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9-3 新世を殺した人物は、やはり、

 佐太郎は溜息をつきながら右手の袖をまくりあげると包帯のような布に巻かれた逞しい二の腕をさらけ出した。 包帯には科学魔法の札がペタリと貼られている。


「緊急事態だからしゃーねぇか」


 そう呟きながら左手の指先を科学魔法の札と包帯の隙間に 押 し 込 ん で いく。 指先は見る見る間に右腕の中にめり込んでいくのを見てリト達は目を丸くした。

 佐太郎は手首までずっぽり入ったその手をゴソゴソと動かし、まるでポケットから品物を出すかのように包帯と科学魔法の札の隙間から両手の平を広げて二つ分くらいの大きさの一冊の薄い本を取り出した。 義軍が目をキラキラと輝かせてその姿をじっと見る。


「さたろうさん、すごーい」

「ん? そうか?」

「チョコも出せる?」

「ははっ。 あいにくそれは無理だなぁ」


 佐太郎は軽く笑いながら取り出した本の埃をパンパンとはたいた。 その取り出した本はかなり古く、リトが偶然出したあの名簿とは多少違う感じがした。


「さって、これが名簿な訳だが……。 どうしたお前ら、押し黙って。 ん? この腕か? 科学魔法だ気にするな」


 みんながガン見しているので佐太郎は少しめんどくさそうに告げた。


「佐太郎のおっちゃん。 それ、超便利だけど、俺にもくれねぇ?」


 アリドが身を乗り出した。


「あっ、俺も欲しい!」


 デイも便乗するが佐太郎は首を軽く横に振った。


「だから見せたくなかったんだ。 それより先に、名簿だ名簿」


 佐太郎がどかっと地面に座ってその名簿を開く。

 それはやはり不思議な名簿で、ページ数は一見20ページほどしかないのだが、佐太郎がめくってもめくっても続きが出てくる。 しかし本の厚さは薄いままだった。


「あった、ここが新世だ」


 佐太郎があるページでめくるのを止めたのでみんなで輪になって内容をのぞき込む。

 そこには過去、リトが見たのと同じように新世のことが細かに書かれており、その最後はやはり【殺滅・ 殺滅執行者 翼族調査委員会№ g-∞】と記載されていた。


「で、どーやってこのg-∞がラムールさんだって証明するんだぜ?」


 世尊の呟きに佐太郎がゆっくりとページをめくりながら話し出す。


「翼族調査委員会ゴールドメンバー、しかも殺滅権を持ってる奴は、素性がばれるのを極端に嫌う……って話、知ってるか? なんでだと思う?」

「なんで……って、やっぱり、みんなから怖がられるとか……?」

「ま、それもあらぁな。 だが、一番は、殺滅権は他人に渡すことができるってとこだな」

「え?」

「殺滅権はな、巨大な権利だ。 権利を与えてくれるのは人間じゃねぇ。 命を司る神だ。 殺滅権という巨大な力を魂の一部に貼り付けることにより、殺滅権者が死んだ後に、ソイツの魂を神に捧げる供物とする契約によって成り立つ一種の神との契約だ。 死んだ時、ソイツには何ものこらねぇ。 残った魂は不完全なかけらとして地獄で滅びるだけだ。 そんなくだらねー権利、それが殺滅権だ」 

「……」

「そんで、その自分の魂に貼り付いた殺滅権。 これはな、大事に思っている相手同士でなら託すことができる。 つまりは襲名できるってこった。 ってことはだ、仮に誰かに権利を譲った後、その人物がゴールドメンバーだってばれてみろ。 前の奴がやったことまでそいつの仕業にさせられちまうだろ」

「あ! じゃあ、もし仮にラムール様がg-∞だったとしても、誰かから権利を譲り受けたとしたら、新世さんを殺した人とは別人ってことですよね?!」


 リトがピンときて元気よく言った。 そう考えたらラムールがg-∞だとしても何ら困らない。

 だが世尊が瞬殺で答えた。


「馬鹿だぜリト! 大事に思っている相手同士って佐太郎さんは言ったぜ? そしたら新世さんを殺した奴から襲名できるはずはねぇぜ?」

「あ、そ、そっか」


 リトとしてはラムールに対して色々誤解していたものだから少しでも良い方向に結論が向いて欲しいと思っていたのだがなかなか難しい。

 佐太郎はゆっくりとページをめくりながら書かれている文字に目を通しながら独り言のように告げる。


「もしライ……ラムールがg-∞だとしたら、権利を譲ったゴールドメンバーだったのは、爺さんで間違いねぇだろうな。 っつーことは、爺さんが死ぬ間際に権利を譲渡したんだろう。 ――ちっくしょう、あのじじい。 俺様にも秘密にしてやがって。 つーか普通、大事な子供に殺滅権なんかやらねーだろうがよ。 だから死んで天界に行けたってかい。 あのウスラボケ」


 ぱらり、ぱらりとめくりながら佐太郎が尋ねる。


「――で。 この前、あいつが殺滅した翼族の名前は分かるか?」

「はい。 レセッド・アルバタイン・ロス。 です」

「アルバタインか。 そりゃあまた、どえらく力のある奴を殺滅したもんだな。 有名な奴だぞ。 ――ああ、あったあった。 ここだ」


 佐太郎がそのページにたどり着く。

 そこには思いもがけないほどあっけない表記があった。



--------------------


 レセッド・アルバタイン・ロス

  **月**日 オルラジア国コルグ州にて翼族調査委員会メンバー5名を惨殺し逃走

       詳細不明(身体特徴は別添データベース内)

 

  */*日 テノス国近辺にて発見

      殺滅 

      殺滅執行者 翼族調査委員会№ g-∞


---------------------



 新世のページと同じような書体のg-∞が静かに存在を主張した。

 これで明らかになった。

 新世を殺したのはg-∞で。

 g-∞はラムールに間違いないのだから。



新世を殺した人物は、やはり、ラムールなのだ。



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