子はメイドに指示を出した。

「水無月コーポレーションには何人か潜り込んでいるはずですわね。篠宮隆行にスキャンダルを起こして失脚させなさい」


 桜子は出来るかどうかとは尋ねず実行し、成功させることを前提として言葉を紡ぐ。

 それを受け取ったメイドはさも当たり前のように記憶から引っ張り出したデータによって最適解を提示した。


「現在水無月には7名のエージェントが潜り込んでいます。その中で適任なのはミルフィミー=アーガスでしょう。彼女はハニートラップの専門家です」

「ミルフィならやってくれるでしょうね。会社での地位を失墜させてそれを沙織ちゃんに知られるように仕組みなさい」

「かしこまりました。女性スキャンダルを起こして男としての尊厳を奪う。そしてその事実を明石沙織様に知らせて仲を引き裂く、ということでよろしいですね?」

「ええ、結構」


 桜子は沙織には見せたことのない邪悪な笑みを浮かべ、その歪んだ笑顔を見たメイドは淡々と必要な指示を部下へと送った。


「一週間以内には完了するでしょう」

「三日」

「……かしこまりました。そのように指示いたします」


 彼女の言葉には否定が許されない。桜子が指示すればそれは完璧に完了させることが大前提となる。


 メイドに”否”は許されなかった。内心若干の不安を覚えつつ、水無月に潜入しているミルフィミーに三日以内に命令を完了させるように連絡を送る。


「これで沙織ちゃんに纏わりつく目障りなウジ虫はいなくなりますわ。彼女のそばにいるのはわたくし一人で十分。可愛い可愛い沙織ちゃん。わたくしが守って差し上げなくては。うふ、うふふふふ」


 不気味に笑う主に内心冷や汗をかくメイド。

 狂気を含んだ笑顔はやがて隆行を巻き込む事件へと発展していく。



「沙織ちゃんに恋慕の情を向けられるに相応しいのは、この"奉龍院 桜子"ただ一人ですわ!」


 その娘は世界に名を轟かせる大企業の跡取り娘。稀代の天才であり、既に高校在学中にも関わらず国外では大学を飛び級で卒業し、高校卒業と同時に奉龍院の家督相続が約束されている若き女傑である。


『篠宮隆行』と『奉龍院桜子』

 明石沙織をめぐって波乱を巻き起こすことになる。


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