7話 西の森
●主人公視点
はい。四日目の修羅です!
今日は、ちょっと見せたいものがあります。
昨日は集落を見つけて、職人に防具を頼んだところで終わりました。
あれから一度ログアウトして、今日は少し早めに入ってみたわけですが――。
「……よし。配信開始っと」
〈こんにちは〉
〈きた〉
〈今日は何作る?〉
〈まだ腰巻き?〉
「最後の人、よく聞いてくれました」
俺は少し下がった。
配信用の視点を、自分の全身が映る位置へ動かす。
両手を腰に当て、胸を張った。
「どうですか!」
胸には、灰色の胴当て。
腹の部分は柔らかい革でつながれていて、肩と脇には腕を動かせるだけの余裕がある。
そして、足には靴。
二足。
左右、ちゃんとそろっている。
〈おお!〉
〈服着てる!〉
〈文明人になった〉
〈靴まである〉
「そうなんですよ。靴です」
片足を上げて見せる。
足首のところで紐を結ぶ、革の靴だ。
底は厚く、つま先も覆われている。
歩いても、小石が直接刺さらない。
これが、思っていた以上にありがたい。
「皆さん、石の上を歩いても痛くないんです」
〈知ってる〉
〈よかったなぁ〉
「俺は今日、改めて知りました」
その場で二、三歩、足踏みをする。
少し硬い。
裸足のときより、足が大きくなった感じもする。
でも、悪くない。
胸の前で腕を交差させる。
上へ伸ばす。
しゃがむ。
短剣を抜く動きを確かめて、また戻した。
「腕も動きます」
〈昨日は動かなかったもんな〉
〈職人ってすごい〉
「すごいです。本当に」
自分で巻いたときは、脱ぐこともできなくなった。
同じ猪の皮なのに、こうも違うものか。
作ってくれた職人には、受け取るとき何度も動かされた。
腕を上げろ。
腰をひねれ。
しゃがめ。
きつい場所を聞かれて、紐の位置を直される。
ただ完成品を渡されるだけだと思っていたので、少し驚いた。
おかげで今は、どこも食い込んでいない。
「というわけで、本日の装備です」
【右手:岩背猪の牙短剣】
【左手:岩背猪の牙短剣】
【胴:岩背猪の革胴当て】
【足:小鬼の革靴】
【首飾り:始祖鬼の首飾り】
〈かなり冒険者っぽくなった〉
〈腰巻きは?〉
「ありますよ。必要なので」
〈そりゃそう〉
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視聴者数は、もう百人を超えていた。
昨日より早い。
うれしいけど、まだ慣れない。
「初めての方も、ありがとうございます。今日は南の集落からです」
背後では、朝の支度が進んでいた。
薪を抱えて歩く小鬼。
鍋をかき混ぜる小鬼。
家の前で、靴を履くのに苦労している子供。
俺のほうを見ていたので、軽く手を振る。
振り返してくれた。
〈あの子、昨日いた?〉
〈修羅より先に服着てた子だ〉
「その覚え方、やめません?」
昨日は、ちょっと気まずかった。
今日は胸を張って挨拶できる。
……服って大事だな。
「さて、今日はですね――」
「修羅」
声をかけられて、振り返った。
ガドが立っていた。
槍を片手に、肩から袋を下げている。
「おはようございます」
「もう起きてたか。着られたんだな」
「はい。今日はちゃんと動けます」
「見れば分かる」
〈ガドだ〉
〈言い方w〉
ガドは俺の足元まで見て、短くうなずいた。
「これから狩りか?」
「そのつもりです。袋の材料も、足りてないので」
「あいつに聞いた。お前、袋も欲しいんだってな」
「切実に」
猪の皮を抱えて、ここまで歩いた昨日の苦労は忘れていない。
片手がふさがる。
重い。
引きずると傷む。
何か襲ってきたら、まず荷物を置くところから始まる。
背負えるだけでも、随分違うはずだ。
「なら、工房に寄れ。俺も用がある」
工房では、昨日と同じ職人が台へ向かっていた。
俺が顔を出すと、まず胴当てを見る。
「当たるところは?」
「ないです。動きやすいです」
