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57.最後は俺がやろう

「おしゃべりはお終いか?じゃあ魔石を大人しく……と言うつもりじゃねえようだな。」


剣を構えた俺を見てトーラスが気分悪そうに呟く。

こちらを見る視線に殺意が込められる。


「まぁどの道この後に都合の悪い奴には死んでもらおうと思ってたところだ。じゃあ死んでいいぞ。」


言うなり俺目掛けて飛びかかってくるトーラス。

その速度はやはり能力低下(デバフ)がかかっているようには見えない。

下位魔術の無効化だろうか?であれば上位魔術なら通るかもしれない。


「【筋力低下・零パワーダウン・ヴォイド】【敏捷低下・零アジリティダウン・ヴォイド】!!」


俺は後ろへ跳び、出来るだけトーラスとの距離を稼ぎながら上位魔術を放つ。

これも抵抗(レジスト)された感覚はない。

間違いなく効果を発揮している……はずだ。


だが、トーラスはそれすらをも意に介せず剣を振るう。

身体能力を極限まで低下させる魔術であるというのに、何事もなかったかのように長剣を振るってくる。

普通、【筋力低下・零パワーダウン・ヴォイド】がかかっていればそんなことは不可能だというのに。


「くっ!!」


剣から噴き出す炎があるせいでその剣を受け止められない俺は、ギリギリでその一撃を躱す。

だが、剣身そのものは回避できていても吹き出す炎が俺の肌を焼いていく。


このまま能力低下(デバフ)が効かない状態で攻防を続ければ、こちらがジリ貧になるのは明白だ。

何とか突破口を見つけなければならない。


何故能力低下(デバフ)が効かないのか。

それを解明する必要がる。


トーラスが続けて剣を振るう。

俺は肌を焼かれながらも致命的な一撃を貰わないように剣撃を躱し続ける。


その中で最初との僅かな違いに気が付く。


……僅かだが剣速が低下している。

全く能力低下(デバフ)効いていないという訳ではないのか?



「行くぞ!!【絶叫鼓舞(ウォークライ)】!!おおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」


そこへ『戦車騎士団』の【戦車(チャリオッツ)】が襲い掛かる。

俺を仕留めんとこちらへ集中していたトーラスは『戦車騎士団』が近づいてきていたことに気付いていなかったようだ。


「チッツ!!Bランク程度が調子に乗るな!!炎獄火炎剣(インフェルノソード)!!」


トーラスは【戦車(チャリオッツ)】を回避するのではなく、迎撃する手段を選ぶ。

トーラスの剣から先ほどまでとは比べ物にならない強さの炎が噴き出す。

紅蓮の炎はトーラス自身から放出される黒い靄と混ざり、赤黒く渦巻く。


それは俺のよく知っている炎獄火炎剣(インフェルノソード)ではなかった。

直感的に、絶対にくらってはいけないものだと分かる。


「くたばれ!!」


炎獄火炎剣(インフェルノソード)がシールドチャージ中のグレゴリオ達に向けて振るわれる。

グレゴリオ達にそれを躱す手段はない。


「グレゴリオ!!」


叫ぶことしかできない俺に向け、グレゴリオが笑ったような気がした。

アーメットヘルムをしているせいで表情は見えないのだが、不思議な感覚だった。


人の死に直面するというのはこう言う事なのだろうか。



「【神護防壁(ルーラーシールド)】!!」


炎獄火炎剣(インフェルノソード)がグレゴリオ達を捉えようとした瞬間だった。

バーンさんが防御魔術を発動させ、【戦車(チャリオッツ)】がその防壁に包まれる。


炎獄火炎剣(インフェルノソード)が防壁と衝突し、辺りに凄まじい熱風が吹き荒れる。

目を開いていることが困難な状況になり、思わず俺も目を覆う。


ゴウン


「がはっ」


直後に鈍い音と共に誰かが肺の空気を吐き出す声が聞こえる。


俺が回復した視界で状況を確認すると、グレゴリオ達が並んで立ち、その先にトーラスが転がっていた。

神護防壁(ルーラーシールド)】の守りが入って炎獄火炎剣(インフェルノソード)を耐えれたことで【戦車(チャリオッツ)】がさく裂したようだ。


「ふはははは!!これが新生『戦車騎士団』だ!!補助魔術で固められた我らを止めることは出来ん!!」


グレゴリオが剣を掲げる。

大声で笑いながら。


若干こいつが死ぬと思って心揺さぶられたのが憎い。

グレゴリオはどこまで行ってもグレゴリオだった。


「っ!?グレゴリオ!!」


グレゴリオの背後、吹き飛ばされていたトーラスからより一層黒い靄が立ち込めていた。

まるで何かに操られているかのように不自然な動きで立ち上がる。


「まだ力が足りない!!もっと!!もっとだ!!」


トーラスが叫び、勢いよく靄が噴き出す。



トン


「あ゛?」


トーラスが不思議そうに自分の足を見る。


左足の甲の上から矢が突き刺さり、地面と縫い付けていた。


反射的に後方を見ると、そこには膝立ちで矢を放った姿勢のままのレイラがいる。

そして、そのレイラの前ではイリアナが岩石巨神剣(アトラスソード)を形成していた。


「あたし達も居るんだよ!!岩石巨神剣(アトラスソード)!!」


イリアナが岩石でできた巨剣をトーラス目掛けて振り下ろす。

足を地面と縫われているトーラスはそれを回避することはできない。


とっさに長剣を掲げるようにして受けようとするが、重力の影響を受けないとはいえ多大な質量を有する巨剣を受けれるわけがない。

長剣はその勢いを受けきれず、あっさりと真っ二つになる。


そして岩石巨神剣(アトラスソード)がトーラスの身体にめり込んだ。


「がはぁ!!」


巨剣はそれでも止まることなく、トーラスごと地面に突き刺さる。

当たりには地震かと紛うような振動が伝わった。


そして魔剣が解除されると、そこには大きくくぼんだ地面に手足が変な方向に折れ曲がったトーラスが横たわっていた。

見た目はかなりエグイことになっている。


「……最後は俺がやろう。」


長剣ではなく、腰から鉈を取り出して一歩前へと出る。

食料にする動物の解体用のもので、骨も裁断できるものだ。


俺は完全に意識を失ったトーラスの前に立ち、彼を見下ろす。

色々と思う所がないでもないが、まずは【禁珠】を取り除く必要がある。

俺は鉈を持つ手に力を込める。


そして俺は鉈を振り上げ、そしてトーラスの腕を目掛け、振り下ろした。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非、評価・ブックマークをお願いいたします。

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