5話目
翌日。廃墟と化した病院の院内。エルディーナとマリオネットはそこにいた。
「調子はどうだ?」
「昨日よりは稼働しやすいです。錆が取れたような感じです」
表情一つ変えず、マリオネットは腕を振り回した。
横目でそれを見ていたエルディーナは、タンブラーに入った珈琲を一口飲む。
「……そろそろだな」
タンブラーの蓋をしっかりと閉め、袂に入れると、足早に奥へ進んだ。
奥へ進むと、ぼんやりと明かりが見えてきた。
エルディーナは、躊躇うこと無く、あるはずのない明かりへと向かって行った。
「誰だ!?」
「ただの見学者だ。気にするな」
エルディーナの前に現れたのは、十代の男女数人だった。
「貴様ら、ネットで噂の集団自殺だろ?」
「だったら何よ?」
「そうだ。お前達には関係ないだろ?」
「だから、見学だって言ってるだろう」
「私達は貴方方の死後に用があるのです。憎しみを抱きながら、呪いを込めながら冥府へ向かってくださいです」
マリオネットの言葉に、自殺志願者は目の色を変えた。
「お前らに何がわかるって言うんだよ!」
「解らないね。知りたくもない。で? 死ぬのか死なないのか、はっきりしろ」
淡々と喋るエルディーナに向けられているのは、憎悪の視線。
邪魔をされたと、自分達の行動を軽視されたと思った志願者達は、持っていた憎悪をエルディーナへと向けたのだった。
「……良い目だな。そのままでいろよ。マリオ」
エルディーナはマリオネットを呼ぶと、近くにあった椅子に腰かけた。
マリオネットはゆっくりと腕を持ち上げる。
「さあさあ、今宵の劇場は如何様に致しましょうです?」
「混乱の果ての憎しみ的なもので」
「承りまして御座いますです」
エルディーナの言葉に、マリオネットは一人の少年を指差す。その少年は、手にナイフを握っていた。
「今宵の主人公は貴方です。さあさあ、幕が上がりますです。踊りましょうです」
マリオネットが勢いよく腕を降り下ろす。
少年は、叫びながら、泣きながら仲間を切り伏せて行った。まるで、操り人形のように。
黙って見ていたエルディーナは、腰を上げ、亡骸の中央に立ち竦む少年の前へ立った。
「……殺してやる……」
「良い言葉だ」
動けないのを良い事に、エルディーナは少年の髪を切り、袂に入れてあったクラウンの背中に入れる。
「生まれ変わってもその気持ちを忘れるな。早く俺を殺しに来い」
言い終わりと同時に、クラウンの首を捻る。
少年の首は、歪な音を立てて一周し、体は二度と動くことはなかった。
少年達の亡骸の上に、再び球体が浮かぶ。どれも黒いが、濃さが違っていた。
エルディーナは、一番濃い球体を腰に下げていた瓶へと入れた。残った球体は、平等になるようにマリオネットとクラウンの体へと吸い込まれていった。




