♥ おまけ / 平和は続くよ、いつまでも
◎ 気晴らしに「 後日談 」みたいなのを考えてみました。
普段のトゥヱは、必要な時以外はワンコの姿で過ごしています。
えっ、理由ですか?
勿論、トメリロレンスがワンコ好きだからですよ?
ワンコ姿の方が楽だから──とか、そんな理由なんかじゃ…………ゲフゲフ…ゴホン……。
此処は大自然の中にポツンと建っている一軒家。
一軒家から1番近くにある≪ 村落 ≫へ行く為には、馬車に乗り、1時間程揺られなければならない位置にあった。
一軒家に暮らしているのは、ヒルトクッグ伯爵家の次女──トメリロレンス・ヒルトクッグ伯爵令嬢である。
ヒルトクッグ領主であるヒルトクッグ伯爵から勘当されて追い出されたわけでも、家族の縁を切られたわけでも、一方的に絶縁されたわけでもない為、トメリロレンスは未だ伯爵令嬢である。
婚約者から婚約破棄をされ続け、心身共に参っていたトメリロレンスは、トゥヱの提案を聞き入れ「 1週間の旅行がしたい 」と家族と使用人達を偽り、実家であるヒルトクッグ邸を出た日から、既に1000年近くの年月が経っていた。
トメリロレンスの実家は他国にある。
故郷の国は700年程前にメキメキと力を付け軍事国家と成長した≪ ハルデカッザ帝国 ≫に攻め込まれ、滅ぼされている。
現在は強大な軍事国家だった≪ ハルデガッザ帝国 ≫も更なる領地拡大の為に、規格外な魔法を操る≪ パキスタリア大国 ≫へ進軍したが、呆気なく返り討ちに合い、滅んでいる。
≪ パキスタリア王国 ≫に吸収された≪ ハルデガッザ帝国 ≫の人間も亜人もパキスタリア人の奴隷として生かされている。
トメリロレンスには関係の無い事だったのだが、つい20年程前から≪ パキスタリア王国 ≫はトメリロレンスが余生を過ごすと決めた国にも手を伸ばしていた。
滅ぼした≪ ハルデガッザ帝国 ≫の自慢の軍事力と≪ パキスタリア王国 ≫の魔法を駆使して、近隣諸国をも巻き込んだ戦争が勃発していた。
心配し不安がるトメリロレンスの憂いを晴らす為、トゥヱはゲボク達を≪ パキスタリア王国 ≫の陣営へ向かわせている。
ゲボク達に襲撃され続ける≪ パキスタリア王国 ≫は予想外の苦戦を強いられる事になった。
夜には元気だった者が、朝になると惨たらしい状態で死んでいる日々が連日続き、≪ パキスタリア王国 ≫の兵士達の士気が酷く低下していたからだ。
まるで一夜中拷問を受け続けていたかのような悲惨な死体を目の当たりにする兵士達の中には、あまりの恐怖に発狂して心を病んでしまう者が増えていった。
原因不明の死が何時自分に訪れるのか不安でならない兵士が増え、命欲しさに陣地から逃亡する兵士が多発した。
それでも≪ パキスタリア王国 ≫は≪ グラシアモ公国 ≫を手に入れる為に侵略を止めようとしない。
その度に≪ パキスタリア王国 ≫の軍隊への被害は拡大していった。
──*──*──*── トメリロレンス邸
トゥヱ
「 ──ほう?
未だ諦めぬか?
≪ パキスタリア王国 ≫とやらは随分と粘るのだな。
面白い 」
ゲボク:T
「 我等が王よ、どうされますか? 」
トゥヱ
「 何だ、遊ぶのは飽きたか? 」
ゲボク:G
「 人間は脆い故、魔族の遊びには耐えられませぬ 」
トゥヱ
「 人間は遊具に向かんか。
飽きたらな喰らってしまえば良い。
但し、何も残すな。
食料と馬,金目になる物は1つ残らず回収せよ 」
ゲボク:L
「 御意! 」
トゥヱ
「 2度と≪ グラシアモ公国 ≫を攻め落とそう等と愚行を繰り返せぬよう、魂と身体に恐怖を刻み込んでやれ 」
ゲボク:D
「 御意! 」
トゥヱ
「 行け、我がゲボク共よ!
