第二章 第十一幕
もう今年も二月ですね。
受験生の皆さん、頑張ってください!(読んでるかわからないケド)
アーサー達が『アースガルズ』の襲撃を受けた次の日の朝。
「こちらアーサー、ジーク組。各員配置は。どうぞ」
『こちら海島、ニコラス組。共に配置完了。どうぞ』
『こちら西織。モニタ感度良好。現状を維持してください。どうぞ』
無線とカメラを搭載した特殊な装甲服に身を包み、アーサー達は『アースガルズ』の施設付近に展開していた。
西織は今回はカメラを通じて戦況をモニタし、指示をオペレートに撤する。
『それじゃあ突入までのカウントダウン始めるわよ』
通信機から漏れてくる海島の声を聞きながら、アーサーは事前に生成した背中の武器の重みを確かめるように身体を少し揺らす。
『5』
同じものをジークにも渡してある。これならばフレイと、その上ーーー『アースガルズ』の首領にも届きうる筈だ。
『4』
ジークは突入前に少し悩んでいたようだった。己の力不足を思い、『姉を救う』という意思に揺らぎが生じていたのだろう。
『3』
それでも、作戦を説明し、武器を渡したときにはこちらに強く頷き返した。
『2』
アーサーはジークに自分を重ねている。だから願わくば、
『1』
この作戦を、死者を出さずに進みたいものだ。
『0。突入!!』
午前11時30分、アーサー達は『アースガルズ』の施設に侵入した。
◇◇◇
「ふっ…」
勢いよく正門から突撃し、海島は向かい来る敵を凪ぎ払う。
隣ではニコラスも戦い、『万物弄手』を使って地形を変形させ、敵を翻弄しながら銃や地面を変形させて造り上げた槍などで敵を貫く。
「このまま突破するわよ!」
警備網を打ち砕いて前へと直進し、海島たちが足を踏み入れようとして、
ゴッッッ!!!!と凄絶な音をたてて『雷撃鉄槌』が施設玄関を叩き潰す。
「前にはいかせん」
巻き上がった土埃を突き破って、悠然とトールがその姿を現す。
「やっぱりまだ生きてたか…ボス、こいつは俺がやるんですよね?」
「当たり前でしょう?レディを守るのが男の役目なんだから」
「レ…ディ…?」
ゴッシャアッ!という音と共に吹き飛ぶニコラス。三メートルほど地面を滑走するが、この程度なら日常茶飯事だ。
軽く頭を振って意識をはっきりさせて、ニコラスはトールを睨む。
「ま、そういうわけで俺がお前の相手だ。わりいがつきあってもらうぜ」
「やはり、貴様らは陽動か」
「そういうことだ」
わかってはいたが当然スルーする訳にもいかない。ニコラス達はかなりの構成員を倒したし、幹部級のトールまで引きずり出した。陽動としては最高の働きだろう。
「ムカついたかよ?」
「いや、なにも問題は無い」
トールは己の武器たるハンマーの柄を強く握りしめ、
「貴様らを速攻で片付ければいいだけだ」
ドン!とトールが踏み込み、巨体がニコラスに迫る。
◇◇◇
(ニコラス達はうまくやってるな)
施設の壁を爆弾で破壊してアーサーとジークは施設に侵入していた。
「こっちです!」
ジークの誘導に従い、アーサーは警戒しながら進む。
施設内には緊急連絡のサインが響き渡り、ブロック毎に隔離するようにシャッターが降りている。
それをグレネードで吹き飛ばしつつ、アーサー達はより深部へと進んでいた。
「この扉の先にホールが…」
とジークが言って、開けた扉の向こうに待っていたのは、
「姉、さん…?」
広いホールの中央、見せつけるように置かれたベッドの上に、ジークに良く似た顔立ちの少女が横たわっていた。
「姉さんっ!!」
ジークがようやく会えた姉の姿に我を失い、駆け寄る。
「待て、ジーク!!」
(あまりに不自然すぎる!十中八九罠だ!)
しかしジークは立ち止まらずに、
何事もなくベッドの縁へたどり着く。
「何…?」
アーサーはあまりに都合がよい事に不信感を抱いたが、実際罠は一つも仕掛けられていない。
「姉さんっ…!姉さんっ…!!」
ジークが身体を揺り動かすと、
「う…?」
ゆっくりと少女が目を醒ました。
「ジー…ク…?」
「そうだよ!僕だよ姉さん!」
少女のエメラルド色の瞳に徐々に理解の色が広がり、喜び、そして泣きそうな顔になってジークを抱き締める。
「ジークっ…!」
「姉さんっ…!」
互いに姉弟が抱き締め合い、
そして、それが現れた。
それは一つの指輪だった。
ジークの胸から抜け出るように現れたそれは黄金に輝きながら、姉ーーブリュンヒルデの胸に吸い込まれようとして、
カァン!とかん高い音を立てて中を舞う双剣に撥ね飛ばされた。
コロコロと床を転がり、静止した指輪をホールに繋がる通路から出てきた人影が拾い上げる。
「あぁ、やっと」
そう呟きながら、恭しく指輪を掲げ持つのは当然、
「フレイッ…!」
「これで『ニーベンルグの指輪』は第二部を終え、『指輪』はジークフリートの手を離れました」
それを聞き、アーサーはようやく『アースガルズ』の目的を理解した。
「『ニーベンルグの指輪』…最初からそのためにジークを造ったのか!?」
「その通り。『世界を制する指輪』、手に入れたいと思うのは当然でしょう?」
ニーベンルグの指輪。
ジークフリートの物語の題名でもあるこの指輪は、本来神に捧げられるはずだった物だ。
その効果が作中で用いられる事こそ無いものの、『それを手に入れた者は世界を制する』、という伝承を持つ指輪を巡り、ジークフリートは最初の武功となる大蛇殺しを成し遂げることとなる。
そしてその指輪はジークフリートが神に封印されていたブリュンヒルデを解放し、妻としてめとった際に指輪をブリュンヒルデに渡すシーンが存在するのだ。
「指輪を求めてジークフリートを造り上げたはいいものの、肝心の指輪を所有していなかったのです。いやはや、保険としてブリュンヒルデを造っておいたのは正解でした。お陰でようやく『指輪』を我が主に捧げることができます」
さぁ、と言ってフレイが指輪をホールの反対側に放り投げる。
指輪が放つ黄金の輝きが暗い通路を照らし出し、そこにいた人影を露にした。
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