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硝煙の魔法  作者: 物黒織架
第二章 救いたいと願うなら
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第二章 第十二幕

ストックが切れてきた…

に、二章は最後まで連投を…

それは一人の少女だった。

流麗な長い赤毛を後ろで束ね、意思の強そうな若草色の瞳をしたその少女は、飛んできた『指輪』を受け取り、目の前に(かざ)す。

「これが…『ニーベンルグの指輪』…」

「はい、我が主。それこそが主を更なる高みへと押し上げる究極の至宝に御座います」

かしこまった口調でフレイはひざまずいて忠誠を示し、少女は指輪を嵌める。

「…ふぅん?」

少女は新しいアクセサリーを眺めるように指輪を(かざ)し、ヒュン、と音を立てて指輪を嵌めた右手を振る。

直後、


ズッドドドドドドドドンッッッ!!という轟音が響き、ジークの身体が無数の槍で貫通させられた。


(な…)

なんだこの速度と威力は。

串刺しになったジークのすぐ隣で、アーサーは全身から汗が吹き出すのを感じた。

アーサーに全く知覚させなかった速度もそうだが、それ以上にジークの身体をあっさりブチ抜いた威力が危ない。

ジークは既に『鋼体英傑(ジークフリート)』で肉体を鋼の塊並みに固くしている。

はっきり言おう。人間サイズの厚みの鉄の塊をブチ抜くなど、そこらの大砲でも無理だ。

弾いたり凹まして吹っ飛ばすなら可能だろう。

だがジークはほとんど体勢を崩すことなく串刺しにされ、その場に固定された。

これはつまり、槍の与えたエネルギーが当たった場所以外に伝わる前に身体を貫通し、地面に突き刺さったということだ。

絶大な速度が生み出す圧倒的な破壊力。

尋常な攻撃ではない。理不尽などの領域を大きく越えている。これは、こんなのは、最早槍ではない。

武器。

人の、人による、人を殺すための代物。

これが、『ニーベンルグの指輪』の力だとでも言うのか。

「いかがですか?我が主」

「ん…まぁまぁね。でもそれなりに気に入ったわ」

「それは恐悦至極でございます」

目の前で『アースガルズ』の幹部二人はこちらを認識していないかのように会話をする。

しかしそれも当たり前か、アーサーの持つ銃器の全てはフレイの『無敗宝剣(ノン・ウィナー)』に阻まれ、少女の一撃はアーサーを一瞬で絶命させる。

それは最早戦いではない。ただの作業に過ぎない。

いつでも殺せる。

だから殊更殺そうなどと意気込まない。蟻を殺すのに躍起になって綿密な準備をする人間は居ないように。

アーサーは背中の武器を意識する。

少女はおそらく主神オーディンの襲名者。扱う魔法は主神が扱ったという槍、『グングニル』がベースだろう。

神話におけるグングニルの性質はひどくシンプルだ。

投げると必ず相手の心臓を抉る。ただ、それだけ。

しかし実際相対すればそんなことは言えなくなる。

その槍は避けられず、防ぐことが出来ず、必ず急所を抉る追尾性と致死性を持ち、放たれたときには既に敵を(ほふ)っている。

(戦えるか…?)

アーサーの背中に有るのは今回、北欧系の神話魔法ならば必ず現れるであろう、オーディンの襲名者対策に造り上げた秘策だ。

だが、

(本当に戦えるのか?あんな化け物に!?)

最早少女は人の領域を越えている。

正しく神。

主神の名を継ぐに相応しい、絶対的な上位者。

そして上位者は下々の気持ちなど気にも止めない。

「そこの男、邪魔ね。目障りだわ、消しましょうか」

少女は此方を見て、裁定を下す。

死ね、という言葉は静かに響いた。

そして少女が腕を振る。

(間に合えーーーーーッ)

槍の雨が降り注いだ。


◇◇◇


ドッズゥンッ!!と重々しく振るわれる『雷撃鉄槌(ミョルニル)』の一撃をニコラスは避けていく。

(離れたらあの砲撃みたいなハンマー投擲で殺される。離れても此方に良いことはないーーー)

横凪ぎに振るわれる一撃を辛うじて避けて、

(ーーなら、いっそインファイトに持ち込んで投擲だけでも封じる!!)

地面に魔法を使用、雪が圧縮され、氷の槍となって射ち出される。

それは『雷撃鉄槌(ミョルニル)』の柄で弾かれたが、ニコラスはそれを見てほくそ笑む。

間合いの外ギリギリから近接戦闘を挑めばかなり押せる。当然相手も焦り、状況を打開しようとしてくるだろう。それがニコラスの狙いだ。

「ぬ、おおおおああっ!!」

グッ、とトールの身体が力み、魔力を供給された『雷撃鉄槌(ミョルニル)』が、


バッヂイイィィッ!!と紫電の塊を撒き散らす。


その内の一つがまともにニコラスを貫く、が、

「…何故、倒れない?」

雷撃鉄槌(ミョルニル)』が発する電流は魔力量によっても左右されるが、今の一撃は10

億ボルトもの電圧を誇る天然の雷に匹敵する一撃だ。その威力は非常に軽い電子の流れでありながら、コンクリートを貫き、大木をへし折る。

魔術師だろうが何だろうが、耐えられる筈は無いのだがーーー

「グロー放電と理論純水って知ってるか?」

ニコラスは僅かに痺れる筋肉を酷使し、余裕の笑みを形作る。

グロー放電とは『真空下に近い気圧下では電極間に絶縁破壊が生じ、電流が気体中を流れる』という現象。

理論純水とは限りなく純度百パーセントに近い水は電流を通さない、という性質のことだ。

つまりニコラスは体表面近くに百パーセントの純度の水を障壁として展開、更にその外側の気圧を極限まで下げてグロー放電を誘発、電流の流れをコントロールしたのだ。

無論全ては防げない。

だが、魔術師ならば耐えられる程度までなら弱体化は可能!!

「こいよ筋肉達磨。この俺があっさりブッ飛ばしてやる」

ニコラス君は空気じゃないよ!キチンと戦いもこなせる子です。

戦い方はハガレンみたいに戦う感じですね。これ言えばわかる人はどうして近接戦に持ち込もうとしたのか予測できちゃうかな?

誤字脱字、ご意見、ご感想などお待ちしています。

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