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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第53話 揺らぐ役員会

 襲撃事件から一夜。

 水無月コーポレーションの本社ビルは、いつになく張りつめた空気に包まれていた。


 午前十時、臨時役員会。

 重厚な扉をくぐった瞬間、俺――篠宮隆行に突き刺さったのは、無数の冷たい視線だった。


「……来たな」

「本人が出席するとは、ずいぶん図太い神経だ」


 ざわめきが走る。

 長机をぐるりと囲む役員たちのほとんどが、俺を疑いの目で見ていた。

 テーブルの上にはすでに“証拠”が並んでいる。捏造された不正取引のデータや、偽造された署名入りの書類だ。


「これが君のやったことだというのか」

 一人の古参役員が資料を叩きつける。

「会社の金を不当に動かし、外部と癒着して利益を貪った。そういうことになっているぞ、篠宮君」


 笑い声が混じる。

「やはりただの凡人だったか」

「出世が早すぎると思ったらこの有様だ」


 罵声に近い言葉が浴びせられるたび、胸の奥に怒りの火が灯る。

 だが俺は――逃げなかった。


「……反論させていただきます」

 声は震えていない。心臓は速く打っているが、不思議と冷静さがあった。


 横に控えるフィルが静かに頷く。彼女は既に解析を終えている。

 資料に含まれる矛盾点――時刻、取引先の実在性、署名の筆跡。どれも穴だらけだった。


「まず、こちらをご覧ください」

 深雪がタブレットを投影し、映像を流す。

「問題とされている取引の日時。ですがこの時間、隆行さんは出張先で私たちと共に会議に出席していました。監査記録でも確認済みです」


「なっ……」

 役員席がざわつく。


「さらに、この書類の署名。よく見ると二重線が走っています。電子データを拡大すれば、一目瞭然です」

 フィルの冷静な指摘に、沈黙が広がる。


「つまり、この証拠とされる資料は――」

「偽造ですね」

 紗彩が淡々と断言した。


 彼女の声音はやや柔らかいが、突きつけられた真実は鋭い刃のようだった。


 役員の一人が立ち上がり、怒鳴る。

「馬鹿な!そんな小細工で――」


 俺は一歩、前に出た。

「小細工をしているのはどちらですか?」

 会議室が静まり返る。


「俺を排除するために、虚偽の証拠をでっちあげた。その背後に誰がいるのかは、まだ確かではありません。だが――必ず突き止めます」


 目を逸らした役員もいれば、動揺して顔を見合わせる者もいる。

 しかし一人だけ、薄ら笑いを浮かべる影があった。

 古参役員の一人――白髪の大男。彼の視線だけは、俺に挑むようにまっすぐ向けられていた。


「……やれやれ。随分と威勢のいいことだ」

 低い声が会議室を震わせる。

「だが世の中は、正義や信念だけで動くものではない。権力を握るのは“力”を持つ者だ。金と人脈、そして恐怖。それが世界を動かす本当の仕組みだ」


 空気が一変する。

 その言葉に呼応するかのように、他の役員たちも黙り込んだ。

 ――こいつが黒幕か。


 俺は、逃げ道を探さなかった。

 正面から崩すと決めたのだ。


「いいえ」

 俺はまっすぐ言い返す。

「俺が見てきたのは違う。“信頼”が人を動かすんです。金も恐怖も、長くは続かない」


 その瞬間、フィルたちの存在が背中を押した。

 心の奥で繋がるスピリットリンクから、彼女たちの想いが流れ込んでくる。


 胸の奥が熱くなった。


「もし本当に力がすべてなら、俺はここに立てなかった。俺を支えてくれた仲間がいるから、俺は今ここにいる。だから俺は――あなたたちの虚偽に負けない」


 会議室に重い沈黙が落ちた。

 役員たちは互いの顔を見合わせ、揺れている。

 黒幕の男だけが、不気味な笑みを浮かべていた。


 ――決着は、まだ先だ。

 だが嵐の中で、俺たちの戦いは確かに始まったのだ。


 役員会議室は沈黙していた。

 冷たい光を放つシャンデリアの下、十数人の重役たちが互いの顔を伺い合い、誰も軽々しく口を開こうとしない。


 その空気を切り裂いたのは、先ほどから不気味に笑っている白髪の大男だった。

 名は――相良重政。

 創業期から水無月コーポレーションを支え続けた古参であり、誰も逆らえぬ実力者と囁かれる人物だ。


「篠宮君」

 低く重い声が響く。

「君の言葉は立派だ。信頼だの、仲間だの……美しい理想だ。だが経済の現場では通用しない。理想主義者は利用され、やがて切り捨てられる。それが現実だ」


 挑発的な視線。

 役員たちが息を呑む。


「もし君が本当に潔白だというなら、ここで証明してみせるといい。だがどうだ? 机の上には“証拠”がある。ここにいる者の多くは、すでに君を黒だと思っている。君は孤立無援だ」


「……いいえ」

 俺は即答した。

「俺は一人じゃない」


 その声に呼応するように、フィルが椅子から立ち上がる。

 小柄な身体に宿る瞳は、氷のように冷たく澄んでいた。


「篠宮隆行は潔白です。証拠はすでに解析済み。捏造したのはあなたたち。……相良重政、間違いありません」


 ざわっ、と会議室が騒然とする。

 名指し――それはつまり、正面からの告発だった。


「小娘が……」

 相良の顔に怒気が走る。

「証拠でもあるのか?」


「あります」

 フィルの言葉に深雪が続いた。

「偽造書類に使われている電子署名は、あなたが顧問を務める外部企業のサーバー経由で作られていました。ログを追えば一目瞭然です」


 どよめきが広がる。

 数人の役員が小声で相談を始め、雰囲気は一気に傾きかけた。


 だが――相良は笑った。


「面白い。だがログなど、いくらでも改竄できる。若い者は技術に頼りすぎだな。会議で必要なのは数字ではなく、影響力だ」


 その言葉に呼応するかのように、数人の役員が無言でうなずく。

 相良の背後にある“人脈と恐怖”が、彼を支えているのだ。


 ――正面から崩すしかない。


 俺はゆっくりと立ち上がり、相良をまっすぐに見据えた。
















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