「そうか」
それだけ言って、手元へ視線を戻した。
俺は少し迷ってから、頭を下げる。
「ありがとうございます」
「礼は受け取った。今度は何だ」
「袋の材料、もう一頭分あれば足りますか?」
職人は、そばにあった袋を持ち上げた。
革の本体に、幅のある肩紐。
昨日、ガドが使っていたものより少し大きい。
「何を運ぶ」
「肉と、皮と、牙……ですかね」
「重いものばかりだな」
袋の口を開き、縫い目を俺に見せる。
「皮は猪でいい。だが、縫う糸も要る。荷を詰めるなら、丈夫なやつだ」
「糸……」
何となく、嫌な予感がした。
俺が隣を見ると、ガドもこちらを見ていた。
「俺は、そいつを採りに行く」
「……蜘蛛ですか?」
「ああ」
〈来た〉
〈昨日の話だ〉
〈上も見ろって言われたやつ〉
俺は工房の外へ目を向けた。
柵の向こう。
川とは反対側に、木々が重なっている。
西の森だ。
昨日は、近づく前に情報をもらえてよかったと思っていた。
もう行く話になるとは。
「採るって、巣からですか?」
「使える糸を選んでな。張ってあるもの全部が使えるわけじゃない」
「……触ったら、来ません?」
「来る」
即答だった。
俺はガドの顔を見た。
「ですよね」
「だから、触る場所を見ろ」
そう言って、ガドは肩の袋を持ち直した。
一人で行くつもりらしい。
俺は二本の短剣へ目を落とす。
今度は猪と違う。
突進を避ければいい相手ではない。
相手を見つける前に、こちらが動けなくなるかもしれない。
ただ、道を知っているやつが目の前にいる。
「……一緒に行ってもいいですか?」
ガドが俺を見る。
「糸が欲しいんだろ」
「はい。それと、森の歩き方を知りたいです」
ガドは少し考えた。
それから、俺の靴へ視線を落とした。
「勝手に走るな。呼ばれたら止まれ」
「分かりました」
「あと、見つけてもすぐに切るな」
「……分かりました」
さっきまで、短剣で切りながら進めばいいかと思っていた。
言われてよかった。
〈今、やろうとしてただろ〉
「まだ何もしてないです」
職人が、短い棒をガドへ差し出した。
先が二股になっている。
ガドは受け取り、袋の横へ差した。
糸を採る道具だろうか。
俺が見ていると、職人が口を開いた。
「牙の刃を、糸ごとねじるなよ」
「ねじると?」
「折れるか、取られる」
俺は右の短剣を、そっと鞘代わりの革へ収め直した。
「……大事に使います」
◇
集落の西の出入口を抜ける。
ガドの後ろについて、森へ向かう。
靴が落ち葉を踏む音。
胴当てが体に触れる感触。
どちらも昨日まではなかったものだ。
短剣だけ持って猪を追いかけていたときより、少し落ち着いて歩ける。
「今日は、初めての同行者がいます」
声を落として、配信へ話しかける。
〈頼もしそう〉
〈ちゃんと言うこと聞くんだぞ〉
「分かってますよ」
「修羅」
俺はすぐに止まった。
前を歩くガドも、立ち止まっている。
槍の先が、斜め上を指していた。
木と木の間。
何もないように見える場所に、細い光が一本走る。
俺は少し顔を動かした。
光が消える。
戻すと、また見える。
「……もうあるんですか」
「ある」
ガドが、俺の足元を指した。
落ち葉のすぐ上にも、一本。
あと二歩、進んでいたら触っていた。
〈見えなかった〉
〈足元にもあるのか〉
俺はゆっくり息を吐いた。
森の奥は、まだ明るい。
集落の柵さえ、振り返れば見える距離だ。
それなのに、もう罠がある。
「……皆さん」
俺は短剣の柄へ手を添えた。
「今日の探索、思ってたより時間かかりそうです」
頭上で、かさりと葉が揺れた。
●主人公視点
頭上で、かさりと葉が揺れた。
俺は顔を上げかけた。
その肩を、ガドがつかむ。
「ゆっくりだ」
声が低い。
俺はうなずき、目だけを先に動かした。
枝。
葉。
木の幹に沿って伸びる、黒いもの。
……脚だ。
節のある長い脚が、幹を抱えている。
