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冒険者ギルドで、討伐報酬の受け取りとモンスターの解体をし、街中の公園にやって来た。
「はい!あ〜ん」
カオリが、ドラゴンの口にビッグチキンの肉を入れてやると、一飲みで平らげてしまう。
この公園は、遊具やドッグランならぬモンスターラン的な物があり、自由にモンスターと人間達が散歩したり、戯れたり出来る。
食ったり食われたりしないのかと思うが、そんな事は一切無い。
テイマーや飼い主の躾もあるが、街に居るモンスターは皆、テイマーギルドで発行される認識票を着用させられる。
認識票を着用したモンスターは、その効力により人や動植物、他のモンスターに危害を加えなくなる。
此れは、テイマーギルドが開発した『ミンナナカヨシ』という認識票の効果だ。
但しモンスターの嫌がる事や、危害を加える等の行為は御法度だし、必要最低限の自己防衛に関しては、認められているので反撃される。
モンスター誘拐や、モンスターを虐待する人間がいるからだ。
俺は先程、兵士から受け取った認識票をミラージュスパイダーの糸に通して、ドラゴンの首に掛けてやった。
ミラージュスパイダーの糸は、万能だな。
伸縮性があり柔らかく、それでいてワイヤーの様に強力、しかも普通の刃物じゃ切れなかったから、胴田貫で切ったよ。
今後は、ミラージュスパイダーの糸を加工して貰って、もっと良い紐を作ってやろう。
カオリとドラゴンを見ながら、そんな事を考えていた。
「カオリ、そろそろ帰るか?」
「そうね、ピィちゃん。パパとママと帰りましょう」
「ピィちゃん?」
「そうよ?名前が無いのは、駄目でしょう?」
「ピィちゃんって、ちょっと安直過ぎな・・・」
「あら?他に、いい名前があるのかしら?パパ?」
「カオリ、俺はまだ未婚だ」
「酷い!私の事は遊びだったのね!ピィちゃん、ママと2人で生きて行こうね?大丈夫よ、ママがしっかり育ててあげるから」
「カオリ、そのママって呼び方、気に入ってるのか?」
「当然よ!だって、ピィちゃんが私とリョウを、パパとママって言ってるのよ?それなのに、リョウは私達を捨てるのね?そんなにメガネが良いの?私がメガネを掛ければ、リョウは満足するの?それともピィちゃんが、メガネを掛ければ良いの?」
「いや捨てるとか、そんな事は考えていないし、メガネは関係無いから」
「ピィ?ピピィ!ピィ!」
「ほら、ピィちゃんもメガネを掛ければ、認知するのかって言ってるわ!ゴメンね。ピィちゃん、パパとママは、喧嘩してる訳じゃないのよ?」
「ピピィ?ピィ!ピィ〜」
俺はドラゴンを肩車状態にして、カオリの寸劇に付き合いつつ、宿舎兼食堂の入口までやって来た。
「フシュー、お帰り、プシュー」
「リリーさん、お疲れ様です」
「こんばんは、リリーさん!」
「ピィ!」
丁度、リリーさんと帰りが同じになったらしく、入口で顔を合わせた。
「フシュー、リョウ、その子は?、プシュー」
「はい、実は・・・」
建物に入りながら、経緯を説明する。
「フシュー、パパとママ、可愛い子ね、プシュー」
「ピピィ!ピィ、ピピィ、ピィピィ!」
「フシュー、そうなの?、プシュー」
「リリーさん?話が判るんですか?」
「フシュー、迷子で本当のお母さんは、何処に居るか分からない。と言っている、プシュー」
「ピィ、ピピィピィ!」
「フシュー、名前が、決まって無い。と、言ってる、プシュー」
「え?ピィちゃんじゃ、駄目なの?」
カオリが、悲しそうな顔をする。
「ピィ!ピピピィ!」
「フシュー、あだ名なら良いけど、それが名前なのは嫌、プシュー」
「リリーさん、ドラゴンの言葉が分かるんですね」
と、関心していると「ピィ!ピピィピィピィ!」と、何やらリリーさんに伝えている。
「フシュー、なる程、プシュー」
「あの、何と言ってるんですか?」
「フシュー、リョウ、大食堂に行って。皆を集めてくる、プシュー」
「はい?」
訳が分からぬまま、俺はカオリと大食堂に行く事になった。




