11 漂流者のログブック
アレンの腕の中。
本当は、これだけの空間があればいいのだと思う。
それでも私は宇宙に出る。
今でも私は広い宇宙が、無限の空間が怖い。
でも、短時間なら宇宙を飛べるし、ビッグマザーの周辺なら問題ない。
アレンと二人乗りの機なら、長時間でも大丈夫だ。
シンがいう。
ビッグマザーが何故作られたか知ってる?
ビッグマザーは空母なんかじゃない。
開拓船なんだよ。
新しい宇宙へ、新しい場所を求めていく船。
とりあえずは、開発途中で頓挫してうち捨てられたコロニーを買い取って、みんなで移住する計画なんだ。
もうだいぶ、話も進んでいる。
そして、コロニーを開発して、そこを発展させ、さらに、宇宙へ出る。
いつか、惑星を開拓してみたいな。
その惑星にすでに生物がいたら、シンみたいな人間は迷惑なのかもしれないけれど。
アレンとシンは最初仲が悪かったけれど、今はなんだかんだとつるんでいることが多い。
先走りしがちなシンをアレンが上手く諌めて、コロニー移住計画を着々と進めている。
シンはずっとずっと先まで思い描いている。
アレンは現実と夢との折り合いをつけながら、実現させてゆく。
もちろん、シンとアレンだけじゃない。
ビッグマザーのみんなで移住計画を進めている。
私は小心者だから、あんまり先の事を考えると怖くなる。
ずっと先は見えないから嫌い。
でも。
シンが未来を楽しそうに話すから、きっと、ずっと先の、自分がもういない未来まで明るいんだと思えてくる。
アレンの腕の中に私がいて、私の腕の中に、私達の娘のニーナがちょこんと収まっている。そのニーナの中にも未来がぎゅってつまっている。
だから、私は宇宙に出る。
ビッグマザーが好きだけど、コロニー移住計画もちょっと楽しみ。そのためにはやることがたくさんある。
農場の仕事も、運び屋も、時には海賊船との攻防も。
とりあえずは、少し先の未来を信じて。
完結しました。読んでくださった方、ありがとうございました。