その奥に、丸い胴体が見えた。
「……いた」
蜘蛛だった。
脚を広げたら、俺の背丈くらいありそうだ。
茶色と黒のまだら模様で、止まっていると樹皮に紛れる。
これ、知らずに歩いていたら絶対見落としてたな。
〈でかい〉
〈そこにいたのか〉
〈右上、ずっと脚だった?〉
俺は短剣を抜いた。
ガドが槍を少し持ち上げる。
「まだだ。足元を覚えろ」
足元。
そうだ。
前に一本。
左にも、光る糸。
右側は木の根が盛り上がっているが、その手前までは何も見えない。
俺は体を傾け、光の当たり方を変えてみた。
今度は、膝の高さに一本見つかった。
「……多いですね」
「見えたものだけだと思うな」
嫌なことを言う。
でも、そのとおりなのだろう。
俺は歩いてきた場所へ、一歩だけ下がった。
蜘蛛の前脚が動いた。
幹から離れる。
その体が、ふっと浮いた。
「下がれ!」
ガドの声で、俺はもう一歩引いた。
蜘蛛が落ちてくる。
地面へ、ではない。
腹から伸びる一本の糸にぶら下がり、こちらへ振れてきた。
「うわっ!」
黒い脚先が、顔の前を通った。
ガドの槍が伸びる。
蜘蛛は脚で柄を押し、体をひねった。
突きは胴体を外れたが、その勢いで蜘蛛が横へ流れる。
俺たちから離れたところに、脚が着いた。
「……振り子かよ」
〈上から来るだけじゃないのか〉
〈今の怖い〉
蜘蛛は低く構えていた。
こちらを向いた頭の下で、牙が動いている。
近づきたくない。
けど、短剣は近づかないと届かない。
毎回、武器選びを間違えた気分になるな。
「俺が前を見る。お前は横だ」
ガドが言った。
「右と左、どっちです?」
「動けるほう」
俺は足元を見る。
右なら、木の根の手前まで行ける。
「右、行きます」
ガドが槍を突き出した。
蜘蛛が退く。
俺は右へ二歩。
その動きに合わせるように、蜘蛛も向きを変えた。
脚が多い。
正面を外したつもりでも、すぐにこっちを向く。
「……猪より回るの早くない?」
ガドの槍が、蜘蛛の前脚をたたいた。
蜘蛛の体がそちらへ向く。
今だ。
俺は低く踏み込み、手前の脚へ右の短剣を突き出した。
硬い。
刃先が表面を滑った。
関節の隙間までは、届いていない。
蜘蛛の脚が上がる。
俺は腕を引いた。
すぐ目の前へ、鋭い脚先が突き立つ。
落ち葉が跳ねた。
「っ!」
もう一本来る。
左の短剣を構えたが、受け止めるのはやめた。
あんな細い先端に体重を乗せられたら、どうなるか分からない。
俺は後ろへ逃げた。
靴の先に、何かが引っかかった。
「……あ」
足が止まる。
糸だ。
落ち葉ごと、つま先が引っ張られている。
〈足!〉
〈絡まった〉
反射的に、強く引こうとした。
「引くな!」
ガドの声。
俺は止まった。
蜘蛛がこっちへ来る。
脚が、落ち葉の上を滑るように動く。
速い。
俺は足を上げたまま、短剣を振り下ろしかけた。
けれど、糸の向こうには自分の靴がある。
雑に切ったら、足ごとやる。
「頭を下げろ!」
しゃがむ。
頭上を、槍の柄が通った。
蜘蛛の前脚を横から払い、進路をずらす。
その間に、ガドが俺の隣へ踏み込んだ。
腰の小刀が、靴先のすぐ前を走る。
一本切れた。
まだ、動かない。
もう一本。
「戻れ!」
俺は体を後ろへ引いた。
足が抜ける。
今度こそ、来た道まで戻れた。
「……すみません」
「謝るのは後だ」
ガドは蜘蛛から目を離していなかった。
俺も短剣を構える。
心臓が速い。
靴の先には、白い糸と落ち葉が残っていた。
履いていてよかった。
裸足だったら、今ごろ足の指に巻きついていたかもしれない。
ガドが半歩下がった。
俺の前へ出すぎない位置。
蜘蛛は、すぐには追ってこなかった。
俺たちと木の間を、横に動いている。
「……あいつ、糸のあるほうに寄せてません?」
「ああ」
ガドが短く答えた。
「だから追うな。こっちへ出させろ」
俺は周囲を見た。
さっきまで蜘蛛の体ばかり見ていた。
