16.なんで服を脱がしてるの??
side.イリアナ
日がもうすぐ落ちる。
私たちはギルドを出て『まぐまぐ亭』へと帰ってきていた。
オルカさんは寄るところがあると言って『まぐまぐ亭』の前で別れた。
夕食を取った後で装備品のメンテナンスについて教えてもらう予定だ。
『まぐまぐ亭』に入ると、受付には巨体のベリルおじさんがいて何かの雑誌を読んでいた。
左手で雑誌を読み、右手はとても重そうな重りを持ってひじ先だけ上下させるトレーニングをしていた。
ベリルおじさんはとても強いとオルカさんが言っていたが、分かる気がする。
今使っている重りなんか、下手したらあたしより重そう。
そのベリルおじさんは戻ってきた私達に一瞬視線を向けただけですぐに雑誌に視線を戻す。
「ただいま!!」
とりあえず私は元気に挨拶をする。
人間関係を築くにはまず挨拶からと言うのはどこの国でも常識だろう。
「ただいま戻りました。」
続けてレイラも挨拶をする。
「……おかえり。」
ベリルおじさんは再び視線をこちらに向けて返事をしてくれた後、また雑誌に視線を戻す。
と、今度は受付の奥からリンカさんが出てきた。
挨拶の声が聞こえたんだろう。
「あらお帰りなさい。夕飯は準備できてるよ。」
「ありがとう!!汗だけ流したらいただきます!!」
「はいよ。……急がないからゆっくり準備してきな。」
あ、これはバレてるな。
「ありがと!!」
それだけ言って部屋へと向かう。
そして室内に入った瞬間、あたしは床にペタンと座り込んでしまった。
レイラが特に驚く風もなくあたしの横に片膝をついて顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?」
「うん……宿まで戻って来たので緊張が解けちゃったかな?足が言う事聞かない。」
そう言ってあたしはニシシと笑う。
分かっている。
これは死を身近に感じた恐怖とかっていう感情が体の自由を奪っているんだ。
俗に言う腰が抜けたってやつだ。
……こんな時間差で来るとは知らなかったが。
さっきから足ががくがくしてたからリンカさんには見破られてったぽい。
レイラが部屋の鍵をかけてあたしの鎧を外していってくれている。
「ありがと。」
「いいよ。」
短いやり取り。
レイラとは幼馴染になる。
元々家同士家族ぐるみの付き合いがあり、共に三女と言う微妙な立場であったため2人で家を出たという経緯がある。
私たちは貴族家の出身なのだ。
あのまま家に留まっていても、家督を継ぐ立場にない女性は政略結婚に使われるのが常だ。
幸い、私たちの親は子の幸せを願ってくれている人たちだったが、位の高い貴族ではないため高位貴族からそう言った打診があると断るのは難しい。
私たちを襲ってきた養成所同期の二コラと言う男は自分が貴族家の出身だと豪語していた。
あれは冒険者を下に見てマウントを取っていたんだと思う。
その恩恵が受けられるかという下心のある冒険者を従えて威張り散らしていた姿に良い感情を持つわけはない。
でも、もし私たちが貴族家の出身で二コラの家より爵位が低いことがバレれば、家を通じてアプローチされるとあんなのと結婚する未来も出てくるかもしれないのだ。
それは嫌だった。
なので私たちは自分たちで生きていく道を選んだのだ。
「少ししたら落ち着くと思うから先にシャワー浴びちゃってて?」
「わかった。」
そう言いながらもレイラはあたしの服を脱がしていく。
え?
「レイラ?なんで服を脱がしてるの??」
レイラは無言であたしの服を脱がしていく。
もう上半身は裸にされている。
そしてそのまま下半身に手を伸ばしてくる。
「ちょっとレイラ!?どうしたの!?」
「私を心配させた罰。」
どうやらあたしが無謀にもオーガに切りかかって返り討ちにされたことを言っているようだ。
それは悪かったと思っている。
でも仕方ないよね?
オルカさんが1人で相手するなんて無理だと思ってたんだから。
パーティメンバーを1人戦わせて見てるだけなんてあたしには出来なかったんだ。
「ごめん。でも……」
「分かってる。私でも同じ行動取ってたと思うから。」
ん?
じゃあ何の罰?
「頭では理解してるけど、心情的には許せないの。死んじゃったかと思った。」
「……ごめん。」
言いながらあたしは完全に裸にされてしまった。
このままシャワールームに連れて行ってもらえるのだろうか。
「よし、オルカさん呼んでくる。」
「え?………ええええ!!??冗談!?冗談だよね!?」
「大丈夫。これは罰だから。……ご褒美になる?」
「ならないから!!」
「ふふふ。イリアナのそういう顔が見たかったの。なんていうか、嗜虐心がくすぐられる感じがあるわ。」
「止めて!!あたしをこのまま置いてドアに向かわないで!!」
レイラがドアノブに手を伸ばす。
冗談だよね?ね?
しかし、レイラがドアノブに手をかける前にそのドアがノックされた。
レイラもこれには予想外だったのかビクッとして手を引っ込めている。
あたしは反射的に大事な所を手で覆い隠す。
「オルカだ。……大丈夫か?」
ドア越しにオルカさんの声が聞こえる。
「ダメ!!あ、いやダメじゃない!!じゃなくて大丈夫!!」
もう自分が何を言っているか分からないがこういう時は勢いだ。
「そうか?……俺も部屋に居るから何かあったら言ってくれ。」
そう言ってドアから離れていく足音が聞こえる。
あたしはそのまま床に突っ伏した。
レイラがニヤニヤしているのが視界の端に映る。
許すまじ。
この借りはいつか返すと心に誓った。
レイラさんはS気がありますね。
イリアナさんおリベンジはあるのか?
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