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異世界転生  作者: MSZ-006
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「いらっしゃい!」


「こんにちは。実は頼みがあって・・・」


「なんです?リョウさんの為なら、いつでも嫁入り出来ますよ?」


「ちょっと、待ち・・・!?」


カオリがゴモリーさんにツッコもうとするが、俺は敢えて無視して話を続ける。


「いや実は、コイツに新しい仕事を紹介してやって欲しくてですね?ゴモリーさん」


「もう〜。リョウさんたら〜」と俺に寄りかかり、胸にのの字を書くゴモリーさん。


「はい!離れて!で、仕事はあるの?」


カオリが間に入って、引き離す。


それを、呆然と眺める若者。


「だ、旦那、モテるんですね!オラ、かぁちゃん居るけど、羨ましいだ!」


「真面目に生きてりゃ、ちゃんと見てくれる人は居るからな?だから、新しい仕事に就いて女房、子供と幸せに暮らせよ?」


「へい、有難うごぜぇますだ!」


「そう言えば、リョウさん。最近、低賃金で使い潰されて解雇された挙句、盗みや心中なんていう話が結構出回ってるんですよ?」


ゴモリーさんが、世間話を始めた。


「不景気だから、と言うのもあるかも知れませんが・・・。でも大体、とある大店が関わってる感じなんですよね」


なんて呟きながら、ゴモリーさんが若者に一枚の手紙を渡す。


「此処なら、若くて力もあるから、問題なく仕事できるでしょう」


「へぇ、有難うごぜぇます。姉さん!」


「一体、なんの仕事を紹介したの?」


カオリが、紙を覗き込みながら聞く。


「めぐりちゃんの鍛冶屋ですよ。彼処は人気の鍛冶屋だから、幾らでも人が欲しいって言ってますからね」


なる程、手に職が付いて更にちゃんと儲けを出してる所なら、大丈夫だな。


流石、めぐりちゃんとゴモリーさんだ。


此方に何度も頭を下げて、去って行く若者を見送り瓦版屋を後にした俺達は、また町を歩いていた。


「土左衛門だ〜!」


「お、お役人様、土左衛門でさぁ〜来てくだせぇ〜!」


町人に、声を掛けられ川辺に向かう。


其処には人集りと、お互いに手を握りあって手首を紐で縛った遺体があった。


「おい!誰が発見した?後、身元が分かるヤツはいねぇか?」


俺は、人集りに声を掛ける。


「・・・酷い!?」


カオリが悲しそうな顔をして、目を背ける。


俺は遺体に手を合わせ、岡っ引きが持って来たむしろを被せる。


「旦那、仏さんの知り合いを連れて来やした」


岡っ引きが連れて来たのは、見窄らしい格好の爺さんだった。


「お役人様、此奴は同じ長屋に住んでる奴で、この娘さんと二人で祝言を挙げようって言ってたんです」


「そうか。なんで、心中なんてしちまったかね」


「へぇ、なんだか働いても金にならねぇとか、賃金が貰えないって事を、最近聞いてましたね。確か、大黒屋で働いてた筈だったと思います」


「・・・そうか、有難うな爺さん。面倒掛けたな」


「いえ、お役人様のお役に立てて、良かったです」


「・・・リョウ」


「大丈夫だ、俺は生まれ変わったからね。そして今は、カオリや珊瑚、皆が居てくれる」


俺は前世の事を、思い出していた。


何度も思った。


何故、現実世界に闇狩人や仕事人は、存在してくれない?


何故、悪がのさばって善良な者が、搾取されなければならない?


毎日、辛い思いをして生きて来たからこそ、この話は俺にとっては、とても重い話だ。


現場を岡っ引きに任せ、二人でその場を離れる。


気が滅入るな。


「・・・リョウ、ちょっと休憩しない?」


「あぁ、そうだな」


そう言って、カオリは団子屋の椅子に腰掛けた。


店の女の子が、注文を取りに来る。


「団子を二つと・・・いや、四つ貰おうかな」


「はい!有難う御座います!」


「やぁ、リョウさん」


「こんにちは。お父、じゃ無かった。お役人様」と目の前に座ったのは、ユカさんとポポだ。


「リョウさん、今は往診の帰りなんだが、具合を悪くしてる人達が多発していてね。大体、栄養失調や精神的なストレスによるモノだ」


「そうなんだよね。精神的に疲れた人たちは皆、大黒屋って言ってた」


ユカさんとポポが、そんな事を言う。


大黒屋・・・糞ブラック企業だな。


美味い団子で、ちょっと気分転換なんて思ったが、大黒屋のせいで気分が宜しく無い。


「あ、さて!あ、さて!さては、南京玉すだれ!!」


団子屋のすぐ近くで、ネアさんが南京玉すだれをやっている。


「ちょいと伸ばせば、地獄の大百足!」と、半分にして伸ばした玉すだれを、額の辺りに持ってくるネアさん。


日本には存在しないが、アマゾンに居るセンチピード・オブ・ヘルと言う超狂悪なモンスターが居る。


食欲旺盛で、人間を見れば追っかけ回し毒液を吐いたり噛みつき攻撃等、危険な生物で俺は黒い悪魔の次に、嫌いな存在である。


そんなネアさんの大道芸を眺めつつ、皆でお茶を飲んでいると「おい!誰に断って此処で芸をしてんだ?」と、感じの悪いチンピラ紛いの連中がやって来た。


「ここで芸を見せるんなら、きっちり大黒屋さんに『カスリ』を置いてきな」


「ちょっと、なによ!?此処の場所が大黒屋って、誰が決めたのよ?」


「うるせぇ、威勢がいい姉ちゃんだな。なんなら、アッチで可愛がってやってもいいんだぜ?」


「ヒヒッ、そいつは名案だ!」


チンピラたちが下卑た薄笑いを浮かべ、品定めするようにネアさんを囲い込んだ。


「おい、止めろ!」


俺は、チンピラ共を止めに入る。


「あぁ!なんだ木っ端役人!大名家に出入りしてる、大黒屋さんの邪魔すんのか?」


「大名家の名を汚すような真似を、大黒屋もよく許しているな。奉行所に名が届いても構わねえんだな?」


「チッ、覚えてろよ!」


と、チンピラ共が去って行く。


「リョウ、有難う」


「いえ、今の俺は役人なんで」


「リョウ、しょっ引けば良いんじゃ無いの?」と、カオリが不機嫌そうに言う。


「カオリ。帰ったら多分、あの煩い上司が文句言って来るぞ」


「リョウさん、何でですか?リョウさんとカオリさんは、役人ですよね?」


「あの手のチンピラ共は、虎の威を借る狐なんです。大名家の名を出せば、此方は何も出来ない、更に言えば上司は事なかれ主義の人間だから、俺達が怒られる。そんな図式になるんです」と、ユカさんに説明する。


「此れも、前世の記憶から読み解いた話ですよ。な?カオリ」


「そうね。そう言われれば、ドラマでもそんなシーンがあったわね」




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