でも、戦う場所そのものが違う。
猪のときは、岩を俺が使った。
今度は、相手が森を使っている。
「……なるほどね」
〈何か分かった?〉
「ここ、向こうの得意な場所です」
〈それはそう〉
「分かってても、踏むんですよ」
俺の靴が、その証拠だ。
ガドが槍を突く。
蜘蛛は木の近くへ下がった。
逃げたからといって追わない。
俺たちも、少し下がる。
一歩ずつ、足元を確かめながら。
蜘蛛が止まった。
前脚が持ち上がる。
槍先を避けるように、また幹へ登り始めた。
細い糸が、腹から伸びている。
「ガド。さっきみたいに来ますかね」
「たぶんな」
「……俺、少し後ろにいます」
ガドが横目で俺を見た。
俺は足元を指し、立つ場所を示す。
そこは、来るときに二人で踏んだ場所だ。
ガドは一度だけ、うなずいた。
「待てよ」
「はい」
蜘蛛が幹から離れた。
糸が張る。
体が下へ落ち、こちらへ振れてくる。
ガドは後ろへ踏み出した。
突くふりをして、槍先を引く。
蜘蛛の前脚が、何もない空間を挟んだ。
「今だ!」
俺はガドの横から踏み込んだ。
振れてきた蜘蛛の、体の下。
地面に脚が着く前の、短い時間。
節と節の間へ、右の短剣を入れる。
今度は、刃が通った。
すぐに抜く。
横へ流れた蜘蛛が、片側の脚をもつれさせた。
ガドの槍が、その体を地面へ押さえる。
「長くは持たん!」
暴れる脚が、落ち葉を掻いた。
俺は牙のある正面を避け、傷つけた側へ回った。
無理に胴体を切り裂こうとせず、脚の付け根を狙う。
右で突く。
戻す。
伸びてきた脚をかわして、左。
短剣術の補助があっても、怖いものは怖い。
刃先がぶれそうになるたび、握りを直した。
蜘蛛が大きく身をよじる。
槍の穂先が外れかけた。
俺は一度、引いた。
ガドも柄を引き戻す。
蜘蛛が立ち上がろうとしたところへ、槍がもう一度伸びた。
体が止まる。
その隙に、俺は側面から短剣を突き込んだ。
手応えが変わった。
脚の動きが、急に乱れる。
抜いて離れる。
まだ、近づかない。
ガドも槍を構えたまま待っていた。
やがて、蜘蛛の脚がゆっくり折り畳まれた。
【経験値を獲得しました】
【レベルが上がりました】
「……っはぁ」
息が漏れた。
俺は足元を見てから、その場にしゃがんだ。
今度は、糸のない場所だ。
〈倒せた!〉
〈ガドありがとう〉
〈連携できてた〉
「……助かりました」
ガドへ顔を向ける。
「一人だったら、足つかまったところで終わってました」
「初めは、みんな踏む」
「ガドも?」
「昔な」
ガドは小刀で、槍に絡んだ糸を落とした。
「だから、お前にも言った」
「……はい」
〈経験者の忠告〉
〈次は踏むなよ〉
「善処します」
ガドがこちらを見る。
俺は慌てて言い直した。
「ちゃんと見ます」
戦闘が終わっても、糸は消えなかった。
ガドは二股の棒を取り出すと、張られた糸を一本ずつ確かめていく。
「こっちは触るな。くっつく」
「こっちは?」
「巻ける。端を切るから、そこを持て」
俺は言われた場所を持った。
指に張りつかない。
同じ巣なのに、随分違う。
ガドが小刀で端を切り、二股の棒へ巻き取っていく。
俺も教わりながら、もう一方の端を支えた。
「……袋一つ作るのも、大変ですね」
「その袋を使えば、次は多く運べる」
俺は、ガドの肩の袋を見た。
そうか。
これで終わりじゃない。
一度作れば、その後の狩りも、素材集めも楽になる。
「……頑張るか」
〈今度は糸集め配信〉
〈巻き取るのちょっと気持ちよさそう〉
「触っていい糸だけですよ。俺はまだ、自分で判断できないので」
少しずつ、棒に白い糸が重なっていく。
ガドは巣を全部壊さず、採れる場所を選んでいた。
俺も動く前に、足元を見る。
それから、頭の上。
手間だけど、さっきの怖さを思えば省く気にはならなかった。
次の糸を探して顔を上げたとき、木々の奥に灰色のものが見えた。
