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硝煙の魔法  作者: 物黒織架
第一章 人が死ぬために
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第一章 第四幕

感想や、誤字脱字、悪い点等指摘してくださると嬉しいです。

(昨夜は特に襲撃もなく明けた、か)

海島は机に肘をついて考える。

(おそらく私たちが『梟』であることをふまえての対応···となれば襲撃には準備をしてから来るだろう。ここで一度逃げることもできるが、逃げ回ってばかりいては何時までも襲撃は止まないだろうし、一度襲撃をわざと受けて敵を根から断たなければ意味がない。プロメテウスのような巨大な結社がいくら高名とはいえ、一人の科学者に総力をあげているとも考えにくい。事実そうならあの子はとっくに捕まっているだろうし)

となれば一部の派閥の独断で行われた作戦なのだろう。ならばその派閥を潰し示談に持ち込むのが最良だ。

もっとも、

まだ西織がプロメテウスのスパイである可能性は有るのだが。

(まぁ一先ず襲撃されるまで下準備をしながら待つか、このビルは既に私の魔法で要塞化してあるし)

西織がこの時期に依頼をしてきたのもラッキーだった。実のところこのビルはもうすぐ出ていくつもりだったのだ。付近のビルは無人だし、気兼ねなく暴れられる。

そういうわけで

「アーサー!!」

「はい、何でしょうかボス」

「こいつを西織に飲ませておきなさい」

そう言って海島はいくつかのカプセルを手渡した。

「発信器ですか?」

「と、何種類かの毒物。カプセルは一定時間で溶けるように出来ているから飲ませても一定時間以内に解毒剤を射てば死なないわ」

「保険、ですか」

「あの子の生殺与奪権は今のところ私たちで握っていたい」

「了解です、ボス」

「私はこれから根回しに動くわ。留守を頼むわね」

「重ねて了解」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ニコラスは目を醒ますと、自分の体の具合を確かめ、海島の的確な怪我のさせかたにため息をつき、自分の魔法で傷を治した。

「···腹減ったな」

取り敢えず飯でも作ろう(既に昼になっていた)と思い四階の調理場にいくとダイニングテーブルに座った西織と遭遇した。

「あ、昨日の女の子」

「あ、机の下敷きになってた人」

認識のされ方にニコラスは目頭が熱くなった。



「へぇ、うちに護衛の依頼を」

「はい、ちょっと一悶着ありましたが」

ニコラスは適当にベーコンを焼きながらここに来たいきさつを聞いていた。

「で、自分のいた結社も消えて散々な目に遭ったと、そりゃたいへんだねぇ」

「警戒しないんですか?確かに私は強くありませんけど、それでも魔術師の端くれですよ?」

「アーサー達が付いてないって事は、少なくとも急に暴れることは無いって判断なんだろう。なら、俺がどうこう言う理由にはならないな」

「信頼してるんですね」

「親友だからな」

「録音したぞ、今の」

いつの間にかアーサーがテーブルについていた。

「どわっ!お前いつの間に」

「実はお前がベーコンを焼き始めた辺りから聞いていた」

「完全に最初からじゃねーか!!!っていうか、え?録音した?」

「『親友だからな』」

「ぐおおおおおおお止めろマジで恥ずかしいから!!」

「『親友だからな』『親友だからな』『親友だからな』」

「てめぇそのボイスレコーダー寄越せ、ぶっ壊すから!!!!」

「あの、ベーコン焦げてますけど」

「ほら、早く火止めろ俺と西織で食うんだから」

「さらりと俺のベーコン略奪してんじゃねぇ!!ちくしょうあとで覚えてろよ!!」

そういいながら追加でベーコンを焼いてきっちり三人分盛り付けるニコラス。何だかんだで善人なのだ。

「ニコラス、お前(俺にとって都合の)いいやつだよなぁ」

「え?何だよいきなり」

「いやしみじみと(本当に俺にとって都合の)いいやつだと思って」

「や、止めろよ、照れるぜ。そ、そんなこと言ったってボイスレコーダーの事は許さねぇからな!あとで渡せよ!!」

そう言いながらもガツガツと照れ隠しのようにベーコンを平らげていくニコラス。何となく括弧の中を察した西織が、苦笑いでそれを見ていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


街を適当にぶらつきながら海島は思考を巡らせていた。

(確かプロメテウスの本拠地はギリシャだった···応援を読んだなら移動に一日、準備に一日ってとこでしょうね。明日が勝負どころになる。西織博士が今どんな状況かは分からないけど、西織夕香との契約内容じゃ護衛が限界だし)

海島も慈善事業で西織を助けているわけではない。対価はせしめるし、対価以上の事はしない。彼女は何処までも仕事として割りきっている。

(博士は見つけてもスルー、もしくは追加契約の請求でもしましょうかね。まぁどっちにしろ廃人同然だろうけど)

プロメテウスの尋問ならば、まともな人間は耐えられない。おまけに相手は政財界や学会に多大な影響を及ぼす怪物だ。何をしても、大抵の事は揉み消せる。

(仕込みは済ませたし、久しぶりの母国だし、少し羽休みしましょうかね)

ひとまず今後の方針を決め、取り敢えずタバコでも買おうと自販機に近づくと

『タスポを タッチしてください』

「···あぁ?」

2012年現在、日本は海島の知っていた頃とは様変わりしたようである。

ニコラス君が登場するとテンポが良くなるので書きやすいです。

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