愚かな人間共に本当の地獄を教えてやれ! 」
ゲボク:G
「 御意!
我等が王の御心のままに── 」
トゥヱの命令で靄のゲボク達は≪ パキスタリア王国 ≫の陣営を目指して飛んで行く。
トメリロレンスの知らぬ所で多くの人間達がトゥヱのゲボク達により大量虐殺に遭うのだが、それをトメリロレンスが知る事はなかった。
トメリロレンス
「 トゥヱ〜〜〜。
パイを焼いたの。
お庭で一緒に食べましょう 」
トゥヱ
「 ワン♪ 」
トメリロレンス
「 もう、トゥヱったら。
ワンコの姿ではパイは食べれないわよ 」
トゥヱ
「 ワンワン 」
トメリロレンス
「 もう……トゥヱの甘えん坊さん♥ 」
ワンコ姿の可愛いトゥヱに御執心なトメリロレンスは、トゥヱを抱っこすると庭へ向かって歩く。
庭ではトゥヱのパシリがテーブルの上に焼き立てのパイと紅茶セットを置いてくれている。
パシリは何でも出来る為、侍女や執事等の使用人が出来るような事もお任せなのである。
椅子の上に乗せられたトゥヱは人間の容姿になり、トメリロレンスとお茶の時間を楽しむ。
トゥヱ
「 ほう──、これは美味いな。
これは何のパイだ? 」
トメリロレンス
「 木苺を贅沢にもふんだんに使ったパイよ。
シモベさん達が摘むのを手伝ってくれたの 」
トゥヱ
「 木苺は良いな。
増やすか? 」
トメリロレンス
「 木苺は今でも十分な量が取れるから大丈夫よ。
ジャムも良いけど、料理に使える木苺ソースを作ろうと思うの。
手伝ってもらえる? 」
トゥヱ
「 木苺ソースか。
美味そうだな。
我に任されよ 」
トメリロレンス
「 有り難う、トゥヱ。
あっ、そうだわ。
トゥヱが改良してくれた白苺と黄苺は≪ 村落 ≫好評みたいよ。
また苺のファンが増えてくれたみたいなの♥ 」
トゥヱ
「 そうか。
喜んでもらえているようで何よりだ 」
トメリロレンス
「 ねぇ、トゥヱ。
苺程の大きさのトマトを作れないかしら?
今のトマトは大きいでしょう。
トマトが苦手で食べれない子供が多くて困っているみたいなの。
何とかならないかしら… 」
トゥヱ
「 苺程に小さいトマトか…。
ふむ…面白そうだな。
よし、試しにミニトマトを作ってみよう 」
トメリロレンス
「 有り難う、トゥヱ!
出来たらきっと喜んでもらえるわ 」
嘗ては “ 残虐皇神 ” と呼ばれ、多くの魔族や魔王達から恐怖れられていたトゥヱは、今やトメリロレンスの為に様々な野菜や果物の開発や改良に膨大な魔力を役立てている。
トゥヱは誰よりも愛しいトメリロレンスと共にのんびりとした気儘なスローライフを謳歌していた。
トゥヱ
「 トレスが息災でいてくれる事が我の喜びだ 」
トメリロレンス
「 どうしたの、急に? 」
トゥヱ
「 何でもない 」
トメリロレンス
「 トゥヱ……あのね…。
トゥヱに知らせたい事があるの(////)」
トゥヱ
「 うん?
何だ、トレス 」
トメリロレンス
「 実はね────(////)」
今日もトメリロレンス邸だけは平和だ。