最初は、岩だと思った。
でも、角がある。
まっすぐな縁。
重ねられた石。
「……ガド」
声を落とす。
「あそこ、何かあります」
枝の向こう。
斜面へ半分埋まるように、石造りの入口が口を開けていた。
上の一部が崩れている。
左右の柱には、白い糸が何重にも巻きついていた。
奥は暗く、見えない。
けれど、入口から続く糸の量は、今倒した一匹の巣とは比べものにならなかった。
〈建物?〉
〈奥、穴になってる〉
〈ダンジョンじゃね?〉
俺は立ち上がりかけた。
ガドの槍が、目の前を横切る。
「今日は、ここまでだ」
「……見に行くだけでも?」
「糸を採りに来たんだろ」
ガドが、棒に巻かれた糸を示した。
それから、俺の靴。
まだ取りきれていない白い切れ端が、つま先についていた。
俺は口を閉じた。
……そうでした。
さっき、足を取られたばっかりでした。
「分かりました。今日は戻ります」
〈えらい〉
〈準備してから行こう〉
巻いた糸を受け取り、ガドの後ろへつく。
帰り道を確かめながら、それでも一度だけ振り返った。
木々の間に、石の入口が見える。
あの奥に、主がいるのだろうか。
倒せば、俺のダンジョンになるのか。
まだ、分からない。
ただ、確かめたい場所はできた。
「……皆さん」
ガドに聞こえないくらいの、小さな声で言った。
「袋ができたら、次に持っていく物、考えましょうか」
〈行く気だ〉
〈知ってた〉
俺は笑って、今度こそ前を向いた。
まずは、この糸を無事に持って帰るところからだ。
帰りも、ガドの後ろを歩いた。
足元を見る。
木の間を見る。
それから、頭の上。
さっきまで聞き流していた葉の音が、妙に気になる。
風が吹く。
枝が揺れる。
少し遅れて、右側で何かが擦れた。
「……ガド」
俺は足を止めた。
「右の木、何かいません?」
ガドが槍を構える。
幹の裏から、細い脚が一本のぞいた。
「気づいたか」
その声と同時に、表示が浮かぶ。
【スキル〈索敵 Lv.1〉を獲得しました】
「……お」
〈新スキル?〉
「索敵、覚えました」
木を見る。
蜘蛛の姿が透けて見えるわけではない。
どこに何匹いるかも、分からない。
けれど、枝を擦る音へ自然と意識が向く。
ガドがゆっくり歩き出した。
「そいつの糸には触るな。そのまま通るぞ」
「……倒さないんですか?」
「必要な分は採った」
俺は手元の糸を見て、短剣から手を離した。
蜘蛛を警戒しながら、ガドの後を追う。
「見つけたからって、全部戦わなくてもいいんですね」
〈生きて帰るためのスキル〉
「……それ、大事です」
今日はもう、足をつかまれたくない。
【ステータス】
プレイヤー名:修羅
種族:小鬼〈こおに〉
種族Lv:13→18【UP!】
最大HP:137→165【UP!】
最大MP:28→33【UP!】
最大スタミナ:145→170【UP!】
筋力:27→32【UP!】
耐久:21→26【UP!】
敏捷:25→30【UP!】
魔力:5
器用:10
獲得経験値:+10%【装備】
※最大HP:基礎値150+装備補正15=165。
【種族特性】
〈怪力の芽〉
体格より大きな武器を扱える。重さに応じてスタミナを消費する。
〈健啖〉
食事によるスタミナ回復量が多い。
【スキル】
〈打撃 Lv.1〉
棍棒や拳による攻撃を補助する。
〈踏ん張り Lv.1〉
足を止めて構えると、押し倒されにくくなる。
〈短剣術 Lv.1〉
短剣を扱う際の刃の向きや動作を補助する。
〈索敵 Lv.1〉【NEW!】
周囲の物音や動きから、敵の気配を捉える補助スキル。敵の名前・能力値・正確な位置は分からない。
【装備】
右手:岩背猪の牙短剣
左手:岩背猪の牙短剣
胴:岩背猪の革胴当て
足:小鬼の革靴
首飾り:始祖鬼の首飾り
【始祖鬼の首飾り】
・最大HP+10%
・獲得経験値+10%
≪封印効果≫
???




