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「リョウ、大丈夫?」
「すまない、大丈夫だ」
「リョウが異世界から来た事、私は知ってる」
「そっか。俺の情報は、吸収済みだったな」
カオリは誕生した時に、俺の情報を吸収したと言っていた。
だから、俺の前世の記憶や転生者である事も、全て把握済みだ。
「別に、隠す必要は無いのかも知れないけど、あの人はちょっと怖いよね?」
少なくとも俺は、お友達にはなれそうにない。
「そう?私は、特に何も思わなかったけど?」
そうか、カオリは豪胆だな。
・・・さて、気を取り直して次だ。
カオリと一緒に、他の店を見て回る。
映画館があるな、今度一緒に来てみるか?
「リョウ、あれ見て!」
「こ、コレは?!」
店先に置かれた物を見て、カオリが指差す。
ガチャガチャじゃん?!
前世では、凄く好きで色々集めていたが、この世界にも在るなんて感動した。
ただ異世界のガチャガチャは、色々とハイテクノロジーだった。
空中に投影される液晶の様な画面を、指で操作して自分の好きな商品を選ぶ。
支払いは、この世界では一般的な自動精算だ。
俺はカオリと、ガチャガチャを眺め「何か、欲しいのあるか?」と聞いた。
すると「此れが、欲しい!」と指差す。
モンスターガチャ!1回、200円。
内容は、ディフォルメされたモンスターのフィギュアで、ちょっと可愛い。
確かに此れは、俺も欲しいな。
「よし、回してみるか?カオリは、どのモンスターが欲しい?」
「私は、【闇の化身、ホーンラビット】が欲しい!リョウは?」
ホーンラビットとは白い体色の、体長1メートル程の一角兎で、ペットや食用として人気のモンスターだ。
フィギュアは黒いローブの様なマントを身に纏って、後ろ足で立ち上がって手に杖を持っている。
なる程、闇の化身か。
「俺は、【混沌の殲滅師、マジックキャット】だな」
マジックキャット、豹位の体長で魔法を使用する、この世界では割りと珍しく無い生物だが、俺が欲しいのは、二本脚で立ち上がり、眼帯を着けて眼帯の上に手を置き、反対の手を前に突き出している、中二病患者的なフィギュアだ。
「リョウの欲しがってるのも、可愛いね」
「取り敢えず、一回ずつ回してみるか」
液晶画面を操作して、モンスターガチャを選択。
1番手をカオリに譲り、俺は2番手だ。
音楽が流れて、コロンと下の方から商品が出て来る。
「ホーンラビットじゃ無いけど、此れも可愛い」
見てみると、【白き魔導師、サンダースネーク】だった。
実物のサンダースネークは蛇の電気ウナギバージョンで、体色は様々あるが白は非常に珍しい。
体長は大体10メートル位のモンスターだが、商品は5センチ程のサイズで尖った黒い魔女帽を被っており、とぐろを巻いて尻尾に小さい雷のオブジェが着いた、白い蛇のフィギュアだった。
確かに、可愛い出来だ。
次は俺だな。
何が出るかなと、ちょっとワクワクしながら、液晶画面を操作する。
出て来たのは、【破壊大帝、エント】だった。
エントは木のモンスターだが、討伐対象では無く保護対象のモンスターだ。
人間を見ても攻撃してこず、逆に人間に会うと果物をくれたりする、優しい木のモンスターである。
しかし、この【破壊大帝、エント】は凶悪だ、つぶらな瞳でゴッ○フィンガーを、ブチかましているフィギュアなのだ。
矢鱈と躍動感溢れるフィギュアで、身体が後に反っていて、如何にも対象を貫いたと言わんばかりのポーズを取っている。
此れを考えた奴は、間違い無く中二病だな、俺には解る。
その後、俺とカオリは調子に乗って、このガチャガチャをフルコンプ(100種)し、被りも入れて合計150個程のフィギュアを持ち帰った。




