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「食い過ぎじゃないか?大丈夫なのか?」
「ピピィ!」
ミリィさんと、河野さん以外のコスプレしていた人達は、着替え直してから再度、大食堂に集合し食事を始めた。
珊瑚は、かれこれ20人分の食事を平らげている。
食べ過ぎて、具合が悪くならないか心配になる。
「・・・その子は成長期、だから問題無い」
リリーさんから、説明が入る。
「ピィ!ピピィピィ!」
「・・・美容と健康の為に、この程度にしておくと言ってる」
「そうね、ピィちゃんは、ちゃんと自己管理が出来る偉い子ね!」
カオリが珊瑚の隣で、口元を拭いてやりながら言った。
「ピィ、ピィピピィ、ピィピピィ!」
「・・・成長期だからと言って、食べ過ぎるのは良くない。必要な栄養バランスを考えた上で、食事を取る事が大切。と、言っている」
うん、凄く考えてらっしゃる。
余計な心配だったかな。
「ピィ、ピピィピィ!」
「・・・心配してくれて、有難うパパ。と、言っている」
リリーさんが、通訳してくれる。
「うん、まぁそれはな?保護者だから、当然と言うか・・・」
「リョウ〜、照れてる〜」
「照れてますね」
「パパ、照れてる」
マリーさん、ゴモリーさん、ネアさんに茶化される。
「リョウ、顔がニヤけてる」
カオリが、俺の顔を見て微笑む。
人は何故、悪夢を見るのか?と言う疑問に、目が覚めた時に夢で良かったと、安心する為だと言った言葉を聞いたことがある。
心理学や医学的な根拠では違う説明が出ると思うが、この言葉は凄く深いなと感心した。
では、幸せな夢は何故見るのか?
前世の俺は幸せな夢を見ても、辛い現実しか無かった。
でも、今は違う。
幸せな夢を見るのは、今よりもっと幸せになる為だと思う。
現状が幸せで、更に幸せを求めるのは欲張りな事だと思うが、欲張る為に無理の無い努力をするのは、悪い事じゃ無いと思う。
珊瑚や周りに居てくれる人達のお陰で、そんな風に考えられる様になった。
「有難う」と呟いて、珊瑚の頭を優しく撫でる俺に「ピィ!」と、珊瑚が返事をした。
リリーさんは、そんな俺達を黙って見ている。
「そう言えば珊瑚ちゃんは、どうして迷子になったんですか?」
と、ゴモリーさんが聞いてきた。
「それが、飛行中の母親に掴まって昼寝していたら、落下したそうなんです。幸い落下途中で目覚めた珊瑚は墜落せず、着地した地点から暫く飛んで、空腹で動けなくなった所を、クレイモアと俺達に会ったそうです」
此れは、テイマーの兵士が珊瑚から聞いた情報だ。
「お父さんは、どうしたの?」
ネアさんが、次いで質問する。
「父親は、居ないそうです」
珊瑚が兵士に語った内容は、母親しか居らず父親は居ない事、そして母親と旅の途中だった事だ。
「そっか、ゴメンね?余計な事を聞いちゃったね」と、ネアさんが謝ると「ピピィ!ピピピィ!」と、返事する。
「・・・ママは言っていた。番にするなら、いい雄を捕まえろと」
「ピィピィ、ピピィピピピィ、ピィ!」
「・・・浮気症の碌でなしは、絶対に選んでは駄目。日頃から、そう言われてる」
・・・色々、苦労してるんだね。
あれ?
雄を捕まえろ?
「さ、珊瑚?お前、女の子だったのか?」
「ピギー!」
「リョウ、酷いわ!ピィちゃんが、可哀想!」
「リョウ〜、ダメだよ〜」
「リョウさん、まさか珊瑚ちゃんを、男の子だと思っていたんですか?」
「リョウ、ギルドでドラゴンの知識を入れて貰って無いの?」
「・・・リョウ、酷い」
珊瑚、カオリ、マリーさん、ゴモリーさん、ネアさん、リリーさんの順に怒られた。
「珊瑚、ご、こめんな?ちょっと色々有って、頭が混乱してるんだよ」
因みに、レッドドラゴンの雄と雌の見分け方、尻尾が最後まで同じ色なら雌、雄の場合は尻尾の最終端に色の濃淡が鮮やかに出る。
珊瑚の尻尾は、同一の綺麗な赤色だった。
今更、思い出しても時すでに遅し。
「リョウ、ちょっと其処に正座」と、目が全く笑ってない、カオリの笑顔が恐い。
大禍時の悪夢、再び!




