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能力を認められなかった補助魔術師、Aランクパーティを追放されて新人冒険者の育成を始めました。  作者: 江越有司
第2章.『紅蓮の剣』

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51.始まるみたいですよ

オルティアの街を出た俺達はスフィカの森の中を進む。

総勢30名を超える大部隊だが、森の中は先日と同じように静まり返り、魔物の姿がないため大きな問題なく進んでいる。


「不気味だな。」


『紅蓮の剣』の重装騎士のガイアがつぶやく。

彼もこの森の異様な雰囲気を感じているようだ。


道案内として先行する俺達の後ろには『紅蓮の剣』が居る。

『紅蓮の剣』にの後ろにBランク4のパーティが続き、殿は『戦車騎士団』が務めている。


「この程度でビビってんじゃねぇ!!」


ガイアの呟きに喝を入れるトーラス。

この間、南公園で会った時にガイアをパーティから外すような発言をしていたが、彼のパーティ内での立場は今あまり良くないのかもしれない。

俺が抜けたことによってカーストが変化したのだろう。

まぁ俺が気にすることではないが……


(なんかヤな感じだね。同じパーティメンバーなのにさ。)


イリアナが俺に近づき、『紅蓮の剣』に聞こえないように小声で話しかけてくる。


(今パーティ状態が良くないという話も聞くから、その影響もあるんだろう。)


(オルカさんを辞めさせたからなんだから、自業自得だよね。)


「そこ!!作戦中にいちゃついてんじゃねぇぞ!!」


俺とイリアナが小声で会話しているとトーラスから怒号が飛ぶ。


イリアナは肩をすくめて俺から少し離れた。

言い返すつもりは無いようだ。



その後も全く魔物と会うことなく森の奥へと進んでいく。

やがて、木々の先にゴブリンの作った簡易な建物が見えてきた。

集落(コロニー)だ。


俺達は足を止め、後続の冒険者パーティが揃うのを待つ。

『戦車騎士団』が着いたところで指揮官であるトーラスから指示が出る。


「この距離を保ってコロニーを包囲していく。この位置を6時として『戦車騎士団』はここから突入。残りの6組は半々に分かれて3時方向、9時方向に迂回。俺達『紅蓮の剣』が12時位置についたら攻撃開始。広範囲殲滅魔術が発動したら突っ込め。」


指示自体はまともなのでどのパーティにも異論はないようだ。


「いいか?第一目標はゴブリンロードの討伐。ついでゴブリン共の駆逐だ。一匹も逃がすなよ?作戦開始だ。」


そう言ってトーラスはBランクの冒険者パーティ2組を引き連れて反時計回りに移動を開始した。


俺達も残りのBランクパーティ2組と時計回りに移動を開始する。

12時の位置に『紅蓮の剣』、6時の位置に『戦車騎士団』なのでこちら側の配置は7時半、9時、10時半の位置になる。

移動しながら3パーティで相談した結果、俺達は9時の位置に配置となることが決まった。


7時半の位置でBランクパーティ1組と別れ、9時の位置まで来ると今度は俺達が足を止める。

10時半の位置を目指して進んでいくもう一組のBランクパーティがやがて見えなくなる。


「なんであのパーティは『紅蓮の剣』に近い所を選んだのかな?仲が良さそうには見えなかったのに。」


イリアナがBランクパーティの消えた先に視線を向けながらつぶやく。


「冒険者ってのは大体合理的なんだよ。もし自分たちのパーティに問題が発生した場合、傍に強いパーティが居るのとそうでないのとでは生存確率が変わる。だから『紅蓮の剣』の横を選んだんだろ。そこに好き嫌いの感情は含まれてないさ。」


「え?じゃあ、あたし達が一番危ないんじゃ……」


「そうとも言えるな。まぁ俺はこっちの方が気楽でいいが。」


実際、自分が脱退させられたパーティと仲良く肩を並べて共闘と言うのは違和感がある。

『戦車騎士団』となら共闘は出来るが、グレゴリオがうるさいしな。

結局、この位置が一番気楽にできると思っている。


「私はオルカさんの事を信頼していますから、それだけで十分です。」


レイラが真っすぐ俺を持てそんな恥ずかしいことを言ってくる。


「あ、ズルい!!あたしもオルカさんのこと信頼してるから!!」


イリアナが謎に張り合っているが、この子には緊張と言うものがないのだろうか。

俺はイリアナにジェスチャーで声のトーンを下げるように指示する。

何せここはもうゴブリンのコロニーの傍なのだ。

作戦行動前に包囲が露見しまいかねない。

イリアナはしまったとでも言わんばかりに両手を口で覆う。


俺は木陰からコロニーの様子を窺うが、目立った動きはない。


「大丈夫そうだな。」


「うぅ……ごめんなさい。気を付けます。」


少し肩を落としているイリアナ。

作戦行動前にテンションが下がるのはあまり良くない。


「元気がいい所はイリアナの魅力の一つさ。慎重に行動している時にさえ気を付けてくれればいい。」


俺がそう言うとイリアナはがばっと顔を上げる。

だが、元気を取り戻したというよりかは何かテンパっているように見える。

顔も少し赤い。


「どうした?大丈夫か?」


俺が声を掛けるとイリアナは大きく首を縦に振る。

本当に大丈夫か?


「オルカさん、イリアナは大丈夫です。それより、始まるみたいですよ。」


レイラがコロニーの方向へ視線を固定したまま言う。

俺もコロニーの方向へ視線を戻す。


コロニーの上空にはいつの間にか黒色の球体が浮かんでいた。

よく見ればそれが雷のようにバチバチと爆ぜているのが分かる。


レティスの使う広範囲殲滅魔術の一つ、【黒雷戦鎚(トールハンマー)】だ。

コロニー殲滅戦、開始です。

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