表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青に滲む光  作者:
59/60

運命の一日の始まり(蒼太視点)

約束の時間。


 玄関で靴を履きながら、何度も時計を確認した。


(……そろそろ来るよな)


 今日は白咲さんが、僕の家まで迎えに来てくれることになっている。

 インターホンが鳴る気配はない。


 五分。十分。


 胸の奥が、じわじわと不安に侵食されていく。


「……遅いな」


 スマホを取り出してメッセージを送る。


『もうすぐ?』


 既読もつかない。


(寝坊……? いや、まさか)


 でも、昨日のことを思い出す。

 冬休み中、白咲さんはいつも課題を頑張っていて、寝不足気味だった。


(……嫌な予感する)


 気づけば、靴を履き直して外に出ていた。


「……白咲さんの家、行こう」


 じっと待っていられなかった。


 白咲さんの家に着いて、インターホンを押す。


 ――反応なし。


 もう一度、少し強めに押す。


「……」


(やっぱり、何かあった?)


 三度目を押そうとした、そのとき。


 ガチャ、とドアが開いた。


「っ……!」


 現れたのは、白咲さんだった。


 でも――


「み、水守くん!? ご、ごめん!!」


 パジャマ姿。

 髪は寝癖で跳ねていて、目はまだ半分眠そう。


(……え)


 一瞬、言葉を失った。


「わ、私……寝過ごしてて……っ」


 インターホンの音で起きたらしい。

 顔を真っ赤にして、慌てている。


(……すごい姿、見ちゃった)


 でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。


「だ、大丈夫だよ。事故とかじゃなくてよかった」


「ほんとにごめん……すぐ準備するから! 家、上がって待ってて!」


「え、いや……」


 断る間もなく、押し切られる。


 結局、リビングで待つことになった。


 数分後、ちゃんと身支度を整えた白咲さんが戻ってきた。


「……お待たせしました」


 さっきとは別人みたいだ。


「ううん。行こっか」


 家を出て、ショッピングモールへ向かう。


 歩きながら、白咲さんは何度も小さくため息をついていた。


「……なんで今日に限って寝坊なんて……」


「そんなに気にしなくていいよ」


 そう言ったけど、白咲さんの表情は少し沈んだままだった。


 ショッピングモールに着くと、冬休みの影響もあって、人で溢れていた。


「……すごい人」


「だね……」


 とりあえず、特に目的を決めずにぶらぶら歩く。


 服屋、雑貨屋、キャラクターショップ。

 ウィンドウを見るだけでも楽しいはずなのに――


(……人、多いな)


 歩くうちに、足が重くなってくる。


 気づいたのか、白咲さんがこちらを見る。


「……水守くん、ちょっと疲れてる?」


「え……あ、うん。少し」


「じゃあ、休憩しよ。どこか座れるところ探そう」


 たまたま空いていたベンチを見つけて、並んで腰を下ろす。


 人の流れを眺めながら、息を整える。


(……でも)


 こうして隣に座っているだけで、不思議と落ち着く。


 会話がなくても、気まずくない。


(……これって)


 胸の奥が、じんわりとあたたかくなる。


(好き、ってことなのかも)


 そう思った瞬間、自分でも少し驚いた。


 そのとき。


「……っ」


 小さな音。


 白咲さんが、慌ててお腹を押さえる。


「……ご、ごめん……」


「……お腹、空いてる?」


「うん……朝、ほとんど食べてなくて……」


 少し早いけど、昼ごはんにしよう、という流れになった。


 フードコートへ向かう。


 ――が。


「……満席だ」


「……だね」


 どこを見ても、座る場所がない。


 白咲さんは、少し申し訳なさそうに俯いた。


(……楽しめてないって、思ってるのかな)


 確かに、予定通りとはいってない。

 混んでるし、休憩も多い。


 でも――


(それでも、楽しい)


 一緒にいる時間そのものが。


 そのことを、どう伝えればいいのか分からないまま、

 僕は人で溢れるフードコートを見渡していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