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6 帰還

前半 アレン少佐視点、後半 ルーク傭兵隊長視点です

脱出用のシンプルなカプセルに捕虜を入れ、合図を送ると、相手側からも合図があった。

傭兵隊長のルークが緊張した面持ちでブリッジに立っているのが見える。

ミアが帰ってくる。

そう思っていた。そう信じていた。


だが、相手が用意したものは、ミアが乗っていた戦闘機だった。


エネルギーをOFFにした生命反応のない戦闘機が静かにアースのすぐ横で停泊する。

戦闘機を簡単にスキャンし、危険物の搭載などの異常がないか確かめたあと、戦闘機は回収された。


そんな馬鹿な・・・。

ミアは?

俺は無人の戦闘機を茫然とみていた。


「アース」の本部の連中は喜んでいた。

「アレン・シーモア少佐、よくやった。あれだけの交渉で戦闘機一機取り戻すとは。冷静な交渉で損害を最小限に食い止めた」

ミアの使用していた戦闘機は小型で高い機動性と攻撃力を有するかなり高価な代物だ。


・・・そんな交渉はしていない。

俺はミアを返してくれと交渉しただけだ。


傭兵隊長のルークはブリッジで成り行きを見守っていたが、そのまま姿を消した。



・・・・・・・・・・・



ミアの乗っていた戦闘機は簡単な点検の後、格納庫に収納されていた。


点検していた作業員も引き上げ、格納庫は静かだ。

自分の足音だけが大きく響く。

ミアの乗っていた戦闘機に乗りこみ、狭いコクピットのシートに体をしずめる。

すかにミアの気配が残っているような気がしてしまう。

シートはミア用に調整されているため、狭い。


ミアは無事なのだろうか。


戻ってきた戦闘機のコクピット付近には殆んど損傷がみられず、中に乗っていたミアに大きな怪我があったとは思えない。戦闘記録からいえば、ミアが途中でパニックに陥り、敵方に動力部分を狙撃され、捕獲されている。

頭を両手で抱え込む。


今すぐにでも助けに行きたい。


だが、傭兵である自分が勝手に戦闘機を出せば、それは反逆とみなされる。無理に飛び出したとしても、相手の空母にたどり着き、ミアを助け出せる確率は0に限りなく近い。そして、助け出したとしても、その後行く所など、どこにもないのだ。反逆をおこした傭兵など誰も雇わない。


堕ちる道など無数にあるが、這い上がる道は、どこにある?


ドラッグ無しで戦闘機に乗ればパニックになることは予想できた。でも、あの日、ミアは落ち着いていた。落ち着いた表情で、シーモア少佐に肩を抱かれていた。

前日の夜、何があったか、知りたくもなかった。


それでも、ドラッグ無しで落ち着いた表情で戦闘機に乗れるというのは、わずかな希望でもあった。ドラッグを止めさせなければ、いずれミアは体を壊してしまう。

だから、その希望を信じようと思った。

だが、結局、戦闘の最中でミアはパニックになってしまった。


ミア・・・。今、どうしているんだろう?


ふと、思い出してディスプレイの上部に目をやる。

ミアはここに「お守り」といって自分が昔プレゼントした人形をぶらさげていた。


・・・・あれ?

そこには人形のかわりに、見覚えの無い緑のカエルがぶら下がっていた。

カエルを手にとる。

カエルは内側が空洞になっていた。

手紙・・・?

カエルの中からは小さな紙切れが出てきた。

自分とミアの故郷の文字でそれは書かれていた。


ルーク

アースが嫌になったら来て。

連絡先はJP09××

PSW基地で飼っていたワンコの名前・インコの名前

私は大丈夫 ミア


ミア。無事なのか。

カエルに唇を押し当てると、自分の胸ポケットに入れ、コクピットから出た。



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