転機
夜が明けて――
雨はすっかり上がっていた。朝日は音も無く世界を明るくする。
朝露が、陽の光を浴びてキラキラと輝く。
「…………」
大和はぼんやりと目の前を見据えた。
何もない前方を、ただ黙って見詰める。
と――
がさっ。
「…………」
茂みの奥で、何かが動いた。
注視していると、何かが飛び出してくる。
びたっ、と顔に貼り付いてきたそれを、大和は引き剥がす。
「……お前か……」
飛び出してきたのは、白い毛玉。
それは別に珍しくも何ともないが、今日は少し様子が違った。茂みの奥から、次々と毛玉が出てくる。
「……何だ?」
毛玉は、蔓のようなモノをくわえていて、何かを引き摺っているようだ。
暫くして、毛玉が引き摺っているモノが見えてきた。
それは――……
「……それ……」
毛玉が引き摺ってきた物――それは、刀だった。
斬影から渡された退魔刀。
あの妖魔との戦いの最中に落とされ、そのままになっていた。
毛玉は、刀を大和の足元まで持ってくると、その場で跳び跳ねる。
「…………」
この間のように、危険を知らせるような感じはしない。
大和は、刀を手に取る。
「……わざわざ持ってきたのか……」
単に刀を食べられなかったからか、それとも――……
大和は小さく息を吐いた。
刀を握り、立ち上がる。
「……ありがとな」
微かに笑んで、大和は山を下りた。
山を下りて暫くしてから、大和は振り返った。
視線の先には、住み慣れた山が微かに見える。
「……一人で行かせないって言ったくせに」
当面は、あの竜の角や牙、鱗を捌けばどうにかなるだろう。
その後どうするかは、まだ決めてない。
ただひとつだけ――
「……見付けたらぶっ飛ばしてやる」
毒づいて、大和は再び歩き出す。
それが――長い旅の始まりだった。




