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硝煙の魔法  作者: 物黒織架
第二章 救いたいと願うなら
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第二章 第十幕

ユニーク2000、PV350突破!

ヒャッハーして喜んでます!

世界がアーサーとスルトの二人だけになり、そのまま膠着(こうちゃく)するような錯覚を覚えた。

そして、

(…勝った)

スルトは思う。

(俺はこいつに勝った…!!)

アーサーの弾丸はスルトの焔を突破できなかった。

50口径弾は全て綺麗に『焼却』され、真っ白な灰になった。

奇妙にゆっくりと動く世界の中、スルトは笑い、『災厄焔枝(レーヴァテイン)』を振りかぶる。

「死ね」

万感の思いを込めて『災厄焔枝(レーヴァテイン)』を解き放つ。

全力の魔力を注ぎ込んで、


しかし、彼の象徴にして最強の武器であった筈の『災厄焔枝(レーヴァテイン)』は、ポッ、と僅かに焔を吐き出しただけだった。


あ?とスルトは放出した魔力量に違和感を感じ、

漸く己の体に注意を向けた。

(あれ、)

彼の下半身は、

(なんで、千切れて…)

それがスルトの最後の思考だった。

魔力供給を失い、『災厄焔枝(レーヴァテイン)』は地に落ちる。


◇◇◇


(思ったより、)

平気なものだな、と西織は息を吐いて思った。

スルトを殺したのは西織だ。

このスノーモービルはアーサーの魔法で生成したものだ。故にそこには必ず武装が存在する。

後部座席を変形させて、その下から顔を出したのは、

「エンジン機構を利用したガトリング砲、ですか」

M134。

通称ミニガンの名前で親しまれる、全長900mmの威容を誇る巨大砲台だ。

使用するのは7.62×51NATO弾。

本来攻撃ヘリから使用する兵器であり、人間に当たると痛みを感じる前に死亡することから、無痛砲とも言われる。

アーサーに気を取られ、スルトが全力でバレットM82A1を防御する際に西織がミニガンでスルトを撃ち殺す、というのが西織の立てた作戦だった。

スルトがスノーモービルに西織しかいないことに気が付いた時、西織が殺される可能性があったのが穴ではあるが、それはないと西織は踏んでいた。

スルトの脳裏にはくっきりとバレットM82A1の威力が刻み込まれていたはずだ。アーサーの姿を一瞬でも見失えば、動揺からまず、アーサーを探すだろう。

かくして全ては西織の思い通りになり、スルトに西織は手を下した。

「西織、大丈夫か?」

メンタル面を心配してきたであろうアーサーの言葉に、西織は頷いた。

「問題ありません。…流石に目の前で人間の下半身がちぎれ飛ぶのは見たくありませんでしたが」

「そんな風に言えるなら大丈夫だろう。急ぐぞ、集合地点に遅れたらボスに殺される」

二人でスノーモービルに歩いていく途中、アーサーがスルトの遺体から魔力を失い、焔の止んだ『災厄焔枝(レーヴァテイン)』を拾い上げる。

軽く手の中で弄び、納得したように頷くと、スルトの死体に手榴弾を放り、焼き捨てた。

軽く投げ捨てるように放られた『災厄焔枝(レーヴァテイン)』が墓標の様に突き立ったのを背景に、アーサーと西織はその場を後にした。


◇◇◇


(こっちに追っ手は来ねぇか)

周囲の警戒を終え、ふぅ、とニコラスは息を吐いた。

傍らにはぐったりと虚脱状態になったジークがいる。

急所を抉られる寸前まで追い込まれたようだ。魔力の過剰放出と精神的な挫折で身体に力が入らないのだろう。

「どうだった、本物の魔術師の戦いは」

少しジークは顔を上げ、反応を示す。

その目は虚ろだった。

「僕は…姉さんを救わなきゃいけないのに…全然歯が立たなかった…」

本当に、相手にもなっていなかった。

ジークが今生きているのは、ただ魔法が生存能力に特化していたから、というだけだ。本来ならば何十回死んでいたかわからない。

それを見てニコラスは、

「まぁ、そうだろうなぁ」

と呟く。

「実際戦闘系の魔術師ってのは本物の化けもんだ。一人で戦艦沈める奴等に殺し合いで勝とうって考えるほうがどうかしてる」

うちのアーサーにいたっては世界を滅ぼすレベルの魔法だしな、とニコラスは言う。

「だがなぁ、それでもお前は自分の姉貴を助けたいんだろ?その気持ちはこんな程度で止まっちまうもんなのかよ?」

「だって!…だって、あんな化け物相手にどうしろって言うんですか…」

「そこだよなぁ」

ニコラスは視線でこちらを見るよう促し、

「なーんでお前は自分で片付けようとするかなぁ?俺たちに頼ればいいじゃないかよ?」

「だって、これはやっぱり自分の問題ですし、出来るだけ、自分に出来ることは自分でやりたいんです」

「バーカ、こっちはもう仕事として受けてんだよ。大体そんな自分一人でって大事なことか?」

「胸を張って、姉さんを救いたいんです」

「ガキだな。墓石の前で胸はったって意味ないだろ。本当に救いたいんならな、無駄な枝葉は全部削ぎ落とせ。詰まない意地張ってすべて失うくらいなら、泥にまみれてでも手に入れろよ。そっちで後悔するほうが百倍ましだろ」

「それは…」

「もっと他人を頼れ。ガキなんだからガキらしくしてろ。ガキでいられるのは何時までか分からないんだ。目一杯ガキをやれ」

ニコラスの言葉にジークは少し考えているようだった。

悩むのもガキの特権だろうからな、とニコラスは放っておいた。

軽く周囲の地名を確認する。

集合地点はすぐそこだ。


こうして一度目の戦いは終わった。

魔術師たちは次の戦いに備え、己の魔法を研ぎ澄ます。

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