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闘神を宿す拳で、異世界を歩く  作者: 朝霧ネル
第一章 赤き刻印の目覚め
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刻まれた古語

薄く、意識が浮かび上がる。

最初に感じたのは、重さだった。

体が鉛のように重い。

瞼を開けると、天井がぼんやりと視界に入る。


……ここは。


黒瀬はゆっくりと体を起こそうとした。


「っ……」


胸の奥が軋む。

腕も、背中も、あちこちが痛む。

黒瀬は息を整えながら、ふと手を見る。


右手の甲。赤い刻印

細い文字のようなものが、腕に向かって伸びている。

肘のあたりまで、赤い古い文字のような線が刻まれていた。

黒瀬は眉をひそめる。


「……なんだ、これ」


前からこんなものがあったはずはない。

記憶を辿る。


それから――


腕が焼けるように熱くなって。

赤い光。ゴウラ声。


(……そのあと)


思い出せない。

まるで、そこだけ霧がかかったように。

黒瀬はしばらく腕を見つめていたが、小さく息を吐いた。


「……夢じゃ、ないよな」


その時。

扉が開く音がした。


「……黒瀬さん?」


キーナだった。


「よかった……!」


慌てて駆け寄る。


「目を覚ましたんですね!」


黒瀬は少し驚きながら笑った。


「はい、キーナさん……ここは?」

「ギルドの医務室です」


キーナは安堵したように息をつく。


「三日も眠っていたんですよ」

「3日……そんなに……?」

「ええ」


キーナは腕を組みながら、少し呆れたように言う。


「全身ぼろぼろでしたからね。医者の先生も、よく生きていたものだって……」


黒瀬は苦笑する。


「そうですか……」


キーナは少し表情を柔らかくした。


「あっ……レオンさん達とルヴィアさんは……!?」

「安心してください、みんな無事ですよ」


黒瀬はほっと息をつく。


「……そうですか、よかったです」

「あの後、調査のため迷宮は今、封鎖されています」

「ギルド上層部と、Sランクのパーティが調査に入っていて……かなり大きな問題になりそうです」


黒瀬は少しだけ眉を動かす。


「調査…ですか…」

「ええ。でも今は、黒瀬さんが無事だったことの方が大事です」


キーナは優しく笑った。


「皆さん、黒瀬さんが目を覚ますのを待っていたんですよ」

「そろそろ来る頃かと思いますよ」


その言葉通り。

コンコン、と扉が叩かれた。

勢いよく開く。


「黒瀬さん!!」


最初に飛び込んできたのはセラだった。

その後ろに、ミリアとレオン。

セラはベッドの横まで駆け寄る。


「よかったぁ……!!死んじゃったと思ったぁぁ!」

「三日も寝てたんだよ!?ほんとに心配したんだからぁぁ!」


黒瀬は少し困ったように笑う。


「すみません……迷惑をかけました」


ミリアが一歩前に出て、深く頭を下げた。


「黒瀬さん、本当に……よかったです……」


ミリアは顔を上げる。


「私たち、もうだめかと思っていました、レオンもセラも重傷でしたし……」


セラが横から口を挟む。


「そうそう!私、ほぼ死にかけてたから!」

「セラ……もう少し言い方というものが」


ミリアが呆れる。

レオンが苦笑する。


それから黒瀬を見る。


「黒瀬さん、ルヴィアさんがいなければ、私たちは死んでいました

本当に、ありがとうございます」


レオンはゆっくり頭を下げた。

黒瀬は困ったように頭を掻く。


「いや……そんな、俺も必死だっただけで……」


セラが腕を組む。


「なんかすごかったよ!黒瀬さんの腕赤く光ってなかった?

死にかけてて記憶が曖昧だけど!」


ミリアが頷く。


「まるで別人でした、何かに憑依されたような…呪いのような…」

「そう……なんですか?」

「覚えていないんですか?」


レオンが首をかしげる。

黒瀬は少し考える。


「腕が……すごく熱くて、身体に激痛が走って、そこから先が……」


ミリアとレオンが顔を見合わせる。

セラが前のめりになる。


「黒瀬さんってほんと何者なの!?さらに興味がわいてきたんだけど!」


その時。

扉が静かに開いた。


「……騒がしいと思ったら、起きてたのね」


ルヴィアだった。


レオンが立ち上がり、ミリアも頭を下げる。


「ルヴィアさん!お体はもう大丈夫なんですか?」


ルヴィアは軽く肩をすくめた。


「もう平気よ、そっちも元気になったみたいね」

「はい…灰牙の迷宮では、命を救っていただき、ありがとうございます。」


それから視線を黒瀬へ向ける。


「礼を言うなら、彼に」


レオン達は空気を読んで言う。


「それでは私たちは……ミリア、セラ、今日は帰ろう」

「えー!今来たばっかじゃん!」

「セラ、わがまま言わないの、黒瀬さん、今はゆっくり休んでくださいね」


帰ろうとした時。ルヴィアが言う。


「別に気を遣わなくていい」


レオン達が止まる。


「聞きたいことがあるだけ」


ゆっくり近づく。そして。

黒瀬の右腕を掴んだ。


「……え?」

「この刻印、それにこれは、古語…」


ミリアが覗き込む。


「こんなの……ありました?」


黒瀬は首を振る。


「いや……俺も起きて気づきました」

「あなた、一体何者なの?」

「私と同じこと言ってる!!」

「セラ!もう…」


黒瀬は苦笑した。


「ただの冒険者ですよ」

「言えない事情があるのね…でも、追及はしない。誰にも言いたくないことはある」


黒瀬は少し視線を落とす。


「正直、自分に何が起きてるのか、わからないんです」


ルヴィアは視線少しを逸らしながら言う。


「変な人ね、でも、あなたのおかげで私たちは助かった、礼を言わせて、ありがとう…黒瀬」


少しだけ声が柔らかくなる。

黒瀬は少し照れたように笑った